ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

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馬に対する定番の「治療」は正しいのか?

2019年09月24日 | 馬の医療や管理について

 セファロチンですけど、案の定、長期欠品になってるようですね。今、日本では、それどころかセフェム系注射薬が軒並み欠品。抗生物質の一ジャンルがこういう事態になってしまうのは本当に珍しいというか、初めてじゃないでしょうか。

 ということで、馬の先生方は、只今抗生剤は何をお使いなんでしょう?草食獣に対する抗菌薬については、まずはどこで代謝され、どこから排泄されるのか、が重要。糞中排泄される奴はダメです。消化管内に抗生剤が分布することで、腸内細菌叢に影響してしまうからです。代謝されず、尿中排泄されるのが理想。そういう抗生剤・または合成抗菌剤を選択することが重要ではないかと思います。抗生物質の選択には、その他に、体内のどこに多く分布するかとか、半減期・抗菌範囲も考えないといけないけれど、草食獣については、とにもかくにも腸内細菌叢を傷めないのが望ましいと思う。

 となると、やっぱり、ニューキノロンがファーストチョイスとなるんじゃないでしょうか。外傷治療や腺疫については、これを使わないと無理じゃないか。といっても、エンロフロキサシンはダメっす。大体第一世代の抗生剤は、どのジャンルでも、もう水と同じ。そういう意味ではセファロチンだって同じ、というかよりひどい。セフェム系の抗生剤、一番種類も多い、人間に対しては、抗菌範囲も広いので使いでがあるらしいんですけど、草食獣にはそれが裏目に出てしまう。ニューキノロンは経口投与してすぐ体内に吸収され、尿路排泄されるから。高いですけどね。安い薬もないわけではない。「馬臨床学」には効かないなんて書いてあるけど、ウソです。ただ、あの本に出てるキノロン剤は確かに効かないでしょうね。小動物領域でも使わないですもん。

 腺疫について。これも困る疾患なんですよ~~。「馬臨床学」には、そもそも腺疫は載ってないし。なんでやねん?重要な感染症だと思うのに。自馬が感染したとき、誰もこの病気は腺疫です、と診断できなかった。なんでやねん??しょうがないので、調べまくって腺疫らしいという判断になったのだが。

 ネットに出ている情報が一番マトモというが、そもそもおかしいんですが、とりあえず中央畜産会のパンフ等を読む。診断はともかく、治療が「ほっとけ」だからさー。ほっといたらどうなったかというと、このパンフの後半に書かれている続発症を発症してしまった。このパンフに書かれてる症状名も変なんだけど。「紫斑病」なんて言うもんじゃありません。血小板減少症っていうんです。血液中の血小板が自己免疫攻撃を受けて消失してしまうために、内出血があちこちに起こる自己免疫疾患。これは体内の腺疫菌を免疫でもって抑え込もうと頑張りすぎる結果起こる。大体リンパ節という免疫の防御中心に潜伏するような菌は免疫をいくら上げても、攻撃をかわされちゃうんですよ。で、余った免疫が自分の体のどこかに攻撃を仕掛けてしまう。これにはかなり往生しました。

 それにしても、ホントーに馬の獣医の言うことは当てにならん、結局ほっとくから、そういう免疫暴走が起こるのだよ。騙しやがってということで、ニューキノロンの集中投与を行って、腺疫菌を体から追い出した。リンパ節に潜伏する細菌を全滅に追い込むのは難しいのだが、それ以降問題が再発していないわけだから。血小板減少症については、ステロイドを使うしか方法なし。この件で、ステロイドを馬に投与する際の問題点&その問題が発生する原因を考え抜くことになったわけだけども。結論は出ました。馬の先生、もっと考えてくださいよ。

 腺疫は細菌感染症なんだから、びしびし抗菌剤治療を行って腺疫菌を駆逐するのがスジのはず。そうやって、腺疫という感染症を日本から駆逐すれば安心なのに、そうしようともしない、何を考えてるんでしょうね?

 そうそう、感染症はさておき、疝痛という病気の治療について、これもおかしいんですよ。その件は次回。