ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

テーマ別に連載形式になっています。テーマ別に最初の記事からお読みください。

症例報告についてー質問や疑問に回答4

2021年10月11日 | 裸蹄管理

3)の続き

あと、気になったことを一つ。最近、装蹄師さんが、バーナー等で蹄底全体をあぶって焼烙して蹄を殺菌する(?)手法があるようで、馬のオーナー様からも相談を受けたことがある。効果があるのか?
 これはやめた方がいいと思います。

 理由:蹄はケラチンが主成分のタンパク構造で、スルメイカに近いんじゃないかとされている(本当はどうなんでしょう?ただ、水分量等は近いかも。科学的に分析されたのではなく、経験上の話なのをお忘れなく)。スルメをあぶるとどうなるかというと、縮みます。で、組織構造も変性して壊れます。蹄の構造も同様に、あぶると破壊される。従って、元来の耐久性が喪われる可能性が高い。あと、爪組織を再生している細胞((特に蹄底にある細胞群ですね。もちろん生きてます)にダメージを与えかねない。余計なことはするもんじゃない、ということです。

4)蹄葉炎というけど、馬を診察した獣医の誤診なのでは?なんでレントゲンを撮らなかったのか?

 馬獣医師の誤診かどうかは、知らん。そんなのは馬の先生方のレベルの問題でしょ。飼い主のこっちには関係のない話。これ、最近始まった馬獣医師認定制度なるものにも響く可能性があるかもですが、じゃあ、誤診するような獣医師がうろうろしてて、なのにそういうのに頼らざるを得ない飼い主の絶望感をどう考えていらっしゃるんでしょうか?

 レントゲンもねえ、撮ったらがばっと金を取られる。で、じゃあ、具体的な「こうすれば改善するから、こうやって治療しましょう。治るから」という示唆を受けられます?どーせクラブの管理が悪い・削蹄が下手だからだ・栄養に問題あり、とか何とか文句言われて、具体的な治療の指示なんかなし。そうじゃなければ「毎日蹄を2時間薬浴しろ」みたいな、できっこない事を言う。「できない?飼主失格」とか言われるのがオチでしょうが。そんな暇のある飼主がどこにいるのよ。競馬界では治療代なんかはした金かもしれんけど、乗馬界では、馬の預託費をひねり出すのにゼイゼイ言ってる方が多い、働かにゃ、費用の捻出は無理っしょ。その上で連日乗馬クラブに行って治療?そんな事できるかっつの。

 できる&治る治療を提案して実行してもらうのが医療でしょ。

 こういう「飼主失格」とか言う獣医はクッソヤブ医者ですから要注意。

 他の症例報告を聞いてて感じたことだけども、馬の先生方は(昨今の小動物臨床でも強く感じていることなのだが)病気を診てはいるが、患者を診ていない。だから、治せないのよ。


症例報告について、質問や疑問に回答ー3

2021年10月10日 | 裸蹄管理

3)蹄鉄を使うと蹄病が起きない気がするのだが

 これは、蹄鉄が良い、という事じゃないんです。実際にはやっぱり蹄病は起きまくっているんだけど、起きる箇所が裸蹄の時とは異なる、ということ。

 この件については、特にサラについて考えなければならない。サラって、競馬馬時代にはアルミ冷鉄を付けられてる。「冷鉄」とはなにかというと、「鉄をカンカンに熱して蹄底にじゅっと当てて~」というのとは違って、ただ、出来合いのアルミをくっつけるだけ。この違いの理由はよく分からないのだが、多分、若くてじっとしててくれないサラに通常の蹄鉄を打つのが危険すぎる(人にも馬にも)のと、後は単純に馬の頭数が多すぎて、一々鉄を熱してなんてやってられない、のかも。鉄の蹄鉄はやっぱり重いから、競争能力に悪影響がある、もあるかも。

