新・ヒット商品の発想&開発方法

ロングセラー商品やヒット商品のアイデア発想と開発方法を探り、未来のヒット商品を生み出す。

ロングセラー商品⑱~パスコ「超熟」

2015年09月19日 | ロングセラー商品
1998年秋、食パン史上最大のヒット商品と言われるPasco「超熟」が発売された。08年には「超熟」シリーズ全品でイーストフード・乳化剤不使用にするなど、安全安心、健康を意識した進化を遂げている。
敷島製パン(Pasco)は98年初頭、売れる食パンの新商品開発に本格着手。背景にあったのは、山崎製パン「新食感宣言」、フジパン「本仕込み」のヒットによる食パン部門の売上前年割れによる危機感だ。小麦粉本来の風味はもとより、もちっとした食感で毎日食べても飽きのこない「ごはん」のような食パンを目指した。
揺るぎない製品コンセプトに加え、生産工程、配合、コストの常識を覆した商品設計を貫いた。さらに商品名、ロゴ、パッケージ、販売・プロモーションと短期間に商品を昇華させ、前述の2商品の後発ながら、瞬く間に消費者の支持をかち取った。常識を非常識と捉え、開発、生産、販売が有機的に結び付いたことが大ヒットを生んだのだ。
大量生産には不向きとされた小麦粉の一部に熱湯をかけ捏ね上げる湯種製法の採用と、低温で長時間じっくり発酵することにより、もちもち感と小麦粉の自然の甘み味わいを引き出した。何としても量産化をしようとする開発者の強い思いに生産部門のパン職人魂が呼応し、温度設定・管理、時間管理などを独自技術で確立し「超熟製法」が完成した。
新製法を訴求する商品名「超熟」(縦書き)の強いメッセージ性、寒色のブルーを配したパッケージデザインなど既存商品にはない独自性が消費者の期待値を超え、発売2年半後には部門売上ナンバーワンを獲得した。以後も顧客ニーズを起点とするマーケットインを推し進め、超熟ブランドを強固なものにしている。

ロングセラー商品⑰~カルピス「カルピスウォーター」

2012年03月18日 | ロングセラー商品
発売21周年を迎えた「カルピスウォーター」。
爽やかなカルピス菌の風味と”初恋の味”というキャッチフレーズで90年を超えて愛されているロングセラー商品「カルピス」をそのまま飲めるタイプとして発売したものだ。
夏は氷を浮かべてアイスで、冬はお湯でホットでという飲用シーンが定着し、また贈答用としても人気が高かったため、「カルピスウォーター」の発売にはカニ張りを懸念し慎重な意見が多かったのも事実で、難しい決断だった言える。いつでもどこでも飲めるタイプにしただけの商品だから、当然「カルピス」に影響を与えるのは必至だからだ。が発売するや否や、缶・PET・紙容器ともいずれも大ヒットした。しかも「カルピス」ブランドそのものがブラッシュアップし、より強固な支持を得ることにつながったのだ。
「カルピスウォーター」の大ヒットは、当時ライバルメーカーで飲料の開発をしていた筆者にとって衝撃な出来事で、その後の教訓にもなっている。低迷していても確実に売り上げが見込める場合、その看板商品の売上減が懸念される商品の発売は避けるという企業論理思考から脱却して考え、徹底的な顧客視点・起点で商品を作り込あげていくことの大切さを教わった。
ブランドの派生商品が、ブランド全体をより強固なものに変える。加えて、消費者の多様な心理・ライフスタイルを読み解くことの重要性を示唆してくれたロングセラー商品である。

