きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

3月26日の日本民話 沼女の手紙

2010-03-26 06:12:20 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話


3月26日の日本民話


沼女の手紙



沼女の手紙
岩手県の民話岩手県の情報


 むかしむかし、あるところに、みぞう沼という沼があり、その沼の近くに孫四郎(そんしろう)というお百姓が住んでいました。

 ある日、村人たちが大勢で、お伊勢参りへ出かける事になりました。
 孫四郎も誘われたのですが、家が貧乏だったので誘いを断ると、いつもの様にみぞう沼へ行って岸の草を刈っていました。
 すると突然、沼から美しい女の人が現れて、孫四郎にこう言ったのです。
「お前さんが、毎日そうやって岸の草を刈ってくれるので、本当にありがたく思っております。何か礼をしたい思うが、望みの物はありませんか?」
「はい、わたしはお伊勢参りがしたいのですが、お金がなくて、それが出来ません」
 孫四郎が言うと、女の人はにっこりして、
「それは、たやすい事。
 わたしが、お伊勢参りに行くお金をあげましょう。
 しかし、一つ頼みがあります。
 途中、富士山のふもとに青沼と言うのがあるから、そこへ寄って来てもらいたいのです。
 その沼へ行って手を叩くと、沼から女が出てきます。
 それはわたしの妹ですから、妹に手紙を渡して下さい。
 さあ、これはお伊勢参りのお金と手紙です」
 そう言って沼の女は、孫四郎にお金と手紙をくれました。
 孫四郎は大喜びで村に戻ると、お伊勢参りに参加して、みんなと一緒に旅立ちました。


 さて、一行が富士山の近くに来た時、孫四郎はみんなと別れると教えられた青沼を探す事にしました。
 途中で六部(ろくぶ→六十六ヶ所のお寺をまわる巡礼の人)に出会ったので、孫四郎が青沼の場所を尋ねてみると、六部が不思議そうに尋ねました。
「青沼ですか? 知ってはいますが、なぜ青沼へ行くのですか? なにしろあそこは、怪しい物が住んでいるとのうわさですから」
「怪しい物? いや、そんなはずはありません。そこには親切な沼女の妹が住んでいるはずですから」
 孫四郎は沼女の事を話して、沼女にもらった手紙を六部に見せました。
 すると六部がその手紙を読んで、
「これは大変だ!」
と、言うのです。
「何が、大変なのですか?」
 字が読めない孫四朗が尋ねると、六部が手紙を読んでくれました。
《この男は、毎日わたしの沼の草を刈って、わたしの隠れる場所をなくしてしまう。
 取って食おうと思うけれど、そうすると沼にわたしのいる事が人間たちにばれてしまう。
 そこで、お前の所へ寄らせるから、代わりに食べておくれ。
 みぞう沼の姉より》
 それを聞いた孫四郎がまっ青な顔で震えていると、六部がにっこり笑って言いました。
「心配ない。わたしが手紙を書き直してあげよう」
 そして六部は、筆を取り出すと、
《この男は、毎日わたしの沼の草を刈ってくれるので、何かお礼をしたい。
 そこで、お前の方でお礼の用意をしておくれ。
 金を生む馬をやってくれると、ありがたい。
 みぞう沼の姉より》
と、手紙を書き直してくれました。
 そして孫四郎はその手紙を持って青沼へ行き、パンパンパンと手を叩きました。
 すると美しい女が沼から現れたので、孫四郎は手紙を渡しました。
 手紙を読んだ沼女は、しばらく不思議そうな顔をしていましたが、
「ふーん。あの姉が、人間にお礼をねえ。・・・まあいいわ、それでは沼の中へ来てください」
と、言いました。
「あの、沼の中へ来いと言っても・・・」
 孫四郎が困っていると、
「わたしにおぶさって、目をつぶりなさい」
と、沼女が言いました。
 孫四郎が言われた通り、沼女におぶさって目を閉じると、間もなく、
「さあ、もう目を開けていいですよ」
と、沼女が言いました。
 孫四郎が目を開けてみると、そこはとても美しい家の中です。
 金びょうぶ、銀びょうぶがたってあって、床の間には美しい宝石が飾ってあります。
 孫四郎はしばらくの間、そこで泊まる事になりました。
 毎日毎日、大変なごちそうが出て、女中たちが琴やしゃみせんで孫四郎をもてなしてくれます。
 あっという間に数日間が過ぎ、孫四郎は沼女に言いました。
「あの、そろそろ帰らせてもらいます」
 すると沼女は馬屋から一頭の馬を連れて来て、孫四郎に言いました。
「これは姉に良くしてくれたお礼の馬です。この馬は一日に一合の米をやれば、金を一粒産みます」
 そして沼女は孫四郎と馬を背負うと、再び沼の外へと送ってくれました。
 孫四郎は沼女にお礼を言うと、馬にまたがって言いました。
「さあ、とにかく、お伊勢参りに行かなくては」
 すると馬が、ヒヒーン! と、いななくと、不思議な事に孫四郎と馬は、もう伊勢神宮へ来ていたのです。
「うひゃー、何て足の速い馬だろう」
 孫四郎はお伊勢参りをすませると、再び馬にまたがって、
「さあ、今度は村に帰らないと」
と、言いました。
 すると馬がヒヒーン! と、いなないて、孫四郎と馬はもう村の入り口に来ていたのです。


