■DVD:「雲のむこう、約束の場所」
日本酒は等級が上がると酒税も上がるらしい。
その為、安価で良質の酒を提供したい小規模の酒蔵などは
一級の認定を断り、敢えて二級酒のまま販売すると「夏子の酒」で読んだ。
本作で晴れてメジャーデビューと相成った新海監督だが、
一級を名乗る(メジャーに乗る)のは少々早過ぎたと思う。
監督はもとより、製作に関わったスタッフも、配給を請け負ったコミックスウェーブの担当者も
非常に結束力の強いグループで製作されたであろうことは伝わってきたが、
そこに「商売人」としての視点を持つ人間は存在していなかったのではないか。
関係者全員が新海監督を崇拝していると言うか、
やることなすこと全てOKにしたのではないかと思うフシがある。
好きなことだけをやり、分かってくれる人だけ分かってくれという
やり方が許されるのは同人レベルまでだ。
新海監督が本気でメジャーの土俵で勝負していくつもりなら、
一見好き放題にやらせているようで、
要所要所ではちゃんと軌道修正をしてくれる女房役を早急に見つけるべきだろう。
最大の失敗は、登場人物が「多くを語り過ぎる」ことだ。
主人公も脇役もとにかく饒舌な上に使っている言葉がいちいち説明っぽい。
私の周りにもPCのエロゲーやギャルゲーが大好きな人間が何人かいるが、
「これはいいから!泣けるから!いやホントに!騙されたと思って!」
と言われて借りてみたソフトの90%にも同じことが言える。
どれほど泣けるエピソードを用意しようが、
肝心の文章力が文語と口語の区別すらついていないようなレベルでは
世界に没入する前に萎えてしまう。
声優に吉岡秀隆や萩原聖人などの俳優を起用しているのも疑問だ。
この手の絵(オタク向け)と話(オタク向け)なら、現役の声優だけで作っても良かったと思う。
吉岡も萩原も、よく理解しないままに黙々とこなしているように聞こえた。
際だって下手なわけではないが、彼等を起用した理由も見つけられなかった。
今回、手放しで絶賛出来るのは天門が手掛ける音楽だろう。
これは本当に素晴らしい。
DVDが発売される時には、台詞を抜きにして音楽と絵だけで鑑賞出来るモードを付けて欲しい。
サウンドトラックアルバムの発売は来年2月とまだ少し先だが、
その時まで覚えていたら購入したい。覚えていたら。
新海監督は良質な二級酒を提供する酒蔵の杜氏の方が向いているかも知れない。
吉岡や萩原のような一般の映画ファンにも知名度の高い俳優をキャスティングし、
「ポスト宮崎」だ何だとフカしまくりの広告展開で煽れば、
私のように「それほどかぁ?」と思う人間が絶対に出てきてしまう。
監督の年齢からしても、
住み慣れた世界でもう少し鍛えてからでも決して遅くはないと思うのだが。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:雲のむこう、約束の場所
配給:コミックス・ウェーブ
公開日:2004年11月20日
監督:新海誠
出演者:(声)吉岡秀隆、萩原聖人、他
公式サイト:http://www.kumonomukou.com/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
綺麗な雰囲気のある作品ですし、素材は良いと思いますので、
覚悟をもって見に行きたいと思います。
全く同感です。
新海監督の独り言を延々と聞かされたような映画でした。
たったひとり原画マンをしている友人は「・・・絵コンテをロクに切ってないか周りがイエスマンばかりの職場ってのが目に浮かぶなぁ」とこぼしてました。
寂しいのですがこの映画を見てイノセンスの監督さんが「日本の視聴者のレベルが下がってきた」といってたのが思い出されてしまいました。
が、私の文章をよく読んで欲しいのだが、私は
>よく理解しないままに黙々とこなしているように聞こえた。
と書いている。あくまでもそう「聞こえた」だけだ。
「理解していなかったのだろう」ではない。
実際の所、どこまで理解していようがいまいが、
最終的に観客に伝わらなければ意味がないと思う。
まるで理解していなくても名演は出来るし、またその逆もある。
zoil殿の何がすごいかと言うと、
友人同士で語れるほどこの映画を観ている人が周りにいるということだ。
押井監督については賛否両論あるものの、
拡大上映出来るだけの「信者」を集めたということでは
成功者と呼んでいいと思う。
「イノセンス」があれで良かったかどうかはまた別の話として、だが。
・シーンを優先して全体の構成を考えていない
・物語の背景がすっ飛ばされているので話がオチていない
という欠点はそのまま、まず映像からというところは相変わらずでした。
ほしのこえでは光速にまつわる時間軸のずれというSF的要素を
なんとか使いこなしていたのに対して、
今回は設定が完全に浮き上がってしまったように思います。
監督の個性が悪い意味で発揮されすぎている気がしてならないので、
監督をうまく操作できる人間が必要なのかな、と感じました。
脚本担当か、プロデューサーあたりでしょうか?
自分はただの社会人1年生ですが恥ずかしながらアニメ映画を劇場で見るのは初めてだったので勝手がわからず某スタジオの原画描きになってる友人に無理を言って付き添ってもらいました。劇場の入り口に飾ってあるポスターを見て「へぇ・・・ヴァイオリンかあ。ブラスバンド部のお話かな?」と思ったくらい前知識がありませんでした。・・・・・・・・・結局、先入観のない僕が見た感想が先にも述べたものなんですがw
本文にも書いたが、この人には「女房役」が必要だと思う。
あと、監督がやたらにこだわったという「光」だが、
私にはとても凡庸な使い方にしか見えなかった。
逆光が好きなのはわかったが。
まず映像からとは言われながら、ストーリーが弱いため
結果的に映像が浮き上がっただけとも言える。
>zoil殿
私も予備知識なしで見に行った。
吉岡や萩原が声をあてるというので興味を持ったクチだ。
私は「彼女と彼女の猫」で新海作品にハマッた口ですが、今回の映画の感想は「……ま、及第点かな」でした。
みなさん期待しすぎ。
一般人はほとんどその存在すら知らないようなオタクアニメになにそんな多大な期待を持ってるんですか。
騒いでるって言っても、一部のオタクだけでしょう?マスコミは騒ぐのが仕事みたいなもんなので、あんなん信用しちゃいけませんよ。特にマイナーな作品は。
「商業作品なら、うんぬん」という話を聞きますが、スタジオ制作もしてないで商業もなにもないでしょう。
この映画こそ、一種のお祭りですよ。大衆向けの映画を作るにはまだまだ経験が浅すぎると思います。
ま、批判されるのは悪いことでは無いんで嬉しくはあるんですが。