【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【麺屋の亭主】

2009年11月20日 | オムコイ便り
 11月15日、日曜日。

 昨日と同様、5時半に目が覚めた。

 どうやら、意識下で店のことが気になっているらしい。

 断水していた水道の水が出たので、あわてて店まで走り、洗い物用の水をドラム缶に貯める。

 家に戻り、鶏の唐揚げを作った。

 総菜として、売るためである。

 というのは真っ赤な嘘で(私にはそんな腕はない)、食うときに食っておかないと朝飯にありつけないからである。

 なにせ、ラーはコーヒー一杯だけで仕込みに突入するので、それに巻き込まれると腹が減って仕方がない。

 例によってラーが先発し、私は米が炊けるのを待ってそそくさと朝飯を済ませた。

          *

 今日は、ニンニク搗きの仕込みがないので楽である。

 と思いきや、裏庭にしつらえた洗い場脇の土が崩れて、ドラム缶が傾きかけている。

 あたりを点検してみると、店を建てる前の整地(土固め)がいい加減だったようで、地盤が沈下して土台の部分が5センチ近く露出しているではないか。

 やむなく、崩れた部分に石やコンクリートのかけらを敷き、その上に土をかけてガシガシと固めていった。

 店が完成してからひと月も経っていないというのに、これでは先が思いやられて仕方ない。

 気になっていたナマズも、とうとう5尾が死んでしまった。

 いつも10キロは買い取ってくれるオボートー(地区行政事務所)のナマズ池が満杯になって、すっかり当てが外れたのである。

 だから、あれほど「20キロも売り切る自信があるのか?」と念押ししたのに・・・。

 これは早いうちに、山奥に行商に出なければなるまい。

 これまた、先が思いやられる話ではある。

      *

 ひと休みして、予想よりも早く売り切れてしまった麺、および氷と水の買い出しに町に出た。

 バイクだと、水タンクを担いでくれる助っ人が見つかるまで待たねばならないが、クルマだとひとりで動けるので非常に楽である。

 10時過ぎに、すべての仕込みと準備が終わった。

 今日は、斜め前にある教会の礼拝日で、朝早くからたくさんの人が正装のカレン服を来て店の前を行き来している。

 「クッティアオの店、始めたよ!」

 ラーが声をかけるが、誰もが微笑んだきりで通り過ぎてしまう。

 「誰も来ないな」

 「だって、教会では昼ご飯がただで食べられるから」

 「・・・」

 「でも、今日はいい宣伝になるよ」

  教会も、罪なことをしてくれるものである。

  子供もいっぱいいるから、彼らの目を引き寄せる“何か”を考えねばなるまい。

  だが、場所がいいのか、やはり客足は絶えない。

  中には、雑貨屋でビールを飲みながら、お女将を走らせてクッティアオを注文する客もいる。

 「ウチにもビールはあるのに、なんでここで飲まないんだ?」

 と言いたくなるが、まあ、ここは共存共栄が望ましい。

 ラーの友人関係は、ほとんど焼酎派である。

 早く、山奥に焼酎を仕入れに行かずばなるまい。

 そんなことを考えていたら、「教会の辛い料理は苦手だ」という若い女の子がふたり店に入ってきた。

 白い足首までのワンピース・カレン服をまとった女の子が、垂れる髪を気にしながらクッティアオをすする姿は、なかなか風情がある。

        *

 仕込みが終わると、基本的にお役御免である。

 ラーに言わせると、私の目の力は強すぎて、微笑まないと怒っているように見えるという。

 たぶん、カレン族の面々は照れ屋で目をそらす人が多いのに、私は日本流で人の目をまっすぐに見つめるからだろう。

 それに、一日じゅう意味もなく微笑んでいるわけにもいかない。

 そんな私が店の中でうろうろしていると、客足に影響する。

 そこで、小部屋にこもってパソコンに向かったり(相変わらずネットはつばがらない)、裏庭の安楽椅子(家主の女将がプレゼントしてくれた)に座って本を読んだり。

 もちろん、ラーと客の話し声は賑やかだが、狭い家の中ほどうるさくはない。

 “髪結いの亭主”ほど気楽な身分ではないが、“麺屋の亭主”としての日常も、さほど悪くない。

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