ロングセラー商品⑯~カルビー「サッポロポテト つぶつぶベジタブル」

2011年07月07日 | ロングセラー商品
「じゃがいもを丸ごと使った、じゃがいもの味がする商品を作りたい」というカルビー創業者:松尾孝氏の熱き思いを具現化した商品が1972年発売の「サッポロポテト」である。
同社は1969年に「かっぱえびせん」を発売、生のえびを小麦生地に練り込んだ画期的スナックとして「やめられない。とまらない~。」のCMソングと相まって大ヒットした。そして、じゃがいもを使った初めての商品として発売されたのが「サッポロポテト」だ。当初の原料は、小麦粉とじゃがいもを使用していたが、81年に”食べる野菜ジュース”というキャッチフレーズで野菜を配合した。2010年には従来の6種の野菜(ほうれん草、人参、玉葱、トマト、かぼちゃ、モロヘイヤ)に、新たに3種の野菜(赤ピーマン、レッドビート、パセリ)を配合した。
「じゃがいもの味がする商品」というコンセプト通り、飽きのこないあっさりとした塩味とやさしい口溶けがじゃがいもの風味を際立たせた。同社の商品に共通するシンプルな味付けは強烈なインパクトは残さないが、やさしいお袋の味付けを彷彿とさせる記憶に残る美味しさなのだ。ここに世代を超えた多くの人に支持される理由が隠されている。
そして時代の健康志向をいち早く取り入れたのが野菜の配合だった。「かっぱえびせん」のえびの練り込みと同様に見た目にも野菜入りを実感できる配合は秀逸である。赤(赤ピーマン、レッドビート)、オレンジ(人参、赤ピーマン)、緑(ほうれんそう、パセリ)の野菜の顆粒(つぶつぶ)が健康感をさりげなく訴求する。また野菜の千切りを思わせる形状は食べやすく、乳幼児のスナックとしても安心して与えられる。
味覚の評価として「パンチがある、ない」という表現が使われ、安易に刺激を追い求めることが記憶に残ると思いがちだが、同商品は素材を生かすこと、視覚的にアピールすること、時代のトレンドに合わせることをさりげなく問いかけることの大切さを教えてくれている。

ロングセラー商品⑮~アサヒ飲料「三ツ矢サイダー」

2011年04月30日 | ロングセラー商品
1884年発売の天然鉱泉水「三ツ矢平野水」をルーツに持つのがサイダーの代名詞であるアサヒ飲料「三ツ矢サイダー」だ。誰もが少年少女時代、その爽やかな喉越しに魅了された、言わずと知れた国民的飲料だが、1990年代半ばに入ると健康志向の高まりから、サイダーを含む炭酸飲料は”高カロリー”と敬遠され縮小していく。
時あたかも500mlPET容器の自主規制が緩和されて、容器の主流は缶からPET容器(小型・大型)にシフトした。商品カテゴリーも健康志向、リキャップでき携帯性に優れるというPET容器の優位性に適した、経時的に味覚変化の少ない茶系飲料が主役となっていく。そうした中、炭酸飲料で伸長していたのは、カロリーオフという新しい切り口で様々な高甘味料を使用することで製品の完成度を高めていたコーラ飲料だけである。
「三ツ矢サイダー」は120余年という年月とシンプルな商品設計ゆえ、斬新な展開ができず、乳性や果汁入りなどの小手先のトライに終わっていた。炭酸飲料にとって失われた10年だったと言っていいだろう。
長い歴史と伝統、ガリバー商品だった過去の成功体験が商品開発の本質を鈍らせることがある。自戒を込めて言うと、ベテラン開発マンほどこのことを肝に銘じなければならないのだ。そして再び世代を超えて心を掴むことになったのが「三ツ矢サイダーオールゼロ」であった。自然の甘みに近い高甘味料の開発により実現したと言えるが、顧客が求めていたのはコーラ飲料と同様に”カロリーゼロ・オフ”だった。”高カロリー”というネガティブイメージを払拭することをピンポイントで狙えば良かったのだ。「三ツ矢サイダー」は今や高甘味料を使用することで、その爽快感とカロリーオフで市場を牽引するばかりか、その長い年月で得た絶対的信頼感と安心感が再びブランド力を強固にし国民的飲料の地位を不動のものとしている。

