米国では1998年から2009年の間に、51件のウイルス性肝炎アウトブレイクが報告され、620名の感染者が見つかっています。施設は、病院、透析センター、外来クリニック、日帰り手術センター、療養施設など、「医療感染施設」にしっかり広がっています。
相次ぐ医療機関でのウイルス肝炎集団発生を受けて、2007年のCDC隔離予防策のためのガイドラインでは、「安全な注射手技」の項目が追加されました。
ちなみに、ここで問題となっているのは、病棟やクリニックの患者さんのいるエリアでの注射の調製であり、薬剤部内の隔離された調製室のクリーンベンチ内での調製のことではありません。
で、その後、どうなの?
というわけで、2010年春に米国で実施されたアンケート調査の結果です。
対象は、アンケートに回答した約8000人の医療者のうち、「安全な注射手技について知っている」と回答した8割が次に進みます。
1.まず、教育の機会についての質問。
「誰から注射の安全手技について聞いたか?」 専門団体からが6割、同僚からが5割。
「どうやって知った?」ガイドライン6割。セミナー5.5割。
2.無菌テクニックはできているか?
「単回使用バイアルを、一人の患者限定で複数回使用した」Yesが3割。インスリン、リドカイン、フェンタニールなど。
「複数回使用バイアルを複数患者に使用した」Yes が65%。ワクチン、ツベルクリンテスト、ビタミンB12、リドカイン、インスリン。
3.ガイドラインに従っているか?
「単回使用バイアルを複数患者に使用した」Yes が6%。
「シリンジは再利用(使い回し)したけど、針は次の患者さんの時に新しいものに取り替えた」Yes が1%(45人!)4名のコメントによれば、3名はインスリンの投与、1名はプロポフォール投与のとき。
「輸液バッグを複数患者共用の供給源として使う」Yesは9%。
ディスカッションでは、「間違った信念」として、「汚染は、針の部分だけに起きる」「薬液の注入にのみ使用して、決して吸引していなければ、シリンジは汚染されない」というような例が紹介されています。
原著を読むと、それぞれの回答と一緒に、「だって、もったいないんだもん。」とか記載された回答者のコメントもあって、結構おもしろい。
ガイドラインが出る前との比較はできませんし、そもそも、米国では、薬局での無菌調製が進んでいる中、患者サイドで注射の調製に関わる場面がどれだけあるのか、背景がわかりませんので、数字だけを捕らえての判断は難しいところです。それでも、問題になりやすい場面や問題になりやすい薬品が浮き彫りになることは、注意を呼びかけるときに、役立つ情報となります。
元の論文はこちら。
Injection practices among clinicians in United States health care settings.
Pugliese G et al. Am J Infect Control. 2010 Dec;38(10):789-98.
相次ぐ医療機関でのウイルス肝炎集団発生を受けて、2007年のCDC隔離予防策のためのガイドラインでは、「安全な注射手技」の項目が追加されました。
ちなみに、ここで問題となっているのは、病棟やクリニックの患者さんのいるエリアでの注射の調製であり、薬剤部内の隔離された調製室のクリーンベンチ内での調製のことではありません。
で、その後、どうなの?
というわけで、2010年春に米国で実施されたアンケート調査の結果です。
対象は、アンケートに回答した約8000人の医療者のうち、「安全な注射手技について知っている」と回答した8割が次に進みます。
1.まず、教育の機会についての質問。
「誰から注射の安全手技について聞いたか?」 専門団体からが6割、同僚からが5割。
「どうやって知った?」ガイドライン6割。セミナー5.5割。
2.無菌テクニックはできているか?
「単回使用バイアルを、一人の患者限定で複数回使用した」Yesが3割。インスリン、リドカイン、フェンタニールなど。
「複数回使用バイアルを複数患者に使用した」Yes が65%。ワクチン、ツベルクリンテスト、ビタミンB12、リドカイン、インスリン。
3.ガイドラインに従っているか?
「単回使用バイアルを複数患者に使用した」Yes が6%。
「シリンジは再利用(使い回し)したけど、針は次の患者さんの時に新しいものに取り替えた」Yes が1%(45人!)4名のコメントによれば、3名はインスリンの投与、1名はプロポフォール投与のとき。
「輸液バッグを複数患者共用の供給源として使う」Yesは9%。
ディスカッションでは、「間違った信念」として、「汚染は、針の部分だけに起きる」「薬液の注入にのみ使用して、決して吸引していなければ、シリンジは汚染されない」というような例が紹介されています。
原著を読むと、それぞれの回答と一緒に、「だって、もったいないんだもん。」とか記載された回答者のコメントもあって、結構おもしろい。
ガイドラインが出る前との比較はできませんし、そもそも、米国では、薬局での無菌調製が進んでいる中、患者サイドで注射の調製に関わる場面がどれだけあるのか、背景がわかりませんので、数字だけを捕らえての判断は難しいところです。それでも、問題になりやすい場面や問題になりやすい薬品が浮き彫りになることは、注意を呼びかけるときに、役立つ情報となります。
元の論文はこちら。
Injection practices among clinicians in United States health care settings.
Pugliese G et al. Am J Infect Control. 2010 Dec;38(10):789-98.