 で、だから、ここで水虫をうつされちゃうんですよね~~~~。道具越しに。

 乗馬に転用されたら、サラでも鉄を焼いて蹄にジュっとやる蹄鉄に変えられる。この理由もよく分からないんですがね。「そんなもんだから」なんでしょうかね。

 鉄を焼いて装蹄すると、しかし、蹄縁の水虫は一瞬殺滅されます。当たり前ですね。熱による殺菌が効くわけだ。けれど、残念ながら、蹄の奥に侵入した白癬菌は殺せないし、熱で焼絡されない蹄叉は白癬菌の巣窟になる。

 ので、蹄叉腐乱は蹄鉄を付けても起きる。で、蹄叉が消滅してしまう馬も多数。そうじゃなければ、蹄癌、とこういうこと。

 もう一つの問題は、釘。なぜに釘が緩んで落鉄が起きるのか?未消毒の釘が(釘は焼きませんから)白癬菌を運んでしまうから。

 つまり、釘でもって白癬菌を打ち込んでしまうから、釘周囲に白癬菌が広がる。カビは当然ながら同心円状に侵入してゆくから、釘周りの蹄壁がボロボロになって落鉄、となるわけ。決して、装蹄師の腕が悪いせいではありません。

 蹄鉄は蹄縁の状態の悪さを隠してしまうから、それも大問題だと思う。蹄鉄を打ち替える時、蹄縁が良い状態になっていることはほぼない、と思うんだけど、蹄内に侵入済みの白癬菌が食い荒らしているからで、更に細菌の2次感染が起きるし。そこへ無理してさらに蹄鉄を打つ、どんどん蹄の状態が悪くなる、けど、蹄鉄で一応体重を支えはできるから、問題が先送りになり続けちゃうんでしょうね。

 元来蹄鉄の目的は「護蹄」の筈なんだけど、全然できてないじゃないか、と思うのですよ。

 あと、今回のカンファレンスでも思ったんだけど、大動物の先生方は、動物の体をぞんざいに扱い過ぎなんじゃないでしょうかね。蹄の治療でも、生爪剥がすようなことやってさ。痛いなんてもんじゃないと思うのに。こういう鈍感さが馬獣医の大問題だと思うんですけどね。それって、多分やっぱり鉄を焼いて蹄にジュっとやっても大丈夫だしさあ、という誤解からなってると思うんですよ。だから釘打ったって大丈夫、の筈ないべや。自分の爪に釘打ってみりゃすぐ分かるだに。


症例報告について、質問や疑問に回答ー2

2021年10月03日 | 裸蹄管理

2)に対する回答の続き

蹄の場合、とにかく生え代わりに時間がかかります。というか、本来は不必要に伸び続けるものではない.。つまり、よく言われる「1か月に1㎝程度伸びます」が正しい、わけではない。

このように、蹄端から白癬菌が入り込むのに対抗するためにせっせこせっせこ無理に伸ばしてしまう。ので、蹄質は落ちる。無理ゲー生産させられるから。

 よく、こんな蹄動画があります。

 長期間ネグレクトされててこんなになって可哀そう、って文脈で取られることが多いんだけど、違う。よーく見てみると、切り取った場所も荒れてる箇所があるでしょ。ここが既に水虫。水虫に対抗するために伸ばしまくるしか方法がないってこと。野生動物はネグレクトの極みだけど、一頭たりともこんなにならない。蹄を使ってるから、じゃないんです。水虫に罹ってないから、だけ。

 ちなみに、こういうのはヒトでもあります。

 爪全体が水虫に罹患してますね。切っても切っても水虫爪で金太郎飴状態。

 こうなると、飲み薬で対抗する以外道なし。こんな感じでね。薬が浸透している場所が蹄端に届くまでは、冷や冷やするしかない。

 

  ちなみに蹄の変形でよく言われるロングトー。なぜ起きるかというと、蹄壁~白線が水虫の影響で強度が弱くなり、体重を支えきれなくなるので、蹄叉を使って支えようとする、その結果起こる。難しい話ではない。ロングトーは、自馬も以前そうなりがちでしたけど、その頃蹄叉はものすごく延びちゃって。装蹄師さんは、蹄叉が伸びるから、ロングトーになる、と説明してましたけど、逆です。