 それから孫四郎は、馬に毎日一合ずつの米をやりました。
 すると沼女の言った様に、馬は一粒ずつの金を産み落としたのです。
 一粒といっても金ですから、大変な価値があります。
 孫四郎はたちまち、村一番の長者になりました。


 さて、孫四郎には、なまけ者で欲張りな弟がいます。
 その弟が、
「貧乏だった兄さんが長者になったのには、何かわけがあるに違いない」
と、考え、そっと孫四郎の家に忍び込むと中の様子を見張りました。
 すると奥座敷に馬が一頭隠してあって、それが毎日一合の米を食べては、一粒の金を生んでいるとわかったのです。
「なるほど、兄さんが長者になったのは、あの馬のおかげか。
 しかし、毎日一合の米ではもったいない。
 おれなら一升(いっしょう→一合の十倍)の米を食わせて、十粒の金を手に入れるのに」
 そこで弟は孫四郎が留守のすきに馬を盗み出すと、自分の家に連れて行って一升もの米を馬に無理矢理食べさせたのです。
「さあ、食え食え、どんどん食って、金をどっさり産んでくれ」
 すると馬は、とても元気になって、
「ヒヒヒーン! ヒヒヒーン!」
と、いななきながら家を飛び出して、陸中の国(りくちゅうのくに→岩手県と秋田県の国境)のある山の上へ飛んで行ってしまいました。


 今では駒ヶ岳(こまがたけ)と言われている山が、その馬が飛んで行った山だそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → カチューシャの歌の日
きょうの誕生花 → しゅんらん
きょうの誕生日 → 1975年 石塚義之 (芸人)


きょうの新作昔話 → 酒好きのおじいさん
きょうの日本昔話 → 八匹のウシ
きょうの世界昔話 → 海の水はなぜからい
きょうの日本民話 → 沼女の手紙
きょうのイソップ童話 → ガチョウとまちがえられた白鳥
きょうの江戸小話 → 入りにくい


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3月24日の日本民話 じゃんじゃん

2010-03-24 06:25:03 | Weblog

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3月24日の日本民話


じゃんじゃん



じゃんじゃん
三重県の民話三重県情報


 むかし、ある森に、こんな言い伝えがありました。
「この森の下には海が広がっていて、森を掘ると塩水が出て来るそうじゃ」

 そこで村の若者たちが言い伝えを確かめようと、長い竹筒(たけづつ)を何本も何本もつないで地面に突き刺してみました。
 しかし何本つないでみても、水はいっこうに出ません。
「なんじゃ。言い伝えは、うそか」
 若者たちがあきらめて帰ろうとすると、そこへ一人の(さむらい)がやって来て言いました。
「ここで、相撲をとってみないか?
 そうすれば負けた者が尻もちをつくから、その重みで水が出て来るかもしれん。
 それから負けた者は、を一本づつこの竹筒の中へ投げ込むんだ
 井戸の神さまが怒って、水を出すかもしれんからな」
 そこで若者たちは、相撲を始めました。
 するとさっそく地面から、
 ごーーーっ
と、小さな地響きがおこりました。
「よし、次は刀だ」
 そして負けた者が刀を竹筒の中へ落すと、竹筒の底の方から、
♪じゃんじゃん
と、何かが鳴り響きました。
「おおっ、井戸の神さまが怒っているぞ」
 若者たちはさらに相撲を続けて、それから何本も刀を竹筒の中に投げ込みました。
 するとついに竹筒から水が吹き出して、このあたりは一面は池になったそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → マネキン記念日
きょうの誕生花 → かたくり
きょうの誕生日 → 1970年 原田泰造 (芸人)


