きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

10月21日の日本民話 三人のほら吹き

2009-10-21 06:56:49 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話


10月21日の日本民話


三人のほら吹き



三人のほら吹き
佐賀県の民話佐賀県情報


 むかしむかし、九州には、三人のほら吹きの名人がいました。
 その三人とは、肥後(ひご→熊本県)の彦兵衛(ひこべえ)と、肥前(ひぜん→佐賀県)の安兵衛(やすべえ)と、唐津(からつ→佐賀県)の勘右衛門(かんえもん)です。
 ある日、三人は酒をのみながら話しをしていると、だんだん話しが大きくなり、ついに自分の住んでいる土地の自慢大会になったのです。
 最初に安兵衛が言いました。
「肥前にはな、大むかしに大きなクスノキがあったのだ。その影は肥前中をおおいかくし、雨がふってもカサがいらんのじゃ。こんなに大きなクスノキは、日本中探してもなかろう」
と、言ったのです。
 すると、彦兵衛が言いました。
「肥後の阿蘇(あそ)には、大きな赤ウシがいるんだぞ。そのウシときたら同じ所におりながら、向きをちょっと変えるだけで、肥後の野原の草を食べつくすことができるそうだ。こんな大きなウシは、他にはいないだろう」
と、言いました。
 これを聞いていた勘右衛門は、
「それは大きな話だな。だが唐津には、もっともっと大きな話があるんだ」
と、もったいぶって言いました。
 すると安兵衛は、文句を言いました。
「またまた、お前はわしたちをはぐらかす話をするつもりだろう? 本当に、わしの話より大きな話があるというのか?」
 すると勘右衛門は、
「まあ、文句はわしの話を聞いてから言え。唐津にはな、とても大きな大きな太鼓(たいこ)があるんだ。太鼓の胴は、肥前のクスノキをくりぬいて作ってあるんだ。その太鼓の皮はな、彦兵衛どんの言った阿蘇の赤ウシの皮を張ってあるんだよ」
と、言ったのです。
 それを聞いた二人は、
(しまった。このままでは、またまた勘右衛門にやりこめられる)
と、思ったのか、あわてて言いました。
「それは大きな話だな。だが、そんなに大きな太鼓の音は聞いたことがない。どんな音がするのか聞かせてもらおう」
すると勘右衛門は、平気な顔で、
「それがなあ。この大きな太鼓を打つと九州ばかりでなく、唐の国にまで音がひびいて耳は聞こえなくなるし、海には津波(つなみ)が起こるんだ。それで殿さまが、『あれは絶対に、打ってはいかん』と言われてのう。打つことができないんだよ」
と、言ったのです。
 話しも上手なら、逃げ方も上手な勘右衛門に、二人は頭をかきながら言いました。
「こいつは、またまたおらたちの負けだな。まったく、勘右衛門にはかなわん」
 その後三人は大笑いをして、仲良く酒をのんだという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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10月20日の日本民話 死人を運ぶネコ