ロングセラー商品⑭~山崎製パン「ランチパック」

2011年03月19日 | ロングセラー商品
手軽に持ち運べて、食べやすい元祖”携帯食”が1984年発売の山崎製パン「ランチパック」である。定番のジャムやクリームはもとより、惣菜に至るまでさまざまなフィリング(具材)をサンドした菓子&惣菜パンで、今やご当地(地域限定)商品を含めると約60アイテムに上り、約3億7000万個を売り上げるガリバー商品だ。
年間50アイテムを発売するが、発売以来変わらぬ人気No.1が「ピーナッツ」で、以下「たまご」「ツナマヨネーズ」とベーシックな商品が続く。ヒットの主因は、”中身の具材がこぼれにくい、適度な厚みで食べやすい、手を汚さずに食べられる”という利便性だ。加えて、中身はシンプルでもガッツリ系具材でも、サンドイッチ感覚でちょっとお洒落で小粋な食シーンを演出してくれる要素が女性からの支持を得た。「忙しくてゆっくり食事はできないが、ちゃんと栄養は補給し美容・健康を気遣っています」というメッセージがイケてる女性を醸し出すのだ。また、毎月ご当地商品を含めた新商品を絶えず投入することで話題性や次いで買いを促し、シリーズの陳腐化を防いでいる。商品コンセプトとマーケティング戦略は菓子パン市場随一で、進化するロングセラー商品の代表格と言っていい。
具材の水分・油分がパン生地に染み込むのを防ぐためのキメ細かい専用食パンの開発、食パンのスライスから個包装まで1分40秒間のフレッシュ製法、包装時にエアーを注入し型崩れを防ぐなど”美味しさ”を裏付ける品質設計も見逃せない。


ロングセラー商品⑬~江崎グリコ「ポッキー」

2011年02月19日 | ロングセラー商品
昭和41年に発売された江崎グリコの看板商品「ポッキー」。35年発売のスティック菓子「プリッツ」にビターチョコレートをコーティングした姉妹商品である。
ヒットの主因は、チョコレートを手を汚さずに指でつまんで食べられる手軽さ、「プリッツ」の香ばしさ・食感とチョコレートを同時に楽しめる絶妙のバランスにある。誰もが食べたことがある国民的菓子の代表格だが、商品設計(味覚)の完成度の高さは他を圧倒する。”商品力”が、数多のミート商品を寄せ付けないばかりか、逆に同商品の美味しさを際立たせガリバー商品としての不動の地位を築いたのである。その後、ムース系などのヒット商品を派生していることがそのことを裏付けている。
「プリッツ」の香ばしいロースト感に負けないチョコレート感を醸し出すためにカカオを深焙焼し、「プリッツ」の香ばしさと食感を失わないチョコレートのコーティング技術が、”ポキッ、ポキッ”という心地良い音感と程良い食感を生みだした。まさに五感を訴求した商品である。付言すると、”甘さは旨み”といわれる中、甘さ控えめのビターチョコレートは、素材の良さ所以であり、より幅広い顧客層に支持されることに結び付いたのだ。
百花繚乱の菓子市場、洗練された商品も上市され嬉しい限りだが、少子化によるパイの食い合いなどネガティブ発想があるのも事実。菓子類に限らず、ロングセラー商品が示唆しているのは、”付加価値とはあれもこれもと価値を加える(足す)ことではない”ということだ。シンプルに、研ぎ澄ますこと。「ポッキー」はそのことを教えてくれている。

ロングセラー商品⑫~明治製菓「チェルシー」

2010年06月23日 | ロングセラー商品
「今までにない美味しいキャンディー」を探し求めて、英国スコットランドに古くから伝わるコクのある濃厚なスカッチキャンディーに着目したのが、発売39周年を迎えた明治製菓「チェルシー」である。
滑らかで飽きのこない濃厚な美味しさはもとより、「あなたにも分けてあげたい もひとつチェルシー」というCMソング、愛らしく英国風の高級感をもつネーミングとパッケージが「チェルシー」のもつ世界観を一体化した。「幸福感」が口の中に広がる”食の本質”を究めた商品であると言っていい。
特筆すべきは、練り合わせた原料をそのまま型に流し込む日本発の「流し込み」製法を採用したこと。これにより、滑らかさは向上し、バターの含有量を増やすことができた。また高級バターの代名詞である発酵バター(クリームを乳酸菌で発酵させたバター)を用い、芳香な香味を醸し出した。妥協せぬ品質設計と製法が、発売以来変わらぬ「バタースカッチ」「ヨーグルトスカッチ」の2つの味を生み、現在も世代を越えて愛されている。
黒を基調に可愛らしい花柄をあしらった窓開きのパッケージと、そこからから覗く、同じく花柄をあしらった紙包みも上質感があり秀逸だ。女性を意識した商品開発であるが、男性層にも幅広く支持されていることも見逃せない。


