夜明け後に眺めるイサーンの田舎の風景は、オムコイやチェンマイよりも“南洋色”が濃いような気がした。
田んぼでは、すでに田起こしが始まっている。
ウドーンターニーに着いたのは、7時40分頃だった。
客待ちをしている白いソンテオに声をかけると、ボーコーソーマイのバス発着所までふたりで160バーツだという。
これならトゥクトゥクと変わりないが、なにせ時間がない。
150バーツに値切って飛び乗り発着所に向かったのだが、ちょうど8時発のビエンチャン行き国際バスが出たばかりのところだった。
次のバスは、10時半だという。
やれやれ。
*
ノーンカーイ行きのバス時刻を確かめると、8時半発。
とりあえず、これでノーンカイまで行くしかないだろう。
その30分間を利用して、停留所の中にある警官派出所に向かった。
昨日作ってもらった「IDカード所持証明書」でビエンチャンに入れるものかどうか、確かめるためである。
「ああ、これならラオスに3日間は滞在できます。何の問題もありません」
お墨付きをもらいホッとしながら乗り場に行くと、次のノーンカイ行きは11時しかないという。
さっき「8時半発だ」と言った係員を捜していると、緑色のユニフォームを来た男たちが「ノンカーイ行きなら、別の場所から何本も出てるよ。今からなら、8時50分発に間に合う。ふたりで60バーツ」と声をかけてきた。
バイクの後ろに荷台のような座席を着けた原始的トゥクトゥクに乗り込んだが、これが全然スピードが出ないので、チェンマイのバリバリ爆走に慣れたこちらはイライラする。
だが、市場のような場所に横付けされたノーンカイ行きのおんぼろバスに何とか間に合うことができた。
*
短い間隔の停留所で何度も何度も停車するローカルバスに揺られているうちに、猛烈な眠気が襲ってきた。
昨夜は出発直後からリクライニングシートを倒して眠りについたのだが、やはりぐっすりと眠れるものではない。
ふたりとも眠り込んでしまい、バスが国境行きのソンテオの待機するバス停を通り過ぎたところでやっと目が覚めた。
あわてて停めてもらうと、そこにトゥクトゥクがたむろしている。
まとわりつく3人の運転手と値段を交渉していると、一緒にバスを降りたこざっぱりとした身なりの男が、しきりにラーに話しかけ始めた。
男は国境への通り道にあるホテルで働いており、パスポートがないならホテルで「国境パス」を作った方が安心だと掻き口説いているらしい。
「国境パス?だって、さっきの警官は証明書があれば問題ないって言ったんだろう?」
「うん。でも、この人は国境パスがないとラオスで何か問題が起きたときに大変なことになるって言ってるんだよ」
「おかしいなあ。もしも国境パスが必要なのなら、それは出国審査所で発行されるんじゃないのか」
「えーとね、国境パスの用紙は国境には置いてないんだって」
なんだか、どうも怪しい。
だが、私にも確信はない。
それに、国境でまたドタバタするのはご免である。
「それで、その国境パスを作るのにいくらかかるんだ?」
「100バーツだって」
それなら、まあいいか。
男と一緒にトゥクトゥクに乗ってホテルに向かい、見本を見せてもらうといかにもそれらしい造りだ。
ラーはすでに彼らを信じ込んで、女性オーナーや待たせてある運転手とバカ話をしては笑い合っている、
20分待って、出来上がった。
「はい、お待たせしました」
妙に馴れ馴れしい感じの女性オーナーが、500バーツに350バーツの釣りを返してきた。
「おいおい、その男は100バーツだって言ったはずだよ」
「え、そうなの?」
男をにらみつけて、50バーツを追加した。
*
さっきのトゥクトゥクに乗り込んで、すぐに国境に着いた。
料金は、150バーツだという。
「それは高い。100バーツでいいだろう?」
「そんな。あんなに長く待ったんだから」
見たところ、さっきのホテルとこの運転手は明らかにつるんでいる。
だが、寝不足もあって、もう面倒になってきた。
国際バスに間に合っていれば、ふたりで