新・ヒット商品の発想&開発方法

ロングセラー商品やヒット商品のアイデア発想と開発方法を探り、未来のヒット商品を生み出す。

ロングセラー商品⑯~カルビー「サッポロポテト つぶつぶベジタブル」

2011年07月07日 | ロングセラー商品
「じゃがいもを丸ごと使った、じゃがいもの味がする商品を作りたい」というカルビー創業者:松尾孝氏の熱き思いを具現化した商品が1972年発売の「サッポロポテト」である。
同社は1969年に「かっぱえびせん」を発売、生のえびを小麦生地に練り込んだ画期的スナックとして「やめられない。とまらない~。」のCMソングと相まって大ヒットした。そして、じゃがいもを使った初めての商品として発売されたのが「サッポロポテト」だ。当初の原料は、小麦粉とじゃがいもを使用していたが、81年に”食べる野菜ジュース”というキャッチフレーズで野菜を配合した。2010年には従来の6種の野菜(ほうれん草、人参、玉葱、トマト、かぼちゃ、モロヘイヤ)に、新たに3種の野菜(赤ピーマン、レッドビート、パセリ)を配合した。
「じゃがいもの味がする商品」というコンセプト通り、飽きのこないあっさりとした塩味とやさしい口溶けがじゃがいもの風味を際立たせた。同社の商品に共通するシンプルな味付けは強烈なインパクトは残さないが、やさしいお袋の味付けを彷彿とさせる記憶に残る美味しさなのだ。ここに世代を超えた多くの人に支持される理由が隠されている。
そして時代の健康志向をいち早く取り入れたのが野菜の配合だった。「かっぱえびせん」のえびの練り込みと同様に見た目にも野菜入りを実感できる配合は秀逸である。赤(赤ピーマン、レッドビート)、オレンジ(人参、赤ピーマン)、緑(ほうれんそう、パセリ)の野菜の顆粒(つぶつぶ)が健康感をさりげなく訴求する。また野菜の千切りを思わせる形状は食べやすく、乳幼児のスナックとしても安心して与えられる。
味覚の評価として「パンチがある、ない」という表現が使われ、安易に刺激を追い求めることが記憶に残ると思いがちだが、同商品は素材を生かすこと、視覚的にアピールすること、時代のトレンドに合わせることをさりげなく問いかけることの大切さを教えてくれている。