ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

テーマ別に連載形式になっています。テーマ別に最初の記事からお読みください。

疝痛ってなに?

2019年09月29日 | 馬の医療や管理について

 乗馬教本に載ってるくらい、「疝痛」って有名な馬の「病気」で、これのせいで一晩でコロッと馬が死ぬのも散々見ている。特に初心者に付き合ってくれる、優秀なお馬さん(乗馬をやってる人間は、99.99%が初心者といって過言ではない)がこれで死ぬ、いい馬がどんどん減ってしまう、というのも見てきた。疝痛をなくす方策を何も考えないのかあ、乗馬クラブって、というのに驚きがありましたけどね。動物愛護というか、福祉というか、そこから本当に外れまくってるんだよね。

 疝痛=腹痛のこと。というけど、馬の場合、これはもう七転八倒状態になるくらいひどい。で、痛くて死んじゃう、という結果になることもままある。その分類として、1)便秘疝 2)痙攣疝 3)変異疝 というのがあるんだ、とか教わったような・・・・。これはガッコで習ったんでしたっけ?もう忘れてしまった。で、これって、全然「病気」の説明になっていない「病名」なんですよ。

 JRAが出している疝痛のPDFに書かれている分類はやや細かい。1)2)3)に加えて4)風気疝というのと5)寄生疝というのと。しかしですね、読んでも全然説明になっていないような気がするので、改めて解説します。

1)便秘疝:これは、麻痺性腸閉塞のこと。腸の蠕動が停止してしまう。その結果「便秘」ということになるから、「便秘疝」とかいうんでしょうね。

2)痙攣疝:腸痙攣。1)とは逆に、蠕動過多になる状態。

3)変異疝:腸捻転・腸重積等、腸がねじくれたり、入れ子になってしまう病態。2)がひどくなるとこれになりやすい。

4)風気疝:ガス性腸閉塞。人間ではよく老人がなる。おなら等々の腸内ガスを排出できず、ガスが腸を閉塞してしまう病態。馬では錯癖のせいで、空気を飲み込む癖を身に着けてしまうと、こいつの危険性が高くなる。

5)寄生疝:寄生虫のせいで起こる疝痛。ちゃんと駆虫しないからこうなる。管理不行き届きの最たるものですね。

 にしても、全く理解不能だ。何が言いたいかというと、小動物業界で、こんな病態滅多にお目にかからないから。

 こうなるのは、馬の内臓構造が特殊だからだ、とかなんとかまーた馬のせいにしてますけど、そんな馬鹿な。

 訳が分からないので、しょうがなく、こんな本を買いました。「Handbook of Equine colic」。もう20年前の本で、情報が古すぎるきらいはあるんですけど、とにかく「疝痛」をちゃんと網羅した実用的な本が読みたかったので。

 でも、読むうちにどうもおかしいと思うようになる。なんでこんな事態にそもそもなってしまうのだろうか?

 ところで、小動物で「疝痛」を起こす生き物がいるんです。それはウサギ。うわっ!!馬と内臓構造が類似してるじゃないか?そのせいなの?やっぱり?

 ウサギは実際馬とよく似ている点が多い。嘔吐ができない、というのもその一つ。うわっそっくりじゃん!やっぱり馬やウサギが特別なの?

 そうじゃないんです、実は。ウサギについて、次回解説します。ウサギの疝痛が理解できないと、馬の疝痛は理解できないと思うので。


なぜ、装蹄をやめられないのかー2

2019年09月25日 | 裸蹄管理

 装蹄をやめられない理由は他にもあります。

2.装蹄していない馬を、ポニーや道産子以外見たことがない。だから、乗馬や競馬には装蹄が必要だと思い込んでいる。

今、自馬を裸蹄で管理してるんですが、装蹄師さんは、どうしても不安というか、納得いかないみたいなんですよ。はだしで障碍なんて、大丈夫なのか?今日も言われましたけど。特に、サラは蹄が薄いから、難しいんじゃないか、と。この蹄が薄い、というのも、思い込みがかなりありそうなんですけどね。ポニーや道産子なんかは蹄が固くて頑丈だから大丈夫だろう、という、これも思い込みなんですけど。いや、そんなことはない、蹄鉗子で調べてる、と反論されそうですが、じゃあ、蹄の「硬さ」はどうやって決まるのでしょう?これが見えてないんだもの。やっぱり思い込みの部分が大きいんじゃないかな。自馬については、蹄病治療を始めてから、着々と蹄が固くなってきている。これは、装蹄師さんも認めている所です。蹄の硬度や強度を低くしてしまう要因が、実は蹄病も支配しているのだ。だから、治療しなくちゃならない。

