【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【腫れた咽喉にはツルツル麺】

2009年10月07日 | オムコイ便り
 
 咽喉の腫れと痛みがとれないので、念のために病院に出かけた。

 昨日、午後4時過ぎのことである。

 なぜ4時過ぎかというと、閉院まぎわのこの時間は山奥からやってきた患者たちが診察を終えて村に戻ってしまうので、いつもガラガラなのである。

 待合室には、蜂にでも刺されたのか、右目を大きく腫らした女性と付添いの夫のみ。

 窓口でパスポートを提示し、問診票を受け取る。

 まずは、いつものように体重と血圧測定だ。

 今日は血圧が標準値を示したので、ひと安心。

 続いて、黄色のお揃いのポロシャツを着たスタッフに事前問診を受ける。

「今日はどうしましたか?」
 
 扁桃腺というタイ語を思い出せず、とりあえず「ジェップコォー(咽喉が痛い)、スィデーン(赤くなってる)」とジェスチャー交じりで伝える。

「いつから痛いのか?」

「昨夜の9時頃から」

「吐き気はあるか?」

「ない」

「ご飯は食べられるか?」

「大いに食べられる」

 こうした問答を、スタッフは逐一パソコンに入力し、体重と血圧値を記入した問診票に書き込んでいく。

 なんか、もう、医者に喋ることがなくなってしまった。

 すぐに呼ばれて受診室に入ると、案の定、顔なじみのポニーテール医師(若い男性である)はスタッフの書き込みを見ながら、私には「咽喉が痛い?」と尋ねただけで、懐中電灯で咽喉の奥を照らした。

 次ぎに、聴診器で胸を探る。

「カイワッ(風邪)ですね」

「でも、風邪らしい症状は何もありません。たぶん、扁桃腺が腫れているのだと思います」

「それに、咽喉が赤く腫れています。それが、風邪の症状です」

「・・・」
 
 医師はパソコンに向かいながら、

「3種類の薬を出します。じゃあ、この紙を7番窓口に出してください。お大事に」

 何気なく体温の欄を見ると、「36.6℃」と記入されている。

 あれ?

 確か、熱は計らなかったよなあ。

 そういえば、あのおばさん、血圧を計り終えた途端そそくさと帰り支度を始めたから、きっと面倒くさくなって、体温測定を省略した上に適当に書き込んじゃったんだ・・・。

 まあ、自分でも熱がないのは分かっているから問題はないが、まったく油断も隙もありゃしない。

 今日の診療費は、薬込みで116バーツ。

 風邪薬、抗生物質、漢方風の舐め薬、そして万能(?)鎮痛剤パラセタモール。

 家に戻ると、ラーがニンニク味の効いた豚肉・イカ入り特製カォトム(おかゆ)を作ってくれた。

「チェンマイは暑いし、オムコイは寒い。体の調子が、すっかり狂っちゃったんだね」

 これを大椀に1杯半ほど平らげ、3種の薬を飲む。

 風邪をひいたくらいでは、めったに食欲の落ちない頑健な胃袋がありがたい。

 しかし、薬のせいか頭がぼんやりして眠くなったので、9時半頃にはふとんに潜り込んだ。

      *

 今朝6時半に目覚めると、突然くしゃみが出て鼻水が止まらなくなった。

 寝ているときにはなんの前触れもなく、いきなり風邪の諸症状の出現である。

 ただ、頭痛や熱はない。

 とにかく、昨日の医師の診断は、きわめて正しかったことになる。

 薬草茶でカラカラに乾いた咽喉を潤し、湯気を咽喉の奥に送り込む。

「クンター、朝ご飯何食べる?」

 食欲はあるが、米よりも麺のほうが腫れた咽喉には良さそうだ。

「ラーッナーできるか?」

「うん、大丈夫だよ。野菜たっぷり入れるね」

 かくして、今朝の朝飯は咽喉をつるりと滑る“あんかけ平麺”と相成った。

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