きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

3月20日の日本民話 子ザルのまつ

2010-03-20 10:30:18 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話


3月20日の日本民話


子ザルのまつ



子ザルのまつ
長野県の民話長野県情報


 むかし、松代町(まつしろちょう)と言うところに、徳嵩源五郎(とくたかげんごろう)と言う腕の良い彫り物師が住んでいました。
 ある日、源五郎は山でサルの親子を見つけました。
 母ザルは猟師に鉄砲で撃たれたのか、背中から血を流して死んでいましたが、そのふところには生まれたばかりの子ザルが、母ザルのおっぱいを探して手足を動かしています。
「なんと、可哀想に」
 哀れに思った源五郎は、さっそく子ザルを抱くと家に連れて帰りました。
 そして源五郎夫婦は子ザルに『まつ』と言う名前を付けて、我が子同様に可愛がったのです。


 まつはとてもかしこいサルで、源五郎が踊りや芸を教えると、それは上手にやってみせるのです。
 そしてまつの話は評判になって、やがては松代(まつしろ)の殿さまの耳にまで届きました。
 殿さまはさっそく、源五郎とまつを呼び寄せました。
 まつは源五郎の合図に合わせて、逆立ちや宙返りの芸を見せました。、
「これは見事。見事だ」
 殿さまは、大喜びです。
 そしてまつの芸を見終わった殿さまは、源五郎に言いました。
「源五郎よ。金なら、いくらでも出そう。だからサルをゆずってくれ」
「えっ、まつを?」
 これには、源五郎も困ってしまいました。
 たとえ殿さまの命令でも、まつは我が子同様に可愛がっているサルです。
(よわったな)
 何と返事をしたら良いかと迷っていると、源五郎のそばに座っていたまつが、とつぜん殿さまの前に進み出て、ていねいに両手をつくと、
『そればかりは、ごかんべんを』
と、言う様に、何度もおじぎをしたのです。
 これを見た殿さまは、とても心を打たれて、
「よいよい、今の言葉は取り消しじゃ。だがその代わり、時々城へ遊びに来るのじゃぞ」
と、やさしく言いました。
 こうして源五郎夫婦とまつは、それからも仲良く幸せに暮らしました。


 今でもまつのお墓は、松代町大信寺にある徳嵩家の墓地に残っているそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 電卓の日
きょうの誕生花 → みつまた
きょうの誕生日 → 1956年 竹中直人 (俳優)



きょうの日本昔話 → 家からとおくなっても
きょうの世界昔話 → だんなさまの中のだんなさま?
きょうの日本民話 → 子ザルのまつ
きょうのイソップ童話 → モミの木とイバラ
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3月19日の日本民話 ブッポウソウの声

2010-03-19 07:04:20 | Weblog

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3月19日の日本民話


ブッポウソウのこえ



ブッポウソウの声
高知県の民話高知県情報


 むかしむかし、土佐の国(とさのくに→高知県)に、たいさくと言うとんちの上手な人がいました。
 ある日、たいさくは町に出かけて、こんな事を言いふらしました。
「わしらの山にはブッポウソウと言う珍しい鳥がいて、それがまことに良い声で鳴くんだよ」
 するとその話が、お城の殿さまの耳にも届いたのです。
「ほう。このあたりにも、ブッポウソウがいるとは知らなかった。ぜひ一度、鳴き声を聞いてみたいものだ」
 殿さまが言うと、家来(けらい)たちが言いました。
「ですが殿。たいさくと言う男が住んでいるあのあたりの山には、道らしい道がございません。山に入る事は、とうてい無理にございます」
「そうか。しかし道がなければ、道をつくればよいではないか。そうであろう」
「ははーっ! まことにその通りでござます」
 そこで家来たちは、さっそく山に道を開きました。
「では、まいるとしよう」
 殿さまはカゴに乗ると、大勢の家来と山に出かけました。
 ところが山で鳴いているのはブッポウソウではなく、野バトばかりです。
 殿さまはカンカンに怒って、たいさくを城に呼び出しました。
「これ、たいさく。お主が住んでいる山に行ったが、ブッポウソウの声など聞こえんではないか」
 するとたいさくは、不思議そうな顔で言いました。
「おかしいですね。確かに山では、♪デデポッポゥ、♪デデポッポゥと、鳴いているのですが」
「バカ者! それは野バトじゃ!」
「ありゃ、そうでしたか。わしはてっきり、あれがブッポウソウの声かと思いました。しかし、さすがにお殿さまは物知りですな、あははははははっ」
「笑い事ではないわ!」

