どうもです。
以前より読みたいと思っていたのですが出版されてこなかった、探偵マーチンヒューイットの全集が今年作品社から発売されました。
シャーロックホームズが最後の事件で失踪した後、ストランド誌で事実上の後番組として連載開始したのがこのマーチンヒューイットシリーズになります。と、ここまでは知識として知っていたのですが、実は挿絵をホームズ画家シドニーパジェットが描いていた事、第一短編集以後は掲載誌が変わっていた事は最近になって知ったのでした。
今回の完訳で第四短編集は初邦訳になるとの事。19世紀末からの探偵小説は全部完訳済かと勝手に思ってましたが、決してそうでは無いのですね。ホームズ作品は何年おきに新訳が出てるし、人気シリーズの翻訳ものは当たり前に出てると思う方が特殊なんでしょうか。自分くらいの浅い探偵小説ファンは逆に少数で、売り上げ数が見込めないのは分かりますけどね。
第四短編集「赤い三角形」は連作スタイルになっており個人的にも意欲的なシリーズだと思ったのですが、今まで翻訳されてこなかったのが意外と言えば意外でした。翻訳ものは色々な事情が重なって未訳のものもまだまだ多いのです。丁度現在ソーンダイクもの(こちらも最近まで未訳多し)をまとめて読んでいるので、今回のマーチンヒューイットはやや寄り道になりましたが読めてスッキリでした。一方本シリーズの打ち切りが作者のキャリアから見てもちょっと早すぎると感じたのですが、解説にもその辺の考察があまり無いのが気になる点です。
ホームズものの雰囲気をしっかり踏襲しつつ、描かれている階級が当時の中流から下層の人々を中心にしている点、日本や中国、南アフリカなどの諸外国をフューチャーしている所が面白いです。心霊現象にやや批判的?とかドイルに対してカウンター気味な描写があるのも大人気作への見方が伺えて興味深いですね。同じ匂いはソーンダイクものにも感じるのでそれがある意味当時の作家表明だったかもしれません。