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最近はフィギュアスケートと歌舞伎鑑賞記録が主流でござります

コクーン歌舞伎「三人吉三」

2007年06月18日 | 歌舞伎
日曜日に観に行ってきました。コクーン歌舞伎の生観劇は初めてです。去年の「四谷怪談」は2ヶ月も公演期間ありながらチケット争奪戦あえなく玉砕だったし。今年は運良くチケットがしかも日曜日の公演が取れちゃいました。でもバルコニー席でしたけどね(^^; コクーン歌舞伎は1階の前半分がお座敷になってて面白そうと思ったんですが、あれはでも長い鑑賞時間だと疲れそうだなあ。でも役者がその座ってるすき間を歩いてくれたりもするので、そういう意味ではかなりお得な席ですね。勘ちゃんなんて列の間で突然がくりと膝落としてたりしたし(笑) 目の前に座られた人うらやま~♪ でも勘ちゃんの動きがあまりにあっちへこっちへと予測不能にフラフラ歩いてるので、踏まれまいと慌てて荷物を除けたりしてるお客さん達の動きは上から見ていて面白かったです。

さて、生コクーン歌舞伎は期待通りものすごく面白かったです!話はとても悲劇なんだけど、それを補って余るくらいのパワーがありましたね。
今回観てて改めて感じたのは勘三郎さんの歌舞伎はやっぱりロックだということ。4月に観に行ったミックロックの写真展で、勘三郎さんってこんなにロックンロールな人だったんだーと思ったけど、改めて納得。劇中エレキギターのBGMがかかったりするんですが、歌舞伎とエレキがこんなに合うもんだとは思わなかったですね。ただ、エンディングで流れる林檎さんの曲はいまいちピンとこなかった。というのもお囃子と林檎さんの歌が互いに争うようにして流れてくるんで、喧嘩しちゃってどっちも中途半端な感じがしちゃいました。林檎さんの曲使うなら林檎さんだけでいいと思うんだけどな。お囃子と合ってないから、ちょっと不協和音に感じちゃいました…。ラストシーンが大迫力だっただけに、そこだけもったいなかったですね。
あのラストは本当に圧巻でしたな。まさかあんなにドサドサ紙の雪が降るとはね。 平場席の前のほうに雪崩落ちてましたよ~! 上から見てる分には迫力あって面白かったんだけど、あれは目や口に入って息ができなくなりそう。カーテンコールでは橋之助さんが客席に雪の塊をぶん投げてたし(笑) 服に入りまくって悲惨なことになりそうですね(^^; 
背景もない本当に真っ白な白銀の世界で、三人吉三の姿だけが鮮やかな色で散って、歌舞伎の独特な色を更に際立たせる演出になってました。

三人吉三は以前に歌舞伎座で團十郎・仁左衛門・玉三郎でやったのを映像で観たことがあったのでストーリーはわかってたのですが、今回は冒頭で三人が何故この悲劇に至るのかという因果関係が描かれてたので、スッと物語の中に入っていけました。歌舞伎座バージョンでは冒頭でいきなり十三郎が自殺をしようとしているところが始まってしまうので、十三郎とおとせが好きあってるというのがよくわからなかったりしたのですが、串田演出バージョンでは自殺の原因である百両紛失のきっかけや、おとせとの出会いと恋が描かれて、よりいっそう二人の悲劇度が増しました。
それから和尚吉三の親父が起こした過去の罪も、それが巡り巡って、お坊の家を破滅に追いやり、その因果を息子達が償うという図式がすんなりと見えてきてわかりやすかったです。犬殺しの場面は、犬好きなんで、ぬいぐるみとはいえ観ていて辛かったですけど…。あ、でもその前に本物の犬が出てきてびっくり! あんなにたくさんのお客がいるのに全く動じずよそ見もせず、たたたーっと舞台の端から端へと横切ってました。お利口だ(^-^)
そして冒頭から早速、勘三郎さんが出てきてびっくりしましたね。もちろんまだ和尚吉三の出番ではないので、別の役なのですが、これがすごい太っちょで関西弁で何故か英語をしゃべったりもするので面白かったー。かたや亀蔵さんは田中邦衛になってるし(笑) でも一瞬で観客のハートを掴み物語の世界へと惹き込んだ勘三郎さんはやはり凄い人だと思いました。