 たいさくはきつく叱られましたが、でも殿さまが山に道をつくってくれたおかげで、村のみんなは山仕事が楽になったと大変喜んだそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → アカデミー賞設立記念日
きょうの誕生花 → ベロペロネ(こえびそう)
きょうの誕生日 → 1955年 ブルース・ウィリス (俳優)


きょうの新作昔話 → ずいとん和尚
きょうの日本昔話 → 水アメの毒
きょうの世界昔話 → ピアンとサル
きょうの日本民話 → ブッポウソウのこえ
きょうのイソップ童話 → カラスとヘルメス
きょうの江戸小話 → ぬすびとの辞世


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3月18日の日本民話 シラミの質入れ

2010-03-18 01:04:28 | Weblog

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3月18日の日本民話


シラミの質入れ



シラミの質入れ
山形県の民話山形県情報


 むかしむかし、米沢(よねざわ→山形県南部の市)の近くの村に佐兵(さへい)と言う、とんちの上手な男がいました。

 貧乏な佐兵の着ている着物はボロボロで、その着物には、いつもシラミがたかっています。
 ある日、お金が必要になった佐兵は、家の中で一番上等な着物を質屋(しちや)へ持って行きました。
 すると、質屋の番頭(ばんとう)が、
「おい、佐兵よ。お前の着物には、シラミがいっぱいたかっているぞ」
「うん。確かにたかっているな。だが、お前さんの店では、《何でもお受けします》と書いてあるぞ」
「まあ、それはそうだが」
「そうだろう。それじゃあ着物と一緒にシラミも預かったと、ちゃんと質札(しちふだ→預かった事を示す紙)に書いてくれよ」
「シラミをか? まあいいが、それでシラミの数は?」
「そうだな。五升(→約9リットル)のシラミを預かったと書いてくれ」
「へいへい」
 番頭がその通りに書いて渡すと、佐兵はニヤリと笑って帰りました。

 そして数日後、佐兵はお金を持って着物を引き取りに来ました。
 着物を受け取った佐兵は、質札を取り出すと番頭に言いました。
「確かに着物は受け取ったが、でも、返してもらう物がまだ足りないぞ」
「足りないって、何が足りない?」
「五升のシラミだ。質札にちゃんと書いてあるものだろう。だからシラミも返してもらわねえとな」
「へっ?」
 シラミの事など冗談だと思っていたのですが、確かに質札に書いて渡したので、客から返せと言われれば返さなくてはなりません。
 でもシラミを五升なんて、どこを探してもありません。
 番頭は、頭をかきながら、
「まったく、佐兵にはかなわんな」
と、シラミの代わりに酒代を渡して許してもらったそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 精霊の日
きょうの誕生花 → とさみずき
きょうの誕生日 → 1962年 豊川悦司 (俳優)



きょうの日本昔話 → 忠犬ハチ公
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きょうの日本民話 → シラミの質入れ
きょうのイソップ童話 → 目の見えない人
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3月17日の日本民話 山弥長者(さんやちょうじゃ)

2010-03-17 07:28:06 | Weblog

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3月17日の日本民話


山弥長者(さんやちょうじゃ)



山弥長者(さんやちょうじゃ)
大分県の民話大分県情報


 むかしむかし、大分の萩原(はぎわら)と言うところに、山弥之助氏定(さんやのすけうじさだ)という商人がいました。
 ある春の日の事、仲間と二人で商売に出た山弥は、帰り道に十六山(とうろくやま)のふもとで一休みをしていました。
 疲れているのか、連れの男は気持ちよさそうにいびきをかいています。
 すると一匹のハチが飛んで来て、何と男の鼻の穴に潜り込みました。
 やがてハチは鼻の穴から出て来ると、またどこかへ飛んで行ってしまいました。
 それを見ていた山弥に、しばらくして目覚めた男はこんな話しをしました。
「なあ、おれは面白い夢を見たぞ。ハチが飛んで来て、『十六山に、黄金が埋まってるぞ』と、言うんだ。まあ、夢の話。わはははははは」
 男はそう言って笑い飛ばしましたが、実際にハチを見た山弥はその夢を信じ、男と別れるとさっそくあちらこちらと手当たり次第に掘り始めたのです。
 しかしいくら掘っても、黄金なんて出てきません。
 でもあきらめる事なく何年も掘り続けた山弥は、ある日ついに黄金を掘り当てたのです。
「やった! 黄金だ! ハチのお告げは本当だったんだ!」
 そしてそれを元手に商売を成功させて、やがて西国一と呼ばれるほどの長者になったのです。


