ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

テーマ別に連載形式になっています。テーマ別に最初の記事からお読みください。

厩舎構造をめぐる各種規制とか

2020年06月30日 | 厩舎管理等

 そもそも、この厩舎といいますか、動物を一定数以上住まわせて管理する場合、色々な法律が規制をかけてる。動物はカワイイ・癒しだとかなんとか言ってるくせに、いざ飼おうとすると、今度は汚い・臭い・煩いとくるわけで。本当に勝手なもんですよね、人間て。でも、それだけじゃなくて、実際犬猫の多頭飼育崩壊現場なんかはシャレにならない事態になっていることも多々ある。家畜を飼う時も、ちょっと失敗すれば多頭飼育崩壊と同じ状況に陥るし、そうなると、特に衛生面で、周囲への悪影響が甚大なものになりかねない。それを防止するためにも、色々法律で決めなくちゃならないことが増えるんです。

 厩舎については、最近建築基準法を厩舎については緩和しようという動きがあって、その資料もある(これは、現在進行形の話です。基本的には牛豚になるけれど、馬も大動物なので、無縁の話ではない)。馬については、飼養衛生管理基準が制定されている。最低限でもこの位はやってくださいってことなんでしょうけど、やってない乗馬クラブが大半ですけどね。ただ、この資料でも、大まかなポイントが示されているだけで、具体的な床材等々については言及されていない。一方、動物をめぐる法律に「化製場法」がある。本来は死んだ動物を色々加工したり処理する場所に関する規制をうたっているのだけど、この第9条では、なぜか「家畜の飼養管理」について言及されている。この法律に基づいて、各都道府県が独自に条例をつくって規制をかけられるようにしているようだ。例えば埼玉県のさいたま市では、一般家庭で飼うとしても、ポニーやミニブタは1匹であっても届けてください、としているし、飼う場所の床は防水にしてください、とか細かい規定も盛り込まれている。年々家畜を飼うのは大変になってきてるのね。届ければ済むことではあるけれど。

 で、乗馬施設の厩舎。大体の乗馬クラブは市街地には立地していないから、普通の畜舎構造として考えればいいと思うのだが。


コンクリート問題

2020年06月28日 | 厩舎管理等

 馬の厩舎画像をググってみると、豪華なものから危なっかしいものまで色々ありますけども、基本的には1頭単位に仕切られた部屋があって、床にはおが粉か藁が敷いてある。広さは大体3.5m*3.5m位(これはかなり豪華な方かも)。飼い葉桶と水桶があって、厩舎によっては鼻で押すと水が勝手に出てくるウオーターカップが付いていることも。それに、馬の出入りに使う通路、という設計が大半。扉は、馬栓棒から頑丈な扉まで色々。壁は大概木製で、蹴っ飛ばしてもまあまあ大丈夫な厚みの板、という感じでしょうか。問題は床で、コンクリートのたたきか、土か。

 自馬が今いる厩舎は簡易厩舎みたいな造りで床は土のままなのだが、これが存外良い。土の質もあるだろうけど、雨が降っても厩舎内に水が周囲から入り込まないので(厩舎のある場所が、というか、クラブ立地が全体的にだがやや周囲より高いからだろう)ぐしょぐしょにならず、湿気が比較的少ないのだ。あと、臭いにくい。臭わないわけではないが、コンクリ床の臭さと比べたら段違いといっていい。

 でもね、どこも土床ならOKかというと多分ダメで、ちょっとでもいいから周囲より高くする、水が逃げる溝をつくる、等々の処置をしていなければ、どんどん水が入っちゃって、雨が降ると大変なことになってしまう。ということで、コンクリにしている所が大半なんでしょう。

