新古今和歌集の部屋

源氏物語 湖月抄 藤袴 髭黒大将のアプローチ

             大将をいへり。髭黒の事を内大臣のの心也
も申させ給けり。人がらもいとよく、おほ
                             したぢ詞事也
やけの御うしろみと、なるべかめるしたかた
      髭黒を婿にてもなどかは難あらんの心也
なるを、などかはあらんと覚しながら、かの
源也
おとゞのかくし給へることを、いかゞはきこえ
かへすべからん。さるやうあることにこそと、
             源氏の御けさう心の事也 源氏次第とて也
こゝろえ給へるすぢさへあれば、まかせき
            ひげ黒の事を書出も承香殿の女御と兄弟也
こえ給へり。この大将は春宮゙の女御の御はら
                  源内大臣に次いでの覚えと髭黒を云也
からにぞおはしける。おとゞたちををき奉
りて、さしつぎの御おぼえ、いとやんごとな
 ひげ黒をいふ也
き君なり。とし卅二三のほどにものし給
ふ。北の方は、紫の上の御あねぞかし。式部卿
        細紫上の兄弟也。哢おほいきみとは嫡女也
のみやの御おほいきみよ。年の程みつよつ
 
 
頭注
かさるやうある事 源の心
ざし給ふ故こそと内大
臣の疑推也。玉を源の
たゞにはあらじと父の思
ひ給ふ也。
春宮の女御 春宮
今上ノ御母承香殿と号す。
髭黒の妹也。
 
 
  ひげ黒よりも北方は年まさり也
が、このかみはことなるかたわにもあらぬ
を、人がらやいかゞおはしましけん、をうなと
     ひげ黒の寵愛もし給ぬ也
つけてこゝろにもいれず、いかでそむきなん
と思へり。そのすぢにより、六条のおとゞは、大
将の御ことは、にげなくいとおしからんと覚
           ひげ黒は実なる人といふ義也
したるなめり。いろめかしくうちみだれたる
               玉かづらに心をつくし給ふ也
所なきさまながら、いみじくぞこゝろをつく
             髭黒の心也。実父
しありき給ける。かのおとゞももてはなれ
                     玉かづらの事也
てもおぼしたらざンなり。女は宮づかへを物
うげにおほいたンなりと、うち/\のけしき
                          ひげ黒の也
も、さるくはしきたよりしあれば、うち聞
       源也
て、たゞおほとのゝ御をもむけのことなるに
 
 
頭注
をうなとつけて
嫗 老嫗の心也。
六条のおとゞ 細紫上の
姉。大将の本臺なれば
是ををしのけてはいかゞ
と源は思ひ給へる也。
 
 
 
 
女はみやづかへ 抄髭黒の内々
のたよりに聞給へば内大
臣はあるまじき事のやう
にはの給はず。又玉かづらは
宮仕を物うげなるときゝ
て弥心いられすると也。
 

も申させ給けり。人柄もいと良く、公の御後見と、なるべかンめ
る下形なるを、
「などかはあらんと覚しながら、彼の大臣の隠し給へる事を、
如何は聞こえ返すべからん。さるやうある事にこそ」と、心得
給へる筋さへあれば、任せ聞こえ給へり。
この大将は、春宮の女御の御腹からにぞ御座しける。大臣達を
置き奉りて、さし次の御覚え、いと止ん事無き君なり。歳卅二
三の程にものし給ふ。北の方は、紫の上の御姉ぞかし。式部卿
の宮の御大君(おほいきみ)よ。年の程三つ四つが、このかみ
は、異なるかたわにもあらぬを、人柄や如何御座しましけん、
嫗(をうな)と付けて心にも入れず、いかで背きなんと思へり。
その筋により、六条の大臣は、大将の御事は、
「似げなく、愛おしからん」とおぼしたるなめり。色めかしく
打乱れたる所無き樣ながら、いみじくぞ心を尽くしありき給ひ
ける。
「彼の大臣も、もて離れても、おぼしたらざンなり。女は宮仕
へを物憂げにおほいたンなりと、内々の氣色も、さる詳しき便
りしあれば、打聞こえて、ただ大殿の御をもむけの異なるに
 
略語
※奥入 源氏奥入 藤原伊行
※孟 孟律抄  九条禅閣植通
※河 河海抄  四辻左大臣善成
※細 細流抄  西三条右大臣公条
※花 花鳥余情 一条禅閣兼良
※哢 哢花抄  牡丹花肖柏
※和 和秘抄  一条禅閣兼良
※明 明星抄  西三条右大臣公条
※珉 珉江入楚の一説 西三条実澄の説
※師 師(簑形如庵)の説
※拾 源注拾遺
 
 
 
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「源氏物語和歌」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事