「ああ、いい薫りがしますねえ」
最近、ゲストを母屋玄関脇のテーブルに案内すると必ずそう言われる。
むろん、番頭さんの体臭の話ではない。
実は、番頭さん、もう一ヶ月あまりも鼻風邪が長引いて、ほとんど匂いを感じることができない。
従って、食べ物の味も半減だ。
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女将のラーに訊けば、薫りのもとは庭に咲いたドークマリだという。
いわゆる、ジャスミンである。
花を近づけてみると、確かにジャスミンのようないい薫りがする。
だが、ソンクラン(タイ正月)の時などに水掛け用の聖水に浮かべたり、女性たちが神に飾る大振りのジャスミンとは違い、わが家のそれは花びらが小さく直径2センチくらいだ。
しかも、花弁の数が多く、それが二重構造になっている。
まあ、無粋な番頭さんがこんなことを言っても仕方がないのだが、ジャスミンはジャスミンでも別の種類なのかもしれない。
そして、もしも日本にもこの花があれば、その花びらの形状にふさわしい名前が付けられているような気がする(まあ、ネットで調べればすぐに答えは出てくるのだろうが、それじゃあ面白くない)。
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そこで、いろいろ想像してみたのだが、1週間ほど前から同居するようになった義母の深夜の独言で完全寝不足な頭には、なんにも浮かんでこないのであった。
思いついたのは、可憐という日本語だけである。
だが、「可憐ジャスミン」なんてネーミングはあり得ないだろう。
そこで、ふと思いついた。
「可憐」は「カレン」に通じる。
そして、「カレンジャスミン」は、タイ語に直せばドークマリ・ガリアンである。
うーん、これはいいぞお。
というわけで、無粋かつ面倒くさがりの番頭さん、蘭と同様にまたまた勝手に名前を付けちゃった。
ああ、眠たいなあ。
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