ロングセラー商品⑪~ロッテ「グリーンガム」「クールミントガム」

2010年03月17日 | ロングセラー商品
板ガムの定番、ロッテ「グリーンガム」(1957年発売)と「クールミントガム」(1960年発売)は発売以来、”お口の恋人”というキャッチフレーズとともに半世紀を経ても変わらぬ支持を集めている。
物資が不足していた戦後まもなく風船ガム市場に参入した。当時、ガムはチョコレートと並び甘さに飢えていた子供達の憧れの菓子で、爆発的に売れたという。が、板ガム参入にあたっての戦略は、”辛口で爽快感を持った大人向けガム”の開発だった。
こだわったのが、”噛み心地”と”味の持続時間”だ。国内で主流だった合成のガムベースでなく、本場・米国で主原料となっている中南米産の天然チクルを使用した。良質のガムベースに加え、葉緑素(クロロフィル)の配合による口臭予防効果やペパーミント・メントールによる心地良い爽やかな刺激が、新たな嗜好を求める消費者を開拓したのだ。
ガム黎明期に品質にこだわり続けたこととその斬新な切り口、そして61年に実施した大規模な懸賞キャンペーンなどのマーケティング戦略が奏功し、瞬く間にトップメーカーになった。
ガムを噛むことによる唾液分泌促進、口臭予防、眠気予防などの効果を唱え、虫歯になりにくいなど効能を持った素材をいち早く取り入れてきた。キシリトール入りなどの粒ガムが主流となっている現在でも、板ガム開発でこだわった良質なガムベースの研究開発・技術力は他社を圧倒している。

ロングセラー商品⑩~ダノン「プチダノン」

2010年03月04日 | ロングセラー商品
今や世界45カ国以上で販売される世界ナンバーワンヨーグルトブランド「ダノン」。
その誕生は1919年、スペインで腸の感染症が大流行し、病に苦しむ子供たちのために、世界で初めて工業化に成功したヨーグルト「ダノン」に遡る。
日本での商品展開は1980年で、ヨーグルトメーカーというよりも、「プチダノン」として知名度を得て、離乳完了期の幼児を持つ子育て主婦に圧倒的な支持を広げてきた。
種類別は、牛乳を主要原料としながら牛乳・乳製品に含まれない「乳等を主要原料とする食品」に区分される。耳慣れない規格名でネガティブイメージを懸念するが、あくまでも品質設計を重視した結果だろう。シンプルでありながら飽きの来ない滑らかでクリーミーな風味とテクスチャーは、新鮮な生乳をベースに独自の乳酸菌を用いたヨーグルトやフレッシュチーズの製法を併せ持ったもので完成度は高い。
幼児をコアターゲットにしたニッチ商品で売上や利益の急拡大は見込めない。だが、核家族化・少子化が進んだ中、子育て、特に離乳完了期の食事において不安を持つ主婦達に”安心、美味しさ”と”育児ママ応援”いう「ダノン」ブランドへの高い信頼感を勝ち得たきた機軸商品である。
日本での商品展開から30年、じっくりとブランド力を醸成、強固なものとしてきた。「プチダノン」で育った幼児が母親として受け継ぐととともに、愛用していた主婦は祖母になり、「ダノンビオ」などの主力商品に商品スイッチし、ヒットを支えている。

ロングセラー商品⑨~伊藤園「お~いお茶」

2009年12月05日 | ロングセラー商品
緑茶飲料の代名詞といえば、今年で発売20周年を迎えた伊藤園「お~いお茶」である。発売当時、これほどまでに緑茶飲料が売れると誰が予測しただろうか。今や急須で淹れて飲むのではなく、買って飲むのが当たり前という、緑茶の持つ文化的な側面を含めた新しい飲用習慣を提供し、根付かせてきた。2000年10月にはホット対応のPETボトルを投入、通年で支持されている緑茶飲料のトップブランドだ。
ウーロン茶を日本で初めて紹介したのも同社である。81年発売の缶入りウーロン茶が大ヒットしたことで、缶入り緑茶の開発を急いだ。レトルト殺菌やタンニンの酸化による風味劣化の技術的課題を克服し、遅れること4年、缶入り緑茶の発売にこぎつけたが、緑茶ブームに火がついたのはさらに4年後、商品名を現在の「お~いお茶」に変更してからである。
「自然が好きです。」という企業理念に基づき、発売当初から、無香料・無調味、無添加を守り、茶葉本来の味や製法にこだわってきた。良質な茶葉を長期的、安定的に確保するための茶園育成事業も手懸けており、飽きのこない美味しさとそのナチュラル志向、本物志向に取り組む商品開発・企業姿勢に対する圧倒的な信頼感が長年支持されてきた所以である。竹をイメージしたデザイン、商品名の書体、季節・地域限定商品の投入など常に商品訴求力を高める商品開発・マーケティング力も見逃せない。