2009-10-20 07:22:46 | Weblog

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10月20日の日本民話


死人を運ぶネコ



死人を運ぶネコ
静岡県の民話静岡県情報


 むかしむかし、駿河の国(すがるのくに→静岡県)に、小さな寺がありました。
 寺には和尚(おしょう)さんと小僧(こぞう)さんのほかに、年老いた一匹のネコがいます。
 お参りにくる人はめったにいないため、和尚さんも小僧さんも、ひまさえあればネコをかわいがっています。
 ある時、信州(しんしゅう→長野県)の知りあいから、法事(ほうじ)の手伝いに来てくれと言われたので、和尚さんは小僧さんをつれて出かけることにしました。
「ネコよ、しっかり留守番(るすばん)を頼んだぞ」
 和尚さんはネコが食べ物に困らないよう、たくさんのエサを用意してやりました。
「おみやげを、持ってきてやるからな」
 小僧さんも、ネコの頭をなでながら言いました。
 さて信州に出かけた二人が、峠(とうげ)の茶屋でひと休みしていると、下の方からスルスルと火車(かしゃ→死んだ人を、じごくへ運ぶ乗り物)が登ってくるのが見えました。
 和尚さんも小僧さんもビックリして中をのぞくと、火車には、やせたおじいさんが乗っていました。
(あの年寄りが何をしたかは知らんが、地獄送りとはあんまりじゃ)
 気の毒に思った和尚さんが、思わず手を合わせてお経をつぶやいたら、火車が空の途中で止まったではありませんか。
(まさか、自分のお経がこんなにきくとはな)
 和尚さんは、茶屋の主人にたずねました。
「今日、この村で葬式(そうしき)のある家はないか?」
「はい、じつはこの峠の下の屋敷で、おじいさんの葬式があります。よくごぞんじで」
 和尚さんは、だまって火車を指さしました。
「あ、あれは?!」
 主人は、目を丸くして空を見上げます。
「あれはな、死人を地獄へ運ぶ火車というものだ」
「なるほど、話には聞いていましたが、実際に見るのは初めてで」
 主人は、この和尚さんは、えらいお坊さんにちがいないと思いました。
「ところで、あのおじいさん、地獄に送られるようなことをしたのか?」
と、和尚さんが聞くと、
「そうですなあ、あのおじいさん、若いころはさんざん悪い事をしたそうですから。でもね、年をとってからは仏のおじいさんと言われるぐらいでして。わたしも、いろいろと世話になりました。お坊さま。なんとか極楽(ごくらく→天国)へ送ってやるわけにはいきませんかね」
と、主人が言ったのです。
「そんな事より、かんじんの死人がいなくてはお葬式もできまい。すまないが、あのおじいさんの家に案内してもらえんかな」
「あ、はい。」
 主人は和尚さんと小僧さんをつれて、峠の下のおじいさんの屋敷へ行きました。
「くれぐれも、火車の事は言わないようにな」
 主人に念を押してから、和尚さんが門の中へ入って行くと、庭のまんなかに棺おけをおいて、村のお坊さんがお経をあげていました。
 お経が終わるのを待ってから、和尚さんが言いました。
「残念ながら、その棺おけに死人はおりませんぞ」
「なにを言うか。ゆうべ、まちがいなく入れたのだ」
 お経をあげていたお坊さんが、むっとして和尚さんをふり返りました。
 家の者も、腹をたてて、
「どこのお坊さんだか知らないが、変な言いがかりをつけないでください!」
と、言います。
 ですが和尚さんは、首を軽く横に振ると、
「うたがう気持ちはわかるが、うそだと思うなら、中をたしかめてみることだ」
と、言うので、家の者が念のために棺おけのふたをとってみたら、中は空っぽでした。
「ど、どうして?」
 お坊さんも家の者も、そして集まっていた村の人たちもビックリです。
「心配せずとも、わしにまかせておきなさい」
 和尚さんがすすみ出て、ゆっくりとお経をとなえはじめました。
 すると空の上からゆっくり火車が下りてきて、おじいさんの死体を棺おけにもどすと、ふたたび空へのぼっていったのです。
 あまりの不思議さに、だれ一人声を出すものはいませんでした。
 和尚さんが、静かに言いました。
「これで大丈夫。もう、地獄へ送られる事もあるまい」
 家の者はすっかり喜んで、あとのお葬式を和尚さんにまかせました。
 そこで和尚さんと小僧さんは、おじいさんをねんごろにほうむり、知りあいの家へと旅立っていきました。
 茶屋の主人からも話を聞いた村の人たちは、いよいよ感心して、
「いったい、どこの和尚さんだろう?」
と、調べてみたら、駿河(するが)の国の善住寺(ぜんじゅうじ)の和尚さんということがわかったのです。
 さあ、それ以来、わざわざ信州(しんしゅう)からお葬式を頼みにくる人が多くなり、おかげで善住寺は栄えていきました。
 ところであの火車ですが、あれは和尚さんのかわいがっていたネコが、恩返しのために火車をあやつって死人を空へ運びだしたからだという事です。


おしまい


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10月19日の日本民話 ネズミをたいじするには

2009-10-19 10:31:25 | Weblog

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10月19日の日本民話


ネズミをたいじするには



ネズミをたいじするには
高知県の民話高知県情報


 むかしむかし、たいさくという、とんちの名人がいました。
 ある日の事、町へ行っての帰り道で、日がくれてしまいました。
 でも、どこの家へ行ってもとめてはくれません。
 そこで、おばあさんが一人で住んでいる家をさがして、
「今夜一晩、とめてくれ」
と、たのみました。
 すると、おばあさんは、
「うちにはネズミがドッサリといて、とてもねていられないよ」
と、言いました。
「なに? ネズミだと。ネズミならわしが一匹のこらず退治してくれよう」
 たいさくは、胸をたたきながら言いました。
「そいつはありがたい。さあ、えんりょせずにとまっていっておくれ」
 喜んだおばあさんは、たいさくを家にあげると、お酒やごちそうまで出してもてなしてくれました。
 なるほど、おばあさんの言うように、ネズミが天井うらを走りまわっています。
 でもたいさくはお酒をたくさん飲んで、ぐっすりとねむりこんでしまいました。
 さて、翌朝、たいさくが急いで帰ろうとするので、おばあさんがあわてて言いました。
「お前さん、ネズミ退治はどうした?」
 するとたいさくは、すました顔で言いました。
「そんなことは簡単(かんたん)さ。ネコを五、六匹かえばいい」
「ネコをかえだと? ネコをかうことぐらい、わしだって知っている」
 おばあさんはカンカンにおこりましたが、たいさく平気な顔で、
「知っているなら聞かなくていい。はい、お世話になりました」
と、言って、さっさと帰っていったのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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10月18日の日本民話 巨大な魚のタマゴ

