きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

10月26日の日本民話 おばばが消えた

2009-10-26 06:58:54 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話


10月26日の日本民話


おばばが消えた



おばばが消えた
滋賀県の民話滋賀県情報


 むかしむかし、琵琶湖(びわこ)のほとりの家に、もう七十歳をこえているのに、家族も近所の人たちもおどろくほど元気なおばあさんがいました。
 ある寒い日の夕方、これまで病気一つしたことがなかったのに、このおばあさんはいろりの前にすわっていて、そのまま死んでしまったのです。
 家の人たちも、近所の人たちもビックリ。
 けれど、とにかくお葬式(そうしき)の準備を始めなければなりません。
 お葬式の準備がひとだんらくついたとき、奥の部屋に安置(あんち)してある棺(ひつぎ)が、メリメリと音をたてて畳(たたみ)の上にころがりました。
 そして死んでいるはずのおばあさんが、白い衣のまま立ちあがると、あたりをにらみまわしたのです。
「ばっ、ば、ば、ば・・・」
 家の中にいた人たちは、言葉にならない声をあげながら、おそろしさのあまりブルブルとふるえていました。
 その中に母の急死をきいて、お坊さんになっていた息子がいたのです。
 その息子もビックリしましたが、すぐに大きな声でお経をとなえはじめると、おばあさんはそのまま棺の中へたおれて、また動かなくなりました。
 さて、次の日の夕方の事です。
 おばあさんの棺をかついでお寺にむかうとちゅうで、きゅうに雨がふりだしてきました。
 雨は大雨になり、頭の上でカミナリがとどろきはじめました。
 お寺まではもうすぐなので、お葬式の行列はそのまま進んでいきました。
 幸いなことに、まもなく雨はやみましたが、棺がきゅうに軽くなったのです。
「なんだなんだ? 棺がきゅうに軽くなったぞ。おい、ちょっとのぞいてみよう」
 足を止めて棺の中をのぞいてみると、中は空っぽで、おばあさんは消えていました。
「そういえば、さっき空から黒い雲がおりてきて、おばばの棺のまわりをとりかこんで稲光がはげしく走った。おばばはあのとき、天へ持っていかれたんだ」
と、だれかがいいました。
 棺をかついでいた人たちも、たしかにそのときから軽くなったと言っていたという事です。