 だからねえ、蹄壁をヤスリで削るってのは絶対にやってはいけない。強度をわざわざ落としてるのと同じ。それどころか、水虫を蹄壁からもすり込んでしまう。

 結局、装蹄師さんも、馬の獣医もその時その時しか診てない、連続した診立てじゃないから分からないんでしょうね。 


症例報告について、質問や疑問に回答ー1

2021年10月01日 | 裸蹄管理

 今回のカンファレンスでは、症例報告中に質問がチャット形式で送られてきて、これ多分自分用の質問でしょう、というのに文書で回答する、という形式が採られました。しかし、文書の回答って、ツイッター並みの小文で、回答として不十分だなあと。ので、多分こんな質問でしたっけ?というのにもそっと詳しく回答してみます。

1)白癬症との確定診断の根拠は?

蹄スワブを白癬菌検出培地(ダーマキット)に植えて真菌培養したら陽性が出た事。但し、これは今なら直接鏡検で調べたほうがよかったかなと思っている。直接鏡検のテクニックを手にれないと・・・・・。実は、意外と簡単でフィールドでもできそうなんですよ。いや、サンプリングだけやって病院で調べて別にいいとは思うんですが。もう一つは、テルビナフィンにがっちり反応した、これに尽きます。サンプリングの手法は後程詳しく解説する予定。

2)ただ、時間が経過しただけなのでは?

テルビナフィンを投与する以前~投与開始後1年間は、削蹄裂蹄、蹄叉もグダグダの繰り返しでした。だから、「時間が経過して、たまたまよくなっただけじゃん」と言いたいんでしょうけど。あのですね、このぐだぐだは、過去5年間繰り返されてたわけ。その繰り返しがストップしたんだから、経過とは言えないんです。その理由を以下に。

 水虫や皮膚びらん等々、皮膚系の疾患はついつい外用薬でどうにかしたくなるんですが、びらん以上組織に病原体が食い込むと、外用薬だけじゃとても無理、内用薬で何とかしなくちゃなりません。爪水虫の場合、こんな感じです。

これは人間のケースですが、白癬菌が実際にいる部位はどこかというと、変色したり変形した場所じゃないんですよ。そこではすでに消滅してます。餌のケラチンを食べつくしちゃってるから。で、もっと奥の一見きれいな場所に食い込んでいる。動物の皮膚白癬だと、最初円形ハゲができたって連れてこられて、円形ハゲの中心部をサンプリングしても、すでにそこにはいない。どこにいるかというと、辺縁の毛が生えている部位。だから、外用薬も辺縁につけないと意味ない、ついつい剥げてるとこにつけたくなりますけど、それじゃ意味なし。どんどん広がってしまう。

 爪の場合、一見きれいな場所に食い込んでるから、サンプリングするとなったら生爪剥がすみたいなことをしなくちゃならない。

 で、こんな場所に届く外用薬なんぞありませんから(最近は出てきてはいますが、薬価10万円以上/5ml)内用薬で爪床から侵入を阻止する。テルビナフィンは角質移行に優れているし、いったん浸透したらその場に留まって効力を発揮し続けてくれる。しかーし、爪全体に寄生感染が広がっていると、テルビナフィンがのっかった爪に生え変わるまでは同じことの繰り返しになるに決まってるんです。爪自体は死んだ組織だから、治療に応じて即治るなんてことは起こらない。

 蹄の場合どうかというと、

 これは蟻道の例ですが、ボロボロになった箇所には、すでにいない。だから、表面の荒れてる場所からサンプリングして培養したって、コンタミばかりで白癬菌なんかひっかけられるわけがない。削って一見白くてきれいになった、箇所に実は潜んでいるので、そこからサンプリングする。逆に言うと、きれいになったとこまで削蹄したから大丈夫、ではない。その場所にこそ白癬菌がいます。だから、何の解決にもならない。むしろ、症状を進行させてしまう恐れすらあるのだ。削蹄してきれいになった~~、のに2週間後には逆戻り、は、それが理由です。