2009-10-18 07:13:33 | Weblog

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10月18日の日本民話


巨大な魚のタマゴ



巨大な魚のタマゴ

神奈川県の民話神奈川県情報


 むかしむかし、あるひの事、鎌倉(かまくら)や葉山(はやま)の海辺にすんでいる人たちは、海を見てビックリしました。
 見わたすかぎりの海が、赤い色にかわっていたのです。
 あるお寺のえらいお坊さんが、うわさをきいて海辺へでかけより、赤い水を手にすくって調べてみました。
 水はネバネバとしたおかゆのようで、中に赤いアワ(→鳥のエサになる、イネ科の一年草)のような粒がびっしりありました。
「こんなことは生まれてはじめてです。なにか、大きな災(わざわ)いでもあるのですか?」
 心配した浜の人がたずねると、お坊さんはこんな話をしました。
「この海の東のかなたに、とてつもない巨大な魚がおる。一日目にその魚の頭を見たなら、尾を見るのは七日目のことだ。その大魚がタマゴをうむとき、まわり四百キロもの海の色がまっ赤になるという。おそらく、その大魚がタマゴをうんだのであろう。災いがおこるかどうかはわからぬが、用心しておくにこしたことはない」
 お坊さんはそういって、お寺へ帰っていきましたが、五、六日たつと、海はまたもとの美しい海にもどって、心配した災いもおこりませんでした。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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きょうの誕生花 → わた
きょうの誕生日 → 1955年 郷ひろみ(歌手)



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きょうの世界昔話 → 金になったお姫さま
きょうの日本民話 → 巨大な魚のタマゴ
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10月17日の日本民話 山へ入らない日

2009-10-17 05:04:19 | Weblog

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10月17日の日本民話

山へ入らない日


山へ入らない日

福島県の民話福島県情報


 むかしむかし、ある深い山に入って猟(りょう)をしている、一人の猟師(りょうし)がいました。
 この猟師の猟のやり方はほかの猟師たちとはちがっていて、まず、山奥の高い木に見張りのやぐらをつくって、そこで一夜をあかします。
 そして夜明けにエサをさがしにやってくるシカを、シカ寄せの笛(ふえ)をふいておびき寄せて、やぐらの上から鉄砲でうつというものです。
 ある日の夜明け、猟師はきのうからのぼっているやぐらの上で目をさますと、さっそくシカ寄せの笛をふきながら、あたりを注意ぶかくうかがっていました。
 するとすぐ目の前のやぶの中で、大きな物音がしました。
 目の前の草木が、風もないのにガサガサとゆれています。
 猟師はかたわらに置いてある鉄砲を手にして、動く草木をジッと見つめていました。
 するとやぶの中から出てきたのは、おカマのふたほどもある大きな女の人の顔で、みだれた髪は地面までたれさがっています。
「バ、バ、バケモノじゃ!」
 ビックリした猟師は思わず、鉄砲を木の下の草むらの中へ落としてしまいました。
 女のバケモノは、ニタニタと気味悪く笑っています。
 猟師は尻もちをついたまま立ちあがることもできませんでしたが、幸いなことにバケモノはそれ以上近づかず、落とした鉄砲をうばおうともしません。
 しばらく猟師を見つめながら笑っていると、やぶの中へ姿を消してしまいました。
 猟師はやぐらの上からおりると、鉄砲の事も忘れて逃げだしました。
 走って、走って、やっと家についたとたん、安心したのかそのまま倒れて気を失ってしまいました。
 数日後、正気をとりもどした猟師は、心配して集まっていた近所の人たちに山奥で出会ったバケモノの話をしました。
 それを聞いていた、一人の老人が言いました。
「なるほどの。だがそれは、お前があまりにも殺生(せっしょう)をするからだ。命があったからよかったものの、二度とそんな目にあいたくなければ、殺生をやめる事じゃな」
 猟師はそれっきり、猟師をやめてしまいました。
 この事があってから、猟師の村では十月の十七日を山神さまの祭り日として、ぜったいに山に入らない事にしました。
 もしもこの日に山へ入ると、かならずバケモノに出会うと言われています。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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きょうの誕生花 → みずひき
きょうの誕生日 → 1961年 賀来千香子(俳優)



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きょうの日本民話 → 山へ入らない日
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