 しかし、コンクリって本当に厄介な建材だ。日本で一番ダメになる欠陥住宅ってコンクリート打ちっ放しだそうなんですよ。ありますよね、シャレオツにみえる打ちっ放し住宅。この手の住宅のメリットデメリットはあちこちに書かれてますが、結局メリットは「おしゃれ」だけらしい。コンクリはそもそも水で練ってつくるから、その水がそれなりに抜けるのに3年はかかるそうな。その間ぐしょぐしょした家に住まなくちゃならない。熱伝導率が高いもんで、夏はやたら暑くなり、冬は激寒となる。これは床材としてもその通りで、コンクリ床って冬場はキンキンに冷えちゃってて、こんなところで寝かすのは嫌だ、といつも思ってしまう。防水性もパッとしない、わりに中途半端に水を吸うもんで、馬の糞便や尿が浸み込んじゃって臭いの原因になる。不衛生でもある。しょうがなく、ゴムマットを上に敷いている厩舎も増えているようだ。ただ、これで問題が解決するわけではない。ゴムマットとコンクリの間に尿が浸み込んだり敷料が挟まっちゃったりして、それを掃除するのが大事になるわけ。ゴムマットは非常に重いから。ので結局めんどくさくなってほったらかしになって、どんどん臭くなる~~~~。鼻が曲がっちゃう。おまけにゴムマットは滑りやすい。「滑りにくくしてます」たってそもそもの材質が滑るんだもの。無理だよなあ~、と。

 滑る原因の一つは水気だから、昔は「厩舎床は傾斜をつけろ」なんて言われてたこともあった。傾斜でもって、水を流そうという考えでしょうけど、無茶な話だと思います。こないだの大震災の後、ディズニーのある舞浜で液状化現象が起きたせいで床が斜めになってしまった家に住んでた方が、とにかく疲れる、気持ち悪くなる、と嘆いていました。動物だって同じでしょう。

 コンクリの床について、どっちの方向性が良いのだろうか?防水か?透水か?


厩舎について

2020年06月24日 | 馬の医療や管理について

 前回書いた「蹄病治療」ですが、これは当然ながら薬も市販されてません。獣医師が処方して、という処方薬になります。従って、この治療に挑戦してみたい方は、当院にご連絡ください。クラムボン動物病院 までお願い致します。治療予算は大体1万円/月、程度になるかと。当院では、治療を「やりっぱなし」には致しません。必ず継続して状況をお伺いして、変化に対応できるようにします。これは小動物臨床のテクニックなんですけど、馬の先生はなんか、そういう事をしない方が多そうで。なぜでしょうか?今はスカイプもあるし、カルテの共有も簡単にできるはずなんですけども。

 ところで、岐阜大学の馬術部厩舎が火事になってしまったそうで。馬は可哀そうなことをしました・・・・。こういう時って、どういう訳か、馬を厩舎から引き出すのは極めて難しいらしい。余程信頼している人でないと、怖がっちゃって馬房から出ようとしないらしいのだ。

 原因は漏電らしいとの事、おおかた扇風機じゃないかと思うんですが。厩舎はとにかく埃っぽくて不衛生になりやす。漏電しやすい条件が揃っているからね。。。

 という事で、厩舎。裸蹄管理してると、馬房が汚いとか不潔という不満がどんどん出てくる場合が多いんです。そのせいで裸蹄管理がうまくいかないのではないか、という。実際にはそんなことはないのだけど、別の意味で不潔・不衛生な環境ってどうにかならんのか、と考えている人は多いと思う。裸蹄管理していなくても、この時期、厩舎の臭いが凄まじくてウンザリ・ついでにサシバエ被害のすさまじさにげんなり、というケースが多いんじゃないでしょうか。

 最初は自分とこの大学の馬術部の臭さに唖然としたんですよ。府中の街中にあんな臭い場所がある、というの、信じられなかった。あまりに臭うので、これって馬の体臭なのかと勘違いしてたくらい。そんな筈ないですよね。「臭い」はその場所の衛生管理レベルを如実に物語ります。仮にも獣医学科があって、獣医科の学生も結構在籍してた馬術部がそれだもん、そういうとこにいた人達が、今JRAの偉いさんだったりします。大丈夫なのか??クサい中に動物を放置するというのは、一種の虐待だと思う。

 そしたら、たまげたことに、そこらの動物病院やらペットショップやら、動物関連の施設って、基本「臭い」ことに気がついて。つまり、動物病院ですら、肝心かなめの「衛生管理」がなってない、という事。やんなって、自分の病院については、絶対に臭わないように対策を立てまくりましたが。

 衛生管理は結局「掃除」なんです。これがしやすいかどうか。しかし、大動物の厩舎だと、なんかうまくいってない場合が多そうで。その辺について書いていきます。

 