3.裸蹄にすると、どうも、管理がうまくいかない。

 これ、おそらく装蹄してしまう、装蹄療法なんぞをしてしまう、一番の原因じゃないでしょうか。裸蹄にするべきである、というのはFRCの田中氏もおっしゃってて、オーストラリアから削蹄師さんを呼んで講演までして、でも、どうもうまくいかなくて、多分悩んでるんじゃないかと思う。裸蹄にすると、なんだか蹄がふにゃふにゃしてしまう、蹄壁がめくれてくる、そのうちやれ蹄叉腐乱だ、砂のぼりだ、蟻道だ、白線病だ、挫跖・裂蹄とトラブルが連発してしまう、それどころか、跛行を慢性的に繰り返す、脚が腫れる、しまいに蹄葉炎だ、となるじゃないか、というね。蹄がこうまで抵抗性がない、グダグダになってしまう原因は、長らく日本の気候にあるんじゃないかといわれてたし、今もそう思っている人がおそらくは100%でしょう。または、栄養が悪い、という話もよく聞く。だからタンパク質を食わせろ、亜鉛が足りないんじゃないかとか、そういうサプリも山ほど売られてます。

 蹄病の問題は他にもある。乗馬クラブに対する客のクレームは、大体この辺から始まります。こういうツイッター投稿もあるそうで。 この乗馬クラブは何だ、衛生管理がなってない!!という。まあ、これはある程度的を得ている所はあるんです。大動物を衛生的に管理するのは至難の業でしてね。で、乗馬クラブはどう言うかというと、今度は装蹄師が下手だからだ、だの、オーナーが勝手なことやるからだ、だの。要は、お互いに責任をなすり合ってもめまくる、という事になってしまう。

 ところで、蹄病って、実は、牛にも多発しているのですよ。牛の場合もかなり深刻なケースが増えているようで、牛の先生方も困り果てているようなのだ。

 で、更に最近自分が気付いたことなんですが。馬の蹄病って、驚いたことに世界中で多発しているのだ。これはFBの蹄グループ(もちろん英語です)に参加して理解したこと。馬の蹄がおかしい、どうすればいいのか、装蹄師を変更するべきなのか、栄養がおかしいのか、環境が悪いのか、全く同じ議論が世界中で繰り返されているんです。蹄病がパンデミックになっているそんな馬鹿なことがあるのか?

 こうなると、日本だから、だの、気候のせいなんてはずがない、という結論になります。


馬に対する定番の「治療」は正しいのか?

2019年09月24日 | 馬の医療や管理について

 セファロチンですけど、案の定、長期欠品になってるようですね。今、日本では、それどころかセフェム系注射薬が軒並み欠品。抗生物質の一ジャンルがこういう事態になってしまうのは本当に珍しいというか、初めてじゃないでしょうか。

 ということで、馬の先生方は、只今抗生剤は何をお使いなんでしょう?草食獣に対する抗菌薬については、まずはどこで代謝され、どこから排泄されるのか、が重要。糞中排泄される奴はダメです。消化管内に抗生剤が分布することで、腸内細菌叢に影響してしまうからです。代謝されず、尿中排泄されるのが理想。そういう抗生剤・または合成抗菌剤を選択することが重要ではないかと思います。抗生物質の選択には、その他に、体内のどこに多く分布するかとか、半減期・抗菌範囲も考えないといけないけれど、草食獣については、とにもかくにも腸内細菌叢を傷めないのが望ましいと思う。