三人吉三の話は私的にはお嬢吉三が一番美味しい役どころだと思います。女の格好をしていて実は男という設定はいつの時代でも魅力的なんでしょうね。福助さんかっこ良かったな。「こいつは春から演技がいいわぇ」と七五調の名台詞とともに見得を切る場面とかもう一人舞台ですもん。ラストの火の見櫓での立ち回りも一番良かった。見せ方が派手なんですよね。でも最後に三人が倒れるところで一番下で潰されてるので、息できてるのか心配になりました(^^; そのせいなのかカーテンコールでも福助さんはフラフラだったような…。

橋之助さんも冒頭、別の役で登場するのですが、しばらく橋之助さんだって気づかなかったです。だって出っ歯なんだもん(笑) お坊吉三の色悪ぶりはハマってましたね。でも四谷怪談の伊右衛門とは違って、根は義に厚くいい人という役どころが更に良かったと思います。悪ぶってるんだけど、極悪人だった伝吉と対峙した時は結構必死だったし。

そして今回も笹野さんがご出演。歌舞伎役者ではない笹野さんが見得を切ったり立ち回りをしたり、本当に器用な人だなと思いますね。しっかり「淡路屋」という屋号もかかってました♪ 十三郎が実は自分が19年前に捨てた息子であることを独白しているシーンは淡々と語っていながらBGMのエレキギターや暗い照明とも相まって、ものすごく印象的なシーンになってました。その後のうっすら差し込む月明かりの下でのお坊との対決場面も印象的だったし、三人吉三はそもそも笹野さん演じる土左衛門伝吉の犯した罪が悲劇を生むので、今回の串田演出バージョンではしっかり中心に据えられて印象的な場面を作ることで、因果応報的な物語がわかりやすく描かれていたと思います。だから伝吉は凄い重要な役なんですが、笹野さんとても良かったと思います。

勘ちゃんと七之助君による十三郎とおとせの禁断の悲恋も凄く良かったです。七之助君はほんとに綺麗~♪ 夜鷹なだけあって、とても艶っぽかったし、十三郎と恋に落ちる場面の二人が凄いイイんですよ! 兄弟なのになんであんなに色気があるんだろう(笑) 恋人役やらせてここまでハマる兄弟って凄いなあ。
そして実の弟と妹が何も知らずに幸せそうにしている姿を見つめる勘三郎さんの和尚吉三の切ない感じもいいんですよね。本物の家族だからリアルさが増すせいもあるんだろうけど、舞台上の三人を観ていて改めて中村屋好きだわ~と思っちゃいました。ただ、裏の墓場での壮絶な最期の場面がカットされてて残念。あそこやるともっと悲しくなっちゃうけどね。でも十三郎とおとせの場面もう少し観たかったです。首はリアルにできてた(笑)
いつか勘ちゃんがお坊で七之助君がお嬢のバージョンも観たいので、それまで勘三郎さんにはまだまだ体力つけておいてもらわなくちゃ(笑)

芝のぶちゃんは今回は若衆役で立ち回りもあったり、最後も捕物役で出てましたね。どうも芝のぶちゃんが立役やると宝塚っぽいけど…(^^;;;
三人吉三では夜鷹役も結構美味しいんですよね。あの吉三の見得パロディやるとこ好き!


そして魅力的な登場人物達、この物語の主要テーマである因果応報にプラスされて面白いのが「百両」と「庚申丸」という小道具が登場人物の間を次々と持ち主を替えて巡っていくところです。とくに「百両」のほうはは主要人物は皆一度は手にしていますね。こういう手法、三谷作品でもよく見られるけど、昔からある王道なんだろうな。
結局、いつの世もお金に振り回される人間が悲劇を生むのですね。あ、そういえば勘三郎さんが劇中で税金申告のことネタにしてたっけ(苦笑)うーん…なんとタイムリーな演目だったものか



舞台はけて外へ出たら、東急本店の前でジャズサックスプレイヤーの稲垣次郎さんが生演奏してらっしゃいました。ちょうど土曜日のスマステゲストの田村正和さんが映画で演奏するために習ったと語ってたから、タイムリーでびっくり!和楽にロックにジャズ! 音楽三昧な一日でした。

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