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蹄病を理解するー15 蹄病の治療

2020年06月24日 | 裸蹄管理

 ここんとこ、更新をさぼっておりました。申し訳ございません 
 新型コロナウイスル感染症のおかげで、今まで当ブログでご紹介してきた消毒薬や除菌剤について、知識がある程度一般に普及してきているのは(間違いも多そうですが)ありがたいことだと思います。願わくば、大動物の厩舎管理についても、もっと衛生管理を考えっるべきではないと常々思っているのですが・・・・・。

 で、今ちょうど梅雨時で、蹄病が憎悪しやすい時期ではあります。水虫も今頃が一番症状がひどくなりやすい。気温・湿度の両方が白癬菌の増殖に最も適した状況だからです。ので、この時期あたりから、我々小動物の動物病院にも、人間の皮膚科にも、白癬菌や他の真菌に寄生されて脱毛しちゃったり、水虫の症状が出たり悪化したり、家族にうつっちゃったり、という患者さんがわらわらいらっしゃるようになるんですね。

 蹄病=白癬菌感染症から派生した疾患である、というのが、当ブログの主張であり、当方の獣医としての結論になります。今まで蹄の外部の殺菌や消毒等々について書いてきましたが、残念ながら、いくらこれをやってもいったん爪に寄生してしまった白癬菌を退治することは不可能です。なぜなら、爪の内部に薬剤を浸透させることが極めて難しい、というか実質ほぼ無理だからです。
 最近出てきた塗り薬はある程度浸透するようですが、これを馬の蹄に使ったらトンデモナイ金額になってしまいます。実際上不可能だと思う。

 ということで、現時点では、人間でも内服薬の投与が中心になっています。外用薬は補助的な役割になる。

 内服の抗真菌剤については、昔の薬は副作用がひどくて使えたもんじゃありませんでした。しかし、今普及している内服薬は安全性が極めて高く、あり得る副作用も解明されていて、投与を止めれば落ち着くものなので、怯えずに使うべきです。当院では、小鳥やウサギにも普通に使っていますが、問題が出たケースは0。ただし、抗真菌薬はかなりの長期間飲ませなくてはなりません。つまり、お金の問題が出てきます。

 お金の問題をどう解決するか?投与法を工夫するしかないでしょう。現在一番安めの薬はテルビナフィンというものです。しかし、安めとはいえ、安くはない。どうやって投与するか、自馬を実験台にしてあれこれ工夫してみました。人間では連日投与になりますが、隔日投与にし、投与量も少なくし、どうなるか見てみた。

 ありがたや、ちゃんと治ります。但し、時間はかかる。

 ということで、第一選択としては(というか、現時点ではほぼこれしかないと思う)テルビナフィンの隔日投与を最低1年継続する、というのが基本的な投与計画になります。

 ちなみに、抗真菌薬は、今は動物用の内服薬も出ています。テルビナフィンではありませんが。イトラコナゾールという薬なんですが、犬用内服薬として承認も取っています。動物薬なんだから、本当はこちらを使えればいいんですが・・・・・。しかし、高すぎる。
 イトラコナゾールを服用する場合には、人間と同様に、短期(1週間程度)大量投与して休薬(3週間程度)、というパルス療法を使うべきでしょう。しかし、大量投与というのが難しい。馬にバレちゃって、「飲まないよ~~」とやられちゃうとまずいわけです。それも、治療法として問題がありそうだな、と感じる理由になっています。患者さんに拒否られちゃいますと、治療が成り立たなくなってしまう。

 で、内服治療の他に、新たな白癬菌感染を防ぐために蹄の洗浄消毒をこまめに行う・特に削蹄直後の消毒洗浄は徹底して行うこと、装蹄はしない、等々を行う必要も出てきます。

 あと、大きな問題として残るのが「環境(特に床面)にいる白癬菌をどうするの?」というやつ。これも困るんですが。というのは、今やおそらく、日本の馬99%以上が爪白癬に罹患していること間違いない状況なので。そうなると、馬がいるとこそこら中に白癬菌がスタンプされてる可能性があるじゃないですか、特に馬房の床。どうしたものか?

 これについては、そろそろ大発生し始めるサシバエ等々害虫防除の件も絡んできますので、次回。