新・ヒット商品の発想&開発方法

ロングセラー商品やヒット商品のアイデア発想と開発方法を探り、未来のヒット商品を生み出す。

ヒット商品⑥~東洋水産「マルちゃん 正麺」

2012年12月10日 | ヒット商品
即席袋麺市場でおよそ40年間、不動の首位だった「サッポロ一番」(サンヨー食品)を抑え、今年首位に躍り出るのが生麺に近い食感を出した東洋水産「マルちゃん正麺」だ。
2011年11月の発売以来、当初見込みの2倍の2億食、200億円を売り上げる大ヒットとなった。
国内の即席袋麺市場は軽食や保存食として一定の市場はあるものの、89年にカップ麺に逆転された後は縮小が進み、今やカップ麺とは2倍以上の差となっている。「サッポロ一番」、「チキンラーメン」(日清食品)、「明星チャルメラ」(明星食品)などの超ロングセラー商品に加え、大手小売りのPB商品や中小メーカー商品などがひしめき、カップ麺とともに特売目玉商品として常に消耗戦を繰り広げている。
ヒットの主因は「これぞ正しい麺、理想のラーメンの完成形」という麺へのこだわりをシンプルかつ分かりやすく伝えたネーミング、5年の開発期間を要した「生麺うまいまま製法」(特許出願中)と名付けた生麺を彷彿とさせる食感の実現だ。割高の価格設定だが、「しょせん即席袋麺だから」という消費者の袋麺に持つネガティブイメージを見事に覆し、想像を上回る即席麺を実現したことだろう。特筆すべきはネーミングの秀逸さだ。麺へのこだわりが強いほどそのことを訴求するために華美なネーミングにしてしまいがちだ。「正麺」とあえて抑えた表現にしたことがより消費者の注目を惹いたと言っていい。
5年の開発期間を要したという麺は、切り出した生の麺をそのまま熱風乾燥した。通常の製造工程にある蒸し工程を省くことでより生麺に近い食感・風味を可能にした。さらに調理時や食べるときにも消費者視点の心憎い一工夫を加えている。鍋に入れやすいように丸い形にしたこと、乾燥する前に一度麺をほぐすことで茹でた時のほぐれ易さを向上し調理時の利便性向上を図ったことだ。加えて女性や子供、高齢者にも食べやすい長さ(25~30cm)に麺をカットすることでより麺の美味しさを実感できるように配慮した。
ともすれば不毛の商品開発になりかねない即席袋麺市場の中で、袋麺の理想形を追い求めた開発者の熱い思いを見事に結実させた商品である。