10月11日の日本民話
竜から落ちた神さま
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むかしむかし、竜護峰(りゅうごほう)に福王(ふくおう)という神さまが住んでいました。
福王は村々の平和と幸福の神さまです。
ある日の事、福王は旅がしたくなり、
「遠方(えんぽう)の国を視察(しさつ)するのも、わたしの役目だ」
と、竜にまたがって出かけました。
福王がある漁村へおり立ったところ、神さまのお出ましを知った村の人々が集まってきました。
福王はすべての人にめぐみをさずけましたが、それでもなお、帰っていかない者がいます。
それは、若くてたくましい福王にあこがれる、若い娘たちでした。
福王は竜の背の袋から娘たちに小さな玉をくばり、それを口にするよう伝えました。
すると彼女たちは落ちつきをとりもどして、帰って行きました。
しかし一人だけ、残っている娘がいます。
「そなたは、玉を食ベなかったのか?」
と、たずねる福王に
「はい。宝などほしくありません。ただ、お側においてほしいのです」
と、秋穂(あいお)と名のる娘は答えました。
「だが、それは」
「おねがいです。お側においてほしいのです」
「しかし」
「おねがいです」
「・・・・・・」」
とうとう福王は根負けして、二人で竜にまたがり竜護峰へとむかいましたが、あと少しと言うところで、田んぼの中へ落ちてしまいました。
この事から、福王は神さまから人間になってしまいましたが、秋穂としあわせに暮らしたという事です。
おしまい
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