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最近はフィギュアスケートと歌舞伎鑑賞記録が主流でござります

十月大歌舞伎・昼の部

2007年10月08日 | 歌舞伎
日曜日に昼夜通しで歌舞伎座に観に行きました。席は昼夜とも3階席の1列目! 初めて座ったのですが、やっぱり前の人の頭に遮られないのは良いですね~。
今月は東京だけでも、歌舞伎座、新橋演舞場、三越劇場、国立劇場と4座、そして名古屋の御園座の計5座で歌舞伎が催されてるため、役者もさぞたくさん役を掛け持ちしているだろうと思いきや、筋書きを観たら、主要な役者は1役のみの方がほとんどで驚きました。今月は登場人物が少ない演目ばかりだったのかしら? 新橋の勘三郎さんなんて朝から晩まで出ずっぱりなのにね(^^; でもそんな中、三津五郎さんはかなり大忙しでした。昼こそ1役ですが、夜は怪談牡丹灯籠の演目の中だけでも3役、そして奴道成寺ですから、新橋が勘三郎奮闘公演なら、歌舞伎座は三津五郎奮闘公演という印象でした。
では昼の部から感想を。

一、「赤い陣羽織」
昼の部はまず木下順二氏の名作で幕開け。浄瑠璃やお囃子で始まるのではなく、民話らしく陽気で軽快な音楽で始まりました。
面相は悪いが性格は良い「おやじ」と、そのおやじにそっくりな「お代官」が、おやじの美しい女房をめぐって攻防をくりひろげる物語なのですが、この作品には登場人物に名前がありません。唯一名前が付いてるのが馬の「孫太郎」のみ(笑) お代官が村の男を「おやじ」と呼んだり、自分の女房でもないのに「女房」と呼びかけるのがなんとも不思議な感じでした。
面相の悪い「おやじ」を端正な顔立ちの錦之助さんがやるというので、ミスキャストかと思いきや、ゲジゲジ太眉&泥棒ヒゲメイクで、一昔前のひょうきん族のコントみたいな顔になっておりました(笑) 翫雀さんの「お代官」も当然同じようなメイク。孝太郎さんの女房は美しいというよりは可愛らしい感じで、8月の納涼に続き、良い女房っぷりでした。
この作品は何より馬の「孫太郎」がとても可愛いんですよ! 家の中の厩にずっと繋がれてるんですけど、おやじと女房の会話をずっと聞いてたり、呼びかけには嘶いて応えたり、おやじが歌えば馬もリズムを刻んでステップして、とにかく可愛いんです。歌舞伎に出てくる馬って頭とお尻に役者さんが入って演じてますが、本当に上手いですよね。あれをかぶってじっとしてるのは暑くて大変そうですけど。馬役の人の名前も筋書きに出してあげればいいのになと毎度思います。
あとは最後に吉弥さん演じるお代官の奥方が全てをかっさらって行きましたね。最後の場面だけ見たら身替座禅のようで可笑しかったです。

二、「恋飛脚大和往来」
「封印切」と「新口村」単体で上演されることも多いですけど、今回は通し上演でした。
遊女と深い恋仲になり、身請けしようと手付金を払ったものの、残りのお金が払えず、そのうち他の客が遊女を見初めて身請けしようとすることから起きる悲劇の物語です。
主人公の忠兵衛は飛脚業を営む若旦那で、飛脚というのは文を運ぶいわゆる郵便業だけでなく、小切手を現金に換金して届ける銀行業も兼ねてるんですね。で、その公金を懐に忍ばせていたために、恋敵となった八右衛門にそそのかされて、ついに公金の封を切ってしまいます。結果その金で遊女・梅川を身請けするので、要は横領罪。しかもたった10両で打ち首になる時代に忠兵衛が封を切った額は250両。身請けした梅川にだけ訳を話して、二人は手元に残った50両が尽きたら死のうと決め、逃げられるところまで逃げることに。
忠兵衛の故郷・新口村にやってきた二人は、ひとめ父親に会いたいと願いますが、すでに公金横領の詮議が父親のところにまで来ていました。その代官所からの帰り道の雪の中、下駄の鼻緒が切れて転んだ忠兵衛の父親・孫右衛門を梅川が助けます。梅川の様子を見ているうちに、それが自分の息子と逃げている遊女だと知り、近くに息子が来ていることに気付いた孫右衛門は、自分の居ないところで縄にかかってくれと涙ながらに息子に訴えます。
やがて追っ手がくる音が聞こえ、孫右衛門は二人に裏道を教え、大雪の中で親子は最後の別れを果たすのでした。

面白かったのは「封印切」での忠兵衛(坂田藤十郎)と八右衛門(三津五郎)のやりとりですね。三津五郎さんは今回悪役なんですが、忠兵衛を追いつめるところが本当に嫌らしくて、そのくせ、忠兵衛の悪口が全部嘘だとバレた時の、しまった…というような顔に茶目っ気があって、なんだかしょうがないイタズラ坊主という感じでした(笑)
あと秀太郎さんの遊女屋女将・おえんも良かったですね。おえんは忠兵衛に梅川を身請けさせたいと思っているので、二人をこっそり逢わせたり、粋な計らいもしてくれるんですけど、身請けの話合いをさせたいのになんだかいつも話がまとまらず、じゃらじゃらしてばかりと呆れるとこなど良かったです。でもだからこそ、梅川の身請けの金が公金横領したもので、これから二人は幸せになるどころか死ぬ運命にあることを知らずに、二人の旅立ちをおえんが喜んで送り出してくれるとこなどは哀しいものがありました。
梅川の時蔵さんはとても綺麗でした♪ でも時蔵さんだと遊女というより位の高い姫にも見えてしまうかも。

三、「羽衣」
最後は玉三郎さんと愛之助さんの舞踊。天女の羽衣って、ふわっと柔らかい素材というイメージがずっとあったんですが、この舞踊に出てきた羽衣は結構ぱりっとしてました(^^;
羽衣を返してもらい、天女のいでたちで出てきた玉三郎さんは本当に綺麗でした。本当に人間と違う神々しさみたいなものがこの人にはあるんですよね。
愛之助さんの漁師も良かったんですけど、踊りが少なくて残念。あと、漁師なのに袴?と思ってしまいました。
最後に天女が天へ帰って行くところ、玉三郎さん宙乗りするって予告は無かったけどどう表現するんだろう?と思ってたら、なるほどそう来ましたか!という感じでした。玉さんが上らないのなら逆に愛之助さんがね

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