きょうの新作昔話 → 孝女(こうじょ)いと
きょうの日本昔話 → だまされたどろぼう
きょうの世界昔話 → 銅の国、銀の国、金の国
きょうの日本民話 → じゃんじゃん
きょうのイソップ童話 → いっしょに狩りにいったライオンとロバ
きょうの江戸小話 → なりたてのどろぼう


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3月23日の日本民話 スズメとキツツキ

2010-03-23 05:56:38 | Weblog

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3月23日の日本民話


スズメとキツツキ



スズメとキツツキ

福井県の民話福井県情報


 むかしむかし、スズメのお母さんが重い病気になって、今にも死にそうだという知らせがありました。
「そりゃ、大変だ!」
 親孝行なスズメの息子は、普段着のまま大あわてでお母さんのところへかけつけました。
 仕事の途中で来たので、顔はドロだらけです。
 でも、元気な息子の顔を見たお母さんは、
「ありがとう。よく来てくれたね」
と、とても喜び、死にそうだった病気まで治ったのです。
 この事を知った神さまは、とても感心して
「これからは虫の他にも、人間と同じ様にお米を食べるがよい」
と、お米を食べる事を許してくれたのです。
 そして人間の住んでいる近くでも、暮らせる様にしてくれました。

 さて今度は、キツツキのお母さんが重い病気になり、今にも死にそうだという知らせがありました。
 でも、親不孝なキツツキの娘は、
(ふーん、そうなの。
 でもまあ、まだ死んだわけではないから、あわてなくても大丈夫ね。
 それよりも、きっと近所の鳥たちもお見舞いに来ているから、わたしのきれいなところを見せなくちゃ)
 キツツキの娘は、いつもよりもていねいにおけしょうをすると、一番上等な着物を着て出かけました。
 でも気の毒な事に、お母さんは娘が来るのが待ち切れずに死んでしまいました。

 さて、それを知った神さまは、カンカンに怒りました。
「母親よりも自分が大事とは、なんとひどい娘だ!」
 そして神さまは罰として、キツツキに木の中の虫しか食べられないようにしたのです。

 そう言うわけで、スズメは今でも自由にどこへでも飛んで行けるし、おいしいお米を食べる事も出来ます。
 しかしキツツキは山の中から出られず、木に穴を開けなければ虫を食べる事が出来ないのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 世界気象の日
きょうの誕生花 → ベルゲニア(ヒマラヤゆきのした)
きょうの誕生日 → 1967年 七瀬なつみ (俳優)



きょうの日本昔話 → ほんとうの母親
きょうの世界昔話 → おじいさんとまご
きょうの日本民話 → スズメとキツツキ
きょうのイソップ童話 → サヨナドリとツバメ
きょうの江戸小話 → やぶ先生のぐち


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3月22日の日本民話 キツネがついた幸助

2010-03-22 06:38:46 | Weblog

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3月22日の日本民話


キツネがついた幸助



キツネがついた幸助
静岡県の民話静岡県情報


 むかしむかし、東海道(とうかいどう)ぞいのある村に、幸助(こうすけ)と言う、真面目で働き者のお百姓(ひゃくしょう)が住んでいました。
  この幸助が、五十五歳になったある日の事です。
  どうした事か、幸助が様子が急におかしくなったので、奥さんは驚いて近所の人たちを呼んで来ました。
  近所の人たちが集まると、幸助は掛け軸(かけじく)がかかった床の間(とこのま)を背にしてきちんと座り、こんな事を言い出したのです。
「我は、大友(おおとも)の白ギツネである。
 この度、豊川(とよかわ)の稲荷(いなり)さまの使いとして、江戸まで行く事となった。
 江戸から戻る時も、またこの家を宿(やど)に借りたい。
 では、 世話(せわ)になったな」
  そう言って幸助は、旅の仕度を始めたのです。
「あなた、何を言っているの?」
「これはもしかすると、キツネがとりついたか?」
 奥さんと近所の人たちは幸助をあわてて引き止めると、幸助をふとんに寝かせました。
 そしてみんなが心配していると、幸助は正気に戻ったのか、きょとんとした顔でふとんから起きあがり、
「おや? みんなここで、何をしておるんだ?」
と、言うのです。
  奥さんや近所の人たちが今までの事を説明しましたが、幸助はそれまでの事を全く覚えていませんでした。

