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1月29日の日本民話 キツネの倉

2010-01-29 06:44:16 | Weblog

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1月29日の日本民話


キツネの倉



キツネの倉
鹿児島県の民話鹿児島県情報


 むかしむかし、一人の男が荒地(あれち)を畑にしようと掘り起こしていると、
「ガチン!」
と、クワが思いっきり石を叩いてしまったのです。
「しまった! 大切なクワが!」
 クワが割れてしまったので、男はクワを直してもらう為に鍛冶屋(かじや)へ行きました。
 その途中、手に棒を持った子どもたちが、捕まえたキツネを叩いていじめていたのです。
「こら、お前たち、やめねえか。キツネが可愛そうだろう」
「だって、これはおらたちが捕まえたキツネだぞ。どうしようと、おらたちの勝手だろう」
 子どもたちは、キツネをいじめるのを止めようとしません。
 そこで男は、
「それなら、そのキツネをおらに売ってくれんか?」
と、男はクワを鍛冶屋で直してもらう為のお金を子どもたちにやって、キツネを買い取りました。
 そしてキツネを子どもたちのいない所へ行って逃がしてやろうと思ったところで、ふと思いました。
「おらは、何をやっているんじゃろう?
 新しい畑を作るには、クワがいる。
 そのクワを直してもらうには、鍛冶屋に払うお金がいる。
 でも、そのお金がなくなってしもうたぞ。
 このキツネが、クワを直してくれるのならともかく。
 ・・・こりゃ大変だ。
 キツネよ、悪いがそう言う事だ」
 男はまた子どもたちのところへ行って、キツネを渡してお金を返してもらいました。
 すると子どもたちは、前よりももっとキツネをいじめるのです。
 それを見かねて、男はまた子どもたちのところへ行くと、
「止めてくれ、今度は本当に買うから」
と、またお金を渡して、キツネを買い戻しました。
 そしてキツネを山へ連れて行き、
「もう、二度と捕まるなよ」
と、言って、逃してやりました。

 それから数日後、男の家にあの時のキツネがやって来て言いました。
「この間は、危ないところを助けて頂いて、ありがとうございました。
 お礼に何か、差し上げたいと思います。
 私の家にはキツネの倉(くら)と言って、何でも無い物は無いという倉があります。
 よろしければ、あなたの望みの物を好きなだけお持ち下さい」
 それを聞いた男は、キツネと一緒にキツネの倉へ行きました。
「さあ、これがキツネの倉です。どうぞ、中へ入って好きな物を取って下さい」
 喜んだ男が倉の中へ入って行くと、キツネが倉の戸をバタンと閉めました。
 そして大きな声で、
ドロボウだ! 倉にドロボウが入ったぞ!」
と、叫んだのです。
 すると、あちこちからたくさんの人が集まって来て、
「ドロボウは殺せー! ドロボウを殺すんだー!」
と、言うのです。
 倉に閉じ込められた男は、ビックリです。
「違う、違うんだ。おらはドロボウでねえ」
 男は必死で言いましたが、外の人たちは聞いてくれません。
「ドロボウは殺せー! ドロボウを殺すんだー!」
 男は怖くなって、倉のすみっこでブルブルと震えていました。
「だっ、騙された。キツネの奴に騙された」
 でもしばらくすると外の騒ぎがおさまって、倉の戸がガラガラと開きました。
 そして、さっきのキツネが、
「ビックリさせてすみません。さあ、クワでも着物でもお金でも、好きな物を持てるだけ持って、出て来て下さい」
と、言いました。
 男は訳が分からず、取りあえず言われたまま持てるだけの物を持って倉から出て来ました。
「どうでした? さっき閉じ込められた感想は」
「どうだったも何も、恐ろしくて、生きた心地もしなかった」
 男がそう言ったので、キツネは満足そうに頷くと、
「そうでしょう。
 実は私も先日、同じ思いをしました。
 あなたに助けてもらった時は、心の底から喜びましたよ。
 でもその後で、また子どもたちに返された時は、もう生きた心地はしませんでした。
 そして最後には、再び助け出されたわけですが、あの時の事を考えると、今でも体が震えます」
と、言ったという事です。


おしまい


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