 となると、やっぱり、ニューキノロンがファーストチョイスとなるんじゃないでしょうか。外傷治療や腺疫については、これを使わないと無理じゃないか。といっても、エンロフロキサシンはダメっす。大体第一世代の抗生剤は、どのジャンルでも、もう水と同じ。そういう意味ではセファロチンだって同じ、というかよりひどい。セフェム系の抗生剤、一番種類も多い、人間に対しては、抗菌範囲も広いので使いでがあるらしいんですけど、草食獣にはそれが裏目に出てしまう。ニューキノロンは経口投与してすぐ体内に吸収され、尿路排泄されるから。高いですけどね。安い薬もないわけではない。「馬臨床学」には効かないなんて書いてあるけど、ウソです。ただ、あの本に出てるキノロン剤は確かに効かないでしょうね。小動物領域でも使わないですもん。

 腺疫について。これも困る疾患なんですよ~~。「馬臨床学」には、そもそも腺疫は載ってないし。なんでやねん?重要な感染症だと思うのに。自馬が感染したとき、誰もこの病気は腺疫です、と診断できなかった。なんでやねん??しょうがないので、調べまくって腺疫らしいという判断になったのだが。

 ネットに出ている情報が一番マトモというが、そもそもおかしいんですが、とりあえず中央畜産会のパンフ等を読む。診断はともかく、治療が「ほっとけ」だからさー。ほっといたらどうなったかというと、このパンフの後半に書かれている続発症を発症してしまった。このパンフに書かれてる症状名も変なんだけど。「紫斑病」なんて言うもんじゃありません。血小板減少症っていうんです。血液中の血小板が自己免疫攻撃を受けて消失してしまうために、内出血があちこちに起こる自己免疫疾患。これは体内の腺疫菌を免疫でもって抑え込もうと頑張りすぎる結果起こる。大体リンパ節という免疫の防御中心に潜伏するような菌は免疫をいくら上げても、攻撃をかわされちゃうんですよ。で、余った免疫が自分の体のどこかに攻撃を仕掛けてしまう。これにはかなり往生しました。

 それにしても、ホントーに馬の獣医の言うことは当てにならん、結局ほっとくから、そういう免疫暴走が起こるのだよ。騙しやがってということで、ニューキノロンの集中投与を行って、腺疫菌を体から追い出した。リンパ節に潜伏する細菌を全滅に追い込むのは難しいのだが、それ以降問題が再発していないわけだから。血小板減少症については、ステロイドを使うしか方法なし。この件で、ステロイドを馬に投与する際の問題点&その問題が発生する原因を考え抜くことになったわけだけども。結論は出ました。馬の先生、もっと考えてくださいよ。

 腺疫は細菌感染症なんだから、びしびし抗菌剤治療を行って腺疫菌を駆逐するのがスジのはず。そうやって、腺疫という感染症を日本から駆逐すれば安心なのに、そうしようともしない、何を考えてるんでしょうね?

 そうそう、感染症はさておき、疝痛という病気の治療について、これもおかしいんですよ。その件は次回。


馬は治療しにくいのかー3

2019年09月12日 | 馬の医療や管理について

 馬は、大動物の中では、治療しやすい方なのでは、というのは前回書きました。でも、そうはいっても、なかなか馬に飲み薬をやって治療、という話は聞かない。その理由としては

  1. 基本的な投薬量がよく分かっていない。
  2. 経済的な問題(連続して診療できない事情)
  3. 疝痛恐怖症
が挙げられるのではないかと思います。
 
1)薬用量の決定というのは、本気でやると非常に大変です。投薬量は、薬剤が持つ効果を十分に発揮して、かつ副作用がほとんど出ない、という範囲を決める、という事なんですけど、これを決定するには、体内での薬物動態(どう吸収され、どの臓器に集まり、どこを経由して排出されるか)から始まって、色々調べなくちゃなりません。
 小動物に使われている動物用医薬品については、かなりきちんとしたデータに基づいて、薬用量が決定されています。ただ、認可されている動物用医薬品だけで世の中の病気に対応するのは無理なので、人間の医薬品も使うことになる。この場合は、しょうがなくて、人から外挿して類推して投与量を決めます。で、使いながら様子を見る、感じでしょうか。後は、世界の文献を探る、とか。
 大動物の医薬品を見ると、なんだかその辺がいい加減なんですよね・・・・・。ホントーにこの量で大丈夫なの?と思うことが結構ある。多分、大動物の場合、特に牛や豚のような家畜は、「治療」にいそしむ、という可能性は限りなく0で、体調が優れなければ、じゃあ屠場に出すかあ、で終了になるケースが多いから、必要度が低いんでしょう。
 馬は、しかし、特に最近の乗馬馬の皆さんにはオーナーが付いている人も多いから、何とか助からんか、治療してもらえないか、という潜在ニーズは高いはずなんです。拾うべきです、獣医なら。
 