ロングセラー商品⑧~大塚製薬「ポカリスエット」

2009年11月07日 | ロングセラー商品
水分補給飲料の代名詞と言えるのが1980年発売の大塚製薬「ポカリスエット」だ。"のどの渇き"と言えば、炭酸飲料で潤していた時代、水分補給飲料の新概念、新カテゴリーをつくった画期的な商品である。
人間の体の約6割を占める水分。体内における水分の重要性を他の飲料メーカーより認識していたのは同社が販売していた点滴注射薬の科学的な知見があったからに他ならない。スポーツや激しい作業時での発汗はもとより、寝ている間でもコップ1杯は失われる水分を補給する飲料として、マーケット志向ではなく、人間の体内・体液のしくみから考え商品化した。人間本来がもっている本質的な水分摂取への欲求(本能)を呼び起こした商品と言っていい。
当時としては、斬新な味(薄い)・ネーミング、デザイン。千点以上の試作品から選ばれ、スエットはSWEAT(汗)から、青空を想起させ飲んだ時の爽快感をデザインした。3千万本超の大規模なサンプリングを展開、初年度80億円、7年後には1000億円を突破した。体液に近いイオン(電解質)バランス・ナトリウム濃度・糖質濃度の組み合わせは発売以来不変で、スポーツ飲料に特化していないマーケティング戦略も幅広い支持を得ている。

ロングセラー商品⑦~明治乳業「エッセルスーパーカップ」

2009年04月05日 | ロングセラー商品
大容量、低価格、加えてプレミアムアイスクリームに劣らない美味しさが支持され、爆発的ヒットとなったのが94年発売の明治乳業「エッセルスーパーカップ超バニラ」である。単品で20億円売れればヒット商品といわれる中、翌年発売の「チョコマーブル」「ストロベリーマーブル」と合わせ2年で100億円を突破した。
当時のカップアイスは「バニラブルー」と「イタリアーノ」の2強時代。
「レディーボーデン」や「AYA」で培ってきた技術力を持つ同社は、この美味しさがもっと安い価格で実現できないだろうかと模索していた。バブルが終わり、”安くて美味しいものをたくさん食べたい”というニーズを的確に捉えて、「大容量で美味しい100円アイス」を開発コンセプトにしたのである。乳固形分が少なく植物性脂肪を使用するラクトアイス規格品だが、植物性脂肪13%、オーバンラン30に抑えることで後口の良さとプレミアムアイスクリーム並みの滑らかさを具現化した。
容量は通常カップアイスの約1.3倍の200ml、これまでにないボリュームが満足感を増幅した。さらに「スーパーカップ」のコンセプトを明確に伝えたのが新型容器である。主流であったメンコぶたから被せぶたにし、高級感、大容量を強力に訴求した。高コスト、安っぽいメンコぶたの見直しがヒットに結びついたと言っていい。開発コンセプトを明確に伝える3要素:ネーミング、デザイン、容器開発が訴求できた代表例である。