 長者になった山弥は万屋町(よろずやちょう)に立派な屋敷を建てて、ぜいたくな暮らしを始めました。
 そして並のぜいたくにあきた山弥は、屋敷の天井にギヤマン(→ガラス)を張り詰めると、そこを水槽にして金魚を飼うことにしたのです。
 天井で金魚が泳ぐ光景はとても評判となり、やがては府内(ふない)の殿さまも山弥の屋敷を訪れて、のんびりと過ごすようになりました。


 そんなある日の事、ギヤマン張りの天井の部屋で、殿さまと山弥の息子が寝ころびながら天井の金魚をながめていたのですが、天井の水槽に新しい金魚を取り寄せた事を自慢しようとした息子が、
「殿、あそこの黒いのが、出目金でございます。そしてその隣りのが、りゅう金でございます」
と、寝ころんだまま殿さまに向かって、足で金魚の説明したのです。
 すると殿さまは息子の態度に怒り出し、
「無礼者! 足で説明するとは、何事だ!」
と、何と山弥一族に死罪を申しつけたのです。
 それを聞いた山弥は、
「私の屋敷からお城まで千両箱を並べますゆえ、どうぞ命だけはお助け下さい」
と、必死にお願いしたのですが、殿さまは山弥の願いを聞き入れず、山弥一族は堀切峠(ほりきりとうげ)で首をはねられたのです。


 山弥の屋敷があった大手町には、今でもその跡をしめす石の柱が立てられているということです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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きょうの日本民話 → 山弥長者(さんやちょうじゃ)
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3月16日の日本民話 生まれ変わった赤ちゃん

2010-03-16 07:47:31 | Weblog

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3月16日の日本民話


生まれかわった赤ちゃん



生まれ変わった赤ちゃん
和歌山県の民話和歌山県情報


 むかしむかし、那賀郡田中村(→今の和歌山市)というところに、赤尾長者と呼ばれる長者がいました。
 長者には長いあいだ子どもがいませんでしたが、ようやく玉の様な男の子が生まれました。
 長者は子どもに万年も生きてくれる様にと願いを込めて、亀千代(かめちよ)と言う名前をつけると、子どもを毎日はかりにかけて、体重が少しずつ増えるのを楽しみにしていました。


 ところがある日の事、長者が体重を測ろうとしたとたん、はかりのひもがぷっつりと切れて、亀干代は地面に頭をぶつけて死んでしまったのです。
 長者夫婦は、一晩中泣き続けました。
 そしてふと、死んだ子の手のひらに名前を書いておけば、生まれ変わったところがわかるという言い伝えを思い出したのです。
 長者はさっそく筆をとると、亀干代の左の小さな手のひらに、
《赤尾長三郎の一子、亀干代》
と、書きつけ、
「いいか、亀干代。いつまでも待っているから、必ず生まれ変わって来いよ」
と、何度も言い聞かせてから、小さなお棺のふたを閉じました。


 それから数年後のある日、小さな赤ちゃんをおぶった若い夫婦が、赤尾長者を訪ねて来ました。
 長者夫婦がその赤ちゃんを見てみると、何と左の手のひらに《赤尾長三郎の一子、亀干代》と書きしるした文字が、はっきりと現われていたのです。
 おどろく長者夫婦に、若夫婦が言いました。
「手のひらの文字を不思議に思い、お寺の和尚さんに相談したところ、『この子は、赤尾長者の子の生まれ変わり。この文字はどんなに洗っても決して消えないが、以前に生まれた家の井戸の水で洗えば消える』と、言われました。そこで、お水をいただきにまいりました」
 長者夫婦は赤ちゃんを抱きしめると、涙を流して頼みました。
「一生のお願いや。この赤ちゃんを、わしらにくださらんか。お礼なら、なんぼでもしますから。何なら、この屋敷を差し上げても良い」
 若夫婦は、長者夫婦の涙にもらい泣きしながらも、きっぱりと断りました。
「お気持ちはわかります。ですがこの子は、わたしたち夫婦の宝物なのです」
「・・・わかりました。もう一度我が子を抱けただけでも、本望です」
 長者夫婦はあきらめると、若夫婦に井戸の水を差し出しました。
 若夫婦がその水で赤ちゃんの手のひらを洗うと、文字はみるみる消えたということです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 万国赤十字加盟記念日
きょうの誕生花 → イースターカクタス
きょうの誕生日 → 1967年 小比類巻かほる (歌手)



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きょうの日本民話 → 生まれかわった赤ちゃん
きょうのイソップ童話 → 川と海
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