 でも、ここで2)が出てきちゃうんですよね~~。なんでこう、金がかかるんだ???という疑問というか、悲鳴というか。最近は、小動物業界も患者からがめつく金を取る獣医が増えてまして、そういう事をするから、自分の首を真綿で締めることになるでしょうが、と苦々しく思っているんだけど。治療に金がかかる、じゃあ、飼うのやーめた、って人が増えてますから。動物を飼う人が増えなければ、我々の仕事のニーズもなくなっちゃうっての。
 馬の場合は、そもそも大動物を診察します、という獣医が少ないし、きちんと診断して、こういう治療をするから、この薬飲ませてください、なんてやってくれる獣医なんか皆無でしょう。で、3万円+検査料等々、下手すると一回の診察で5万とか吹っ飛んでく、それでまともな治療案も提示されないんじゃ、もういいですよ、となりますよね。
 この件で特に問題なのは蹄病だと思います。蹄病については、後ほど詳述しますが、原則削蹄師や装蹄師は、蹄病を治せません。治す権利も持っていない病気なんだから、獣医が治さなくちゃなりません。なのに、未だに「蹄葉炎の原因は不明」なんてアホなことを言ってるんだもの、なんの頼りにもなりゃしない。この間、自分の馬について、そういう事がありまして、馬の獣医と大喧嘩になったんですけどね。治療方針が出せないなら、自分の馬に口出しするな、という事でね。
 
 それから、飲み薬に抵抗感がかなりありそうな理由として、3)が挙げられると思います。某クレイン系に通ってた頃は、下手な生徒に付き合ってくれる優秀なお馬さんが次々に疝痛でお陀仏になるので、これはいったいどういう事なのか、と心底思ったもんです。疝痛もね、一般的には原因不明とされているから。こちらとしては、もう原因は明快すぎるんですけどね。これも、後ほど詳述します。
 
 ただ、この件は、自分の中でも治療上の心理的なハードルになっています。新しい薬を飲ませようと考えた時に、飲み薬をやったら、途端に疝痛起こしてバッタリ、となるんじゃないか、という。自分ちで飼っているなら、さくっと対応できるだろうけど、馬が乗馬クラブに預託されているということは、発見が遅れる、判断が遅れる、知らせるのが遅れる、そんなこんなでお陀仏になるのでは、という恐怖心ね。普通には、あり得ないんですが。
 その理由は、馬の消化管構造から明らかなので。要は、馬の消化管のメインは盲腸~結腸で、ここに薬剤が届く前に小腸で全部吸収されてしまえば、問題はない、はずなんです。そうは思っても、飲ませた事のない薬を飲ませて大丈夫かなあ、となると、飲ませないとお陀仏だ、というあたりまで行かないと踏み切れない感じはありますね・・・・・・。
 
 ので、自分の馬は気の毒に、あれこれ実験されちゃってます。別にお陀仏にしようというわけじゃないんですが、色々病気をしてくれるもんだから、結局治さざるを得なくなった。本当は、こういう事は馬の獣医が根性入れてやるべきなんですけどね。結局責任逃れなんでしょうなあ。文句言うだけなら簡単だもん、オーナーの飼い方が悪い、乗馬クラブの管理が悪い、装蹄師がへっぽこだ、なんとでも言えるからさ。
 
 で、2)に関しては、薬用量がどうやら少なくて済むらしいという事が見えてきています。従って、意外にお金がかからないことが分かってきました。ですので、ぜひ、トライしていただきたいと思います、特に、蹄病については、飲み薬を使わない限り治りません。3)については、要はチームワークが大事なんです。クラブの人には、きちんと薬を飲ませてもらうように依頼する、なにかあったら、即連絡を入れてもらう、獣医にも連絡を取ってもらう、こういうチームワークをつくれないクラブが多いから困るんですが。以前、クラブ側が勝手に投薬を中止していたことがあって、その時は怒りましたけど、割とこういう事を勝手にやるクラブが多そうなのも事実なので。

