草原の木の下で、涼風を受けながら生まれたばかりの仔牛を眺めている。
ときおり鼻孔に流れ込む牛糞の薫りも、また乙なものである。
仔牛から目を離さず、ラーが手渡してくれたサツマ芋の皮のようなものをかじると、妙に懐かしい味がした。
「ん、なんだこれ?」
ぬか漬けのようでもあり、みそ漬けのようでもあり・・・。
「マンゴーだよ」
さっきからごそごそやっていたのは、おやつの準備だったのだ。
それにしても、このマンゴー、色が変だ。
サツマ芋を思わせる茶色系なのである。
マンゴーはグリーンか、熟したあとの黄色と相場は決まっている。
そして、マンゴーの収穫期はとっくに終わっているのだ。
「あのね、これは友だちがつくったマンゴーの保存食。あたしは作ったことがないけれど、収穫した緑色のマンゴーを塩と砂糖を入れたお湯につけて長い間ぐつぐつ煮るんだって」
「ふーん、それにしてはいい味だなあ。まるで、日本の漬物みたいだ」
皮ごとそいで、もうひとくち。
今度は、砂糖と塩と赤唐辛子をまぶしたものを少しつけてみる。
うーん、これは茶請けに最高だ。
酒のつまみにも、いい。
“ぬか漬けマンゴー”として売り出せば、ひと儲けできるかもしれない。
馬鹿なことを考えながら、ちょっと固めの皮を捨てると、ラーに叱られた。
「食べないんなら、あたしにちょうだい。そこが一番おいしいんだから」
「へいへい、お代官様」
☆応援クリックを、よろしく。