3月29日の日本民話
大工の神さまと天人
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むかしむかし、あるところに、とても腕の良い大工さんがいました。
でもこの大工さんには、まだお嫁さんがいません。
そこで同じ村のきれいな娘さんに、
「ぜひ、わたしの嫁になってください」
と、お願いしたのです。
すると娘さんは、嫁になるのを断る為に、
「たたみが六十枚もある、大きな家を一日で建てる事が出来たら、あなたの嫁になりましょう」
と、出来もしない事を言ったのです。
しかし大工さんは、どうしても娘さんをお嫁にしたかったので、
「わかりました。何とかして、一日で家を建てましょう」
と、言ったのです。
(弱ったな。ああは言ったが、どうしよう?)
大工さんは仕方なくワラ人形を二千個も作って、何やら呪文を唱えました。
そしてワラ人形にフゥーーーッと、息をかけると、不思議な事にワラ人形はたちまち人間の大工さんになって、あっという間にたたみが六十枚もある大きな家を建てる事が出来たのです。
大工さんは大喜びで、さっそく娘さんのところへ行くと言いました。
「約束通りに家を建てたから、わたしの嫁になってください」
「本当に?」
娘さんが行ってみると、そこには大きくて立派な家が建っています。
中を見ると、ちゃんとたたみが六十枚あります。
「わかりました。あなたの嫁になりましょう」
こうして娘さんは、大工さんのお嫁さんになりました。
大工さんとお嫁さんは、大きな家で仲良く暮らしました。
そして二千人の大工さんたちは、日本中に散らばって、家を建てたり橋をつくったりしました。
ところが何年か過ぎた頃、お嫁さんが大工さんに言いました。
「今まで黙っていましたが、わたしは天の国に戻らなくてはなりません。実はわたしは人間ではなく、天の国から来た天人(あめひと→天から来た人)なのです」
すると、大工さんも言いました。
「実はわたしも、人間ではありません。わたしはてんごという大工の神です。それでは一緒に、天の国へ行って暮らしましょう」
こうして大工の神さまと天人は、天高く登っていきました。
おしまい
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