 さて、それから何日かすると、幸助がまたおかしな事を言いました。
「我は、先に宿を借りた大友の白ギツネである。
 たった今、江戸から戻って来た。
 我は今年で、五百歳になる。
 ここは富士の山も近くにながめられて、とてもよいところじゃ。
 気に入ったので、ここに住もうと思う。
 だから社(やしろ)をつくって、我をまつれ」
 やがて正気に戻った幸助にこの話をすると、幸助はまじめな顔つきで言いました。
「これも、何かの縁(えん)だ。白ギツネの頼みをきいてやろう」
 そして幸助は家の敷地(しきち)に小さなお稲荷(いなり)さんの社をつくり、自分はそこの神主(かんぬし)になりました。
  神主になった幸助は病気や大漁(たいりょう)のお祈りを頼まれる、どこへでも出かけて行って一心(いっしん)にお祈りをしました。
  するとどんな願いでも、すぐにかなえられたそうです。
  また幸助は、これまで一度も絵を描いた事がありませんでしたが、神主になってから突然、それは見事な絵を描く様になりました。
  特に富士山の絵が素晴らしく、神主になってから四年後、『富士景色』と呼ばれる立派な画集(がしゅう)を二冊を残して、幸助はこの世を去ったのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 放送記念日
きょうの誕生花 → れんぎょう
きょうの誕生日 → 1977年 松本リカ (タレント)


きょうの新作昔話 → 大力権兵衛
きょうの日本昔話 → まゆにつば
きょうの世界昔話 → オオカミになった弟
きょうの日本民話 → キツネがついた幸助
きょうのイソップ童話 → オオカミとヒツジ飼い
きょうの江戸小話 → 剣術指南


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3月21日の日本民話 ネコに技を教えるキツネ

2010-03-21 07:45:40 | Weblog

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3月21日の日本民話


ネコに技を教えるキツネ



ネコに技を教えるキツネ
福岡県の民話福岡県情報


 むかしむかし、ある男が夜ふけに便所(べんじょ→トイレ)に行って、小窓から何気なく外をのぞきました。
 便所の前には、荒れた畑が広がっています。
 するとそこへ、どこからともなく一匹のネコが現れました。
「はて。あのネコは、あんなところで何をしておるんじゃろう? 仲間でも、待っておるのかな?」
 すると今度は、畑のすみからキツネが出て来たのです。
 キツネはネコを見つけると、そのままネコのところに近づいて行きました。
「何じゃ? けんかでも始めるのか?」
 男はそう思いましたが、しかし二匹は仲良く並ぶと同じ様に前足を上げたり後ろ足を上げたりして、まるで人間の様に踊り出したのです。
 そしてネコが踊りを間違ったりすると、キツネはやさしくネコの手足を持ち上げて、ネコに正しい踊りを教えるのです。
「こいつは驚いた。キツネがネコに踊りを教えるとは」
 キツネとネコの踊りはそれからもしばらく続きましたが、便所の小窓から見ていた男は体が冷えて、思わずくしゃみをしてしまいました。
 ハックショーン!
 するとキツネとネコはその音に驚いて、たちまち姿を消してしまいました。

 むかしからキツネは、ネコに踊りを教えると言われています。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → ランドセルの日
きょうの誕生花 → まんさく(満作)
きょうの誕生日 → 1973年 石井正則 (芸人)



きょうの日本昔話 → 八百比丘尼(やおびくに・はっぴゃくびくに)
きょうの世界昔話 → タールぼうや
きょうの日本民話 → ネコに技を教えるキツネ
きょうのイソップ童話 → 病気になったシカ
きょうの江戸小話 → 文句をいいに


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