馬は治療しにくいのかー2

2019年09月11日 | 馬の医療や管理について

 消化管構造の違いについて、前回述べました。草食獣の治療のやりにくさは、結局のところ、抗生剤が使いにくい、という1点にある。後は種別にあれこれ。例えば、保定。治療をおとなしく受けてくれるようにとっ捕まえる方法なんですが、治療といっても、動物にとっては「危害を加えられる、ひょっとしたら殺されちゃうかも」でしかないから、特に初診の際には大暴れされることが多いんです。

 犬や猫のような肉食系は、当然攻撃してきます。噛みつくわ引っ掻くわ、どちらが大変かというと、圧倒的に猫。犬は口さえ押さえれば何とかなる場合が多いんですが、猫は、噛んで引っ掻いて、で、部屋中逃げまくる。こうなると、まず、捕まらない。時々野良猫を「病気したので何とかできないか」と連れてくる方がいるんですが、なぜか段ボールに入れてきちゃう。すると、段ボールをぶち破って天井に逃げてって落っこちてきて、というエンドレスになってしまう事すらあります。で、連れてきた人が捕まえようとして本気で噛まれて大怪我、というパターンも多い。猫には「猫引っ掻き病」という恐ろしい細菌感染症があって、噛まれた腕に障碍が残ってしまう人がいるくらいなんです。

 では、ウサギはどうか。これはもう、「死んじゃう」んですよ。本当に。ひどい目に遭うくらいなら死んだほうがマシ、というのを本気で実行するから、草食獣はコワイ・・・。小鳥もそうですね。恐怖というのは、動物にとって最大のストレスなんでしょう。他にも理由はあります。ウサギはほぼ、人に懐かない。いや、ウサギブログとかあるじゃないですか、確かに懐いてるウサギのブログだの動画だのありますが、あれは極めてまれなケースで、診ている感じでは99.5%のウサギは全然懐かない。それをなだめすかして治療する、ウサギなりに受け入れてくれる場合もありますが・・・・、かなりお互いの忍耐が必要。許容レベルが全然違うからねえ。

 大動物で言うと、牛って大変ですわ。懐いてないもの。人間=餌くれる、程度の認知だと思われます。これは、昨今の飼育様式にも問題があるでしょう。1000頭余りの多頭飼育が当たり前ですから。懐くわけないですよね。また、懐く、と人間側もしんどくなりますし。

 馬は、治療しやすいと思います。人に懐いてますもんね。どんな暴れ馬、といわれてても、一応人を乗せるんだもの。一応世話もさせるし。あまり根に持たない風でもある。いーや、すぐ蹴る、咬む、という反論については、蹴られるようなこと、咬まれるようなことをやらかしてるんでしょうが、と言い返すわけです。だーかーらー、ハミと蹄鉄やめなさい、それだけでかなりイラつきがなくなるから。そういうアクションもしないで、馬のせいにしないことです。

 それとは別に、消化器構造上、馬には牛にない、極めて治療に向いた有利な点があります。ズバリ、「飲み薬が使える」

 牛の場合、4つに分かれた胃と反芻という習性のせいで、飲み薬を小腸まで無傷で届けるのは実質不可能。で、注射しか使えない。馬は、盲腸以前の消化器構造がシンプルだし、反芻なんてこともしませんから、飲み薬が容易に小腸に届く。しかも、治療していて感じることですが、馬の小腸は、ものすごく消化吸収能力が高そうなんです。小腸はメチャクチャ長いんですが、そこを食渣が通る間に消化できるものはとことん消化吸収してしまうらしい。つまり、薬を大量投与しなくて済む。

 馬の体重はサラなら500㎏前後、普通薬の投与量は体重換算で決めます。それで換算すると、馬に飲ませる薬の量は、非現実的に多くなる、筈なんですが。実際には西洋薬で人の2~5倍程度、漢方だと、人に投与する量より少量(1頭当たりですよ)で、十分効果がある。多分小腸で薬を全部吸収してしまうんでしょう。メチャクチャ薬剤効率が良さそうなんですよ。