おしまい


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10月25日の日本民話 からいもと盗人

2009-10-25 04:40:54 | Weblog

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10月25日の日本民話


からいもと盗人



からいもと盗人
熊本県の民話熊本県情報


 むかしむかし、天草(あまくさ→熊本県の天草市)に、太助(たすけ)という船乗りがすんでいました。
 太助は子どもが大好きで、おなかをすかせた近所の子どもたちに、いつもごはんを食べさせています。
 ある日の事、おかみさんが太助にいいました。
「あんた、そろそろ米びつもからになりそうじゃ」
「じゃあ、米を買うてきたらいいでねえのか」
「そんなこというても、不作つづきで米も麦もありはせん」
「そうか。でも心配すんな。薩摩(さつま)から、麦でも買うてきてやるわ」
 この二年ほど、この天草のあたりは日でりつづきで、畑の麦もすっかり立ちがれてしまいました。
 太助は薩摩の国に荷物をはこぶために、船を出しました。
 帰りには子どもたちに食べさせる食べ物を、船いっぱいにつんでくるつもりです。
 やがて船は、薩摩の港に着きました。
 薩摩のお客へ荷物をとどけた太助は、その晩はお客の家にとまることになりました。
 そこで太助は、おなかをすかせた子どもたちのことを話しました。
「うむ、そりゃあ、たいへんなことで」
「はい。子どものころに食べ物で苦労しましたので、子どもたちには、ひもじい思いをさせたくはなくて」
「そうですか。太助どんの子ども思いは、立派ですな」
 このお客は、太助が近所の子どもたちにもごはんを食べさせている事を知っていたので、今までも何かと手助けしてくれていたのです。
 さてその晩、太助はお客からめずらしいものをごちそうになりました。
「うまい! だんな、これはなんて食べ物で?」
「これはな、薩摩にしかない、からいもでごわす」
「からいもですか。うーん、じつにうまい!」
「わははは、そうでごわしょう。食べてよし、酒にしてもよし、この薩摩では米以上の食べ物でごわす」
 からいもとは、サツマイモのことです。
 太助は、このおいしいからいもを天草に持ちかえり、自分の畑で育てたいと思いました。
 ですが、その事を客に話すと、
「残念じゃが、それはだめでごわす」
「どうしてですか? 天草の子どもたちは、はらをすかしているのです。子どもたちのためにも、どうかおねがいします」
「気持ちはわかるが、このからいもはご禁制品(きんせいひん)でごわす。もしもよその土地の人に渡したと知れれば、この首を切られてしまうのでごわす」
 ご禁制品とは、持ち込みや持ち出しを禁じられている品物の事です。
 次の日、薩摩から船を出すとき、ご禁制の品が持ち出されないか、役人がそれはきびしく調べました。
「よし、この船にはご禁制の品はござらん。船を出してさしつかえないぞ」
 太助どんの船は役人のゆるしをえて、いよいよ出発しようとするその時です。
 客の男が、大急ぎで走ってきました。
「太助どん、太助どーん!」
「だんな、どうなさいました?」
「子どもさんのみやげの手まりを、おわすれでごわしょう?」
「はて? ・・・手まり?」
「なにを言ってなさる。大切な子どもさんのみやげでしょ。お役人さま、わたしてもよろしいでごわすか?」
「ああ。わしが投げてやろう。それっ!」
 手まりは客から役人の手へ、そして太助どんの手へとわたりました。
「太助どん、その手まりは大事な品じゃ。子どもさんのために、立派に育ててくだされ」
 手まりにおぼえのない太助は、不思議に思って手まりを見ると、なんと中には、からいもの芽が入っていたのです。
「こっ、これは!」
 客が太助のために、こっそりとからいものなえを入れておいてくれたのです。
「太助どん、ぶじに天草までいきんしゃいよ」
「だんな、ありがとうございます」
「子どもたちに、よろしゅうなあ」
「ありがとうございます。必ず立派に育てます」
 こうしてご禁制のからいもは、薩摩から天草へ持ち出されたのです。
 天草に帰った太助は、からいものなえを畑に植えると、大切に大切に育てました。
「いいかお前たち、いまにこの木に、うめえからいもがたあんとできるからな」
「おっとう、それは本当か?」
「ああ、大きな木になる。そして、からいもが食い切れんほどみのるぞ」
「そうか、早く大きくなるといいなあ」
 あいかわらず天草は日でりつづきでしたが、からいもは元気に育っていきました。
「こりゃあ、木ではなく、つるが出てきたな。からいもはつるになるのか。それなら、そえ木にまきついて実がなるんじゃろうか?」
 太助はそえ木に竹を立ててやりましたが、まきつくどころか、つるはいつまでも地をはっています。
 畑一面につるがのびましたが、かんじんのからいもはなりません。
「春だというのに、花もさかん。これは本当にからいもか? いやいや、あのだんながうそをつくはずはないし」
 夏になって小さな花をつけましたが、やはり実はつきません。
「このからいもは、薩摩の土でしか実らんのだろうか」
 太助があきらめかけたある日、畑にあるわずかな作物をぬすむドロボウがやってきました。
「畑あらしじゃー!」
 逃げるドロボウを、太助は追いかけていきました。
「作物ができんで、みんなこまっとるのに、こんなときに畑をあらすとはゆるせん!」
 ドロボウは、太助のからいも畑へ逃げ込みました。
 するとからいものつるがドロボウの足にからまって、ドロボウはこけてしまいました。
「わははは、からいものつるにひっかかったな。役たたずのいものつるが、とんだところで役にたったわい」
と、ドロボウの足にからまったからいものつるを見た太助は、そのつるの先に付いているものを見てビックリ。
「こっ、これは、からいもでねえか! そうか、からいもは土の中になるもんじゃったんか」
 太助は夢中で、ほかのからいものつるを引っぱってみました。
 するとつるの先には、丸々としたからいもがたくさん付いています。
「おおっ、からいもじゃ。からいもじゃ。これだけあれば、子どもたちが腹をすかせる事はなくなるぞ!」
 そのとき、太助はコソコソと逃げだそうとするドロボウにからいもを投げてよこしました。
「これは礼じゃ。持っていけ。お前がいなけりゃ、わしゃ、からいもを土の中でくさらすところじゃったぞ」
「へえ? からいも?」
「ああ、このいものことじゃ。うまいぞう」
 それから天草では、どこの家でもからいもをつくるようになったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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10月24日の日本民話 弘法井戸

