ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

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馬は治療しにくいのかー2

2019年09月11日 | 馬の医療や管理について

 消化管構造の違いについて、前回述べました。草食獣の治療のやりにくさは、結局のところ、抗生剤が使いにくい、という1点にある。後は種別にあれこれ。例えば、保定。治療をおとなしく受けてくれるようにとっ捕まえる方法なんですが、治療といっても、動物にとっては「危害を加えられる、ひょっとしたら殺されちゃうかも」でしかないから、特に初診の際には大暴れされることが多いんです。

 犬や猫のような肉食系は、当然攻撃してきます。噛みつくわ引っ掻くわ、どちらが大変かというと、圧倒的に猫。犬は口さえ押さえれば何とかなる場合が多いんですが、猫は、噛んで引っ掻いて、で、部屋中逃げまくる。こうなると、まず、捕まらない。時々野良猫を「病気したので何とかできないか」と連れてくる方がいるんですが、なぜか段ボールに入れてきちゃう。すると、段ボールをぶち破って天井に逃げてって落っこちてきて、というエンドレスになってしまう事すらあります。で、連れてきた人が捕まえようとして本気で噛まれて大怪我、というパターンも多い。猫には「猫引っ掻き病」という恐ろしい細菌感染症があって、噛まれた腕に障碍が残ってしまう人がいるくらいなんです。

 では、ウサギはどうか。これはもう、「死んじゃう」んですよ。本当に。ひどい目に遭うくらいなら死んだほうがマシ、というのを本気で実行するから、草食獣はコワイ・・・。小鳥もそうですね。恐怖というのは、動物にとって最大のストレスなんでしょう。他にも理由はあります。ウサギはほぼ、人に懐かない。いや、ウサギブログとかあるじゃないですか、確かに懐いてるウサギのブログだの動画だのありますが、あれは極めてまれなケースで、診ている感じでは99.5%のウサギは全然懐かない。それをなだめすかして治療する、ウサギなりに受け入れてくれる場合もありますが・・・・、かなりお互いの忍耐が必要。許容レベルが全然違うからねえ。

 大動物で言うと、牛って大変ですわ。懐いてないもの。人間=餌くれる、程度の認知だと思われます。これは、昨今の飼育様式にも問題があるでしょう。1000頭余りの多頭飼育が当たり前ですから。懐くわけないですよね。また、懐く、と人間側もしんどくなりますし。

 馬は、治療しやすいと思います。人に懐いてますもんね。どんな暴れ馬、といわれてても、一応人を乗せるんだもの。一応世話もさせるし。あまり根に持たない風でもある。いーや、すぐ蹴る、咬む、という反論については、蹴られるようなこと、咬まれるようなことをやらかしてるんでしょうが、と言い返すわけです。だーかーらー、ハミと蹄鉄やめなさい、それだけでかなりイラつきがなくなるから。そういうアクションもしないで、馬のせいにしないことです。

 それとは別に、消化器構造上、馬には牛にない、極めて治療に向いた有利な点があります。ズバリ、「飲み薬が使える」

 牛の場合、4つに分かれた胃と反芻という習性のせいで、飲み薬を小腸まで無傷で届けるのは実質不可能。で、注射しか使えない。馬は、盲腸以前の消化器構造がシンプルだし、反芻なんてこともしませんから、飲み薬が容易に小腸に届く。しかも、治療していて感じることですが、馬の小腸は、ものすごく消化吸収能力が高そうなんです。小腸はメチャクチャ長いんですが、そこを食渣が通る間に消化できるものはとことん消化吸収してしまうらしい。つまり、薬を大量投与しなくて済む。

 馬の体重はサラなら500㎏前後、普通薬の投与量は体重換算で決めます。それで換算すると、馬に飲ませる薬の量は、非現実的に多くなる、筈なんですが。実際には西洋薬で人の2~5倍程度、漢方だと、人に投与する量より少量(1頭当たりですよ)で、十分効果がある。多分小腸で薬を全部吸収してしまうんでしょう。メチャクチャ薬剤効率が良さそうなんですよ。