ロングセラー商品⑥~シマダヤ「流水麺」

2009年03月06日 | ロングセラー商品
”水を通すだけで食べられる”という簡便さが受け、大ヒットしたのが1988年発売のシマダヤ「流水麺」だ。
生麺は比較的簡便に、かつ主食に近い形で食べられてきたが、高温多湿な日本の夏では、例え生麺であっても鍋で数分間茹でることさえ敬遠されてきた。夏場は、1分強で茹で上がり、しかもさらっと食べられる細麺(乾麺)の素麺や冷麦が定番だった。
そこで生麺のトップメーカーの同社は、消費が落ち込む夏場に茹でることなくサッと水を通すだけで手軽に食べられる生麺を開発したのである。生麺は誰もが湯通しして食べるものという常識を覆し、夏場の調理方法のネガティブイメージを解決した。
うどんでありながら、素麺や冷麦に近いさらっとした喉越しを実現するとともに、適度にコシがある食感が、細麺では飽き足らない層にも支持を得たのである。商品コンセプトも秀逸だが、当時はまだ画期的だった真空ミキサーを開発して麺の熟成を高め、食感向上に新技術を注ぎ込んだこと。加えて、「流水麺」というネーミングが、流し素麺などの涼やかな食シーンを想起させるとともに、麺のシズル感を増幅させたこともロングヒットに結びついたと言っていい。顧客基点の発想と新技術、ネーミングが三位一体となってヒットした代表例である。

ロングセラー商品⑤~ニチレイ「アセロラドリンク」

2009年02月15日 | ロングセラー商品
サクランボほどの小さな果実「アセロラ」を世界で初めて食品に加工したニチレイが昭和61年、"赤い天然ビタミンC"入りのオシャレなヘルシードリンクとして発売した。
昭和60年にCIを導入し旧社名の日本冷蔵から社名変更。瞬く間にアセロラブームを巻き起こし、冷凍食品と冷蔵倉庫業の最大手企業だった同社の企業イメージを大きく向上させ躍進の原動力になった戦略商品で、新規事業や新商品を通して企業イメージ・ブランドロイヤリティーを飛躍的に高めた成功事例である。
カリブ海・西インド諸島原産のアセロラは、レモン28個分の天然ビタミンCを含むスーパーフルーツだったが、傷みやすく収穫後数時間で発酵してしまう難点があり、欧米で天然ビタミンC錠剤として利用されるに留まっていた。同社は冷凍技術の強みを生かし、収穫後、水洗いし4時間以内に凍結、輸入したのである。
”アセロラの天然ビタミンC入り”のキャッチコピーと新規性のある斬新な切り口、当時珍しかった若い女性層をコアターゲットに設定したこと、大規模な街頭試飲キャンペーンの実施、岡本綾子女子プロゴルファーのCM展開、CVS・キヨスクへのチャネル展開などの商品・マーケティング戦略が奏功し、発売後3年で100億円を売り上げた。
ヘルシーでお洒落なスポーツ&ビタミン補給ドリンクとして、年配の男性ゴルフファンをはじめとする幅広い男性層にも支持を得たことが大ヒットした要因である。

ロングセラー商品④~ハーゲンダッツ「グリーンティー」

2009年01月09日 | ロングセラー商品
スーパープレミアムアイスクリームの代名詞になっている「ハーゲンダッツ」。
1961年に米国・ニュージャージー州で産声を上げ、瞬く間にアイスクリーム好きの米国人に圧倒的な支持を得て、スーパープレミアムアイスクリーム市場を席巻した。
84年には日本に進出。これまでの"最需要期は夏場、ターゲットは子供主体の若年層。低価格、キャラクター商品が売れ筋"という固定概念を覆し、大人が味わえるこだわりのアイスクリームとして新たな需要層を創出した。
ブランドを確固たらしめたのが、日本独自の新商品として96年に発売した「グリーンティー」だ。それまで米国で先行発売された商品を順次日本に投入していたが、前年に開設したR&Dセンターにおいて、米国本社の技術陣とともに日本の顧客向け商品の開発に本格的に着手、嗜好を含めた市場リサーチを徹底的に行った。
例え海外の著名ブランドであっても日本の顧客の嗜好、ライフスタイル等を含めたリサーチが十分でないと成功はおぼつかない証左である。
北海道産ミルクを使用した高脂肪・低オーバーランの濃厚で滑らかな味わいのボディーに、石臼でひいたオリジナル「抹茶」の香りとほろ苦さが絶妙なハーモーニーを醸し出し、和の素材の持つ安心感・健康志向がすっきりとしたアフターテイストと相まって熟年者にも支持された。
オーバーラン約20%、氷結晶粒径39μという美味しさを裏付ける商品設計もリピーターに支持される所以だ。