2009-10-24 06:31:15 | Weblog

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10月24日の日本民話


弘法井戸



弘法井戸
三重県の民話三重県情報


 むかしむかし、ある村に、惣松(そうまつ)という人がいました。
 ある日の事、惣松は二、三人の村人たちと伊勢参宮(いせさんぐう)に行った帰り道に、乗っていた舟で二見が浦(ふたみがうら)の近くの飛島(とびしま)まで来ると、空から急に白龍(はくりゅう)が舟の中へ飛びこんで来たのです。
 みんなは、ビックリしましたが、
「これは、大漁を知らせる神さまのお告げじゃ」
と、大いに喜んで、白龍を村へ持ち帰りました。
 家に白龍を持ち帰った惣松は、白龍を床の間に置きましたが、白龍は床の間からぬけ出して神棚(かみだな)の中に入ってしまったのです。
 家の人たちは、
「これは福の神だ、きっと良いことがおこるぞ」
と、大喜びして、神棚へだんごやお酒など、いろいろなものをたくさんおそなえしました。
 でも惣松は、おそなえのだんごを一口食べると、
「こんなもの、まずくて食えるか」
と、はきだしてしまいました。
 そのとたんに白龍が神棚から飛びだして、追いかける惣松を尻目(しりめ)に森の中へかくれてしまいました。
 その後、弘法大使(こうぼうたいし)が村へやって来て、
「この村には何か、なんぎなことはないか?」
と、たずねると、村人たちは、
「この村に白龍が一匹いたのですが、森の中へにげてしまいました。何とかして白龍をつれもどして下さい」
と、たのみました。
 すると弘法大使は、
「白龍は水が好きだから、井戸をほってあげよう」
と、いい、持っていた杖(つえ)で地面を突きさすと、不思議な事にそこから水がこんこんとわき出したのです。
 それからは毎日、白龍はこのおいしい水を飲みに来るようになり、村からは出ていかなくなったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 国際連合デー
きょうの誕生花 → コトネアスター(べにしたん)
きょうの誕生日 → 1973年 ゴリけん(芸人)



きょうの日本昔話 → タヌキとキツネ
きょうの世界昔話 → 魔術の本
きょうの日本民話 → 弘法井戸
きょうのイソップ童話 → オオカミとヤギ
きょうの江戸小話 → ネズミの嫁入り


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10月23日の日本民話 しょうじにうつる大ギツネ

2009-10-23 10:10:56 | Weblog

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10月23日の日本民話


しょうじにうつる大ギツネ



しょうじにうつる大ギツネ
岩手県の民話岩手県情報


 むかしむかし、遠野郷(とうのごう→岩手県遠野市)の附馬牛(つくもうし)というところにある家があり、その家の娘が病気でなくなりました。
 それからというもの、毎晩娘の幽霊(ゆうれい)が出るようになったのです。
 娘の幽霊は、うすぼんやりとしょうじにうつります。
 すると眠っていた家の人が、苦しそうにうなされるのです。
「あのやさしい娘が、わしらを苦しめるはずがない。これはひょっとしたら、キツネのしわざかもしれんぞ」
 家の人たちは、村の人たちに相談してみました。
「よし、それなら、おれたちが見はりをしててやる」
 元気のいい若者が何人か、ウマの小屋などにかくれて見はり番をはじめました。
 ところが気味が悪くなったのか、みんな逃げかえってしまいました。
 この家のとなりに、なくなった娘の兄が住んでいましたが、わけを聞くと、
「もし本当の妹が幽霊になってくるのなら、いっぺんあってみよう」
と、言って、実家へといきました。
 ものかげに身をひそめていたところ、真夜中ごろ、奥座敷(おくざしき)のしょうじがボーッとあかるくなりました。
 兄はビックリしましたが、よくよく目をこらして見ると、それは妹の幽霊などではありません。
 一匹の大ギツネがしょうじにからだをくっつけて、座敷のようすをうかがっているのでした。
 兄は音をたてないように床下をはっていって、ワラうちの木づちで大ギツネをたたきつけました。
 ゴン!
 たしかに手ごたえがあったものの、大ギツネそのまま逃げてしまいました。
「まて! この悪ギツネ!」
 兄は追いかけましたが、山の中で見失ってしまいました。
 大ギツネが何をねらってきていたのかはわかりませんが、それから娘の幽霊らしいものは出なくなったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 電信電話記念日
きょうの誕生花 → あけび
きょうの誕生日 → 1973年 はしのえみ(タレント)


きょうの新作昔話 → 小クラウス、大クラウス
きょうの日本昔話 → 化け上手
きょうの世界昔話 → ロバの王子
きょうの日本民話 → しょうじにうつる大ギツネ
きょうのイソップ童話 → 同じ重さの荷物をはこぶロバとラバ
きょうの江戸小話 → ウシ


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10月22日の日本民話 愛犬が知らせた山くずれ

2009-10-22 05:36:39 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話


10月22日の日本民話


愛犬が知らせた山くずれ



愛犬が知らせた山くずれ
愛知県の民話愛知県情報


 むかしむかし、茶臼山(ちゃうすやま→愛知県東三河)のふもとの村に、日原喜兵衛(ひのはらきへえ)という(さむらい)がすんでいました。
 喜兵衛(きへい)はある時、家の近くの川原でないていた子イヌをひろってきて、シロと名づけて家でかっていました。
 シロは子どものいない喜兵衛夫婦にかわいがられて、大きくなっていきました。
 喜兵衛が侍屋敷に何日かとまって、仕事をしていたある夜のことです。
 留守を守っている奥さんの夢に、白い衣をまとった、神々しいばかりの若者が現れていいました。
「裏の茶臼山がさけて、このあたりは泥水でうまってしまいます。早くここを立ち退きなさい。わたしはあなたがたに恩をうけている者ですから、申しあげます」
 目をさました喜兵衛の奥さんが、おかしな夢をみたものだと思っていると、あわただしく夫の喜兵衛がもどってきました。
「おい、シロはどうした? なにかあったか?」
 あらい息をはきながら、いきなりイヌのシロのことを口にしました。
「シロが、どうかしましたか?」
 たずねかえす奥さんに、喜兵衛はこんなことをいいだしたのです。
「昨日の夜の事じゃ。お屋敷の外でイヌがしきりにほえるので、どこのイヌがほえておるのかと思って外へ出てみると、これがなんとシロではないか。シロをお屋敷へつれていったことなど一度もない。よくわかったものだと思っておると、わしの服のすそをくわえて、家の方へひっぱるんじゃ。さては家で何かあったなと、いそいでもどってきたんだが」
 喜兵衛の話をきいていた奥さんは、おどろいて、
「そういえば、さっきわたしも」
と、夢の話をしました。
 白いイヌは神さまのつかいと言いますが、喜兵衛は、まさか自分の家で飼っているシロが神のつかいなどとは思えません。
 でも次の日、喜兵衛夫婦はとなり近所をはじめ、村の家々をまわって夢のお告げをつたえました。
 ですが、ただの一軒も話をまともにうけとってはくれません。
 となり村へのがれていったのは、喜兵衛夫婦だけでした。
 喜兵衛夫婦が村をはなれたちょうど一日後、とつぜん茶臼山がくずれたのです。
 川は土砂であふれて、あふれた土砂は喜兵衛の家やとなり近所の家など、八十五軒もの家々をおしつぶして、四十人もの人たちが亡くなってしまったのです。
 そしてイヌのシロは、喜兵衛夫婦に山くずれを知らせた夜から、どこかに姿を消したまま二度と現れなかったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → パラシュートの日
きょうの誕生花 → みせばや
きょうの誕生日 → 1973年 イチロー(野球)



きょうの日本昔話 → ものいうかめ
きょうの世界昔話 → トム・ティット・トット
きょうの日本民話 → 愛犬が知らせた山くずれ
きょうのイソップ童話 → 恋するライオンとお百姓
きょうの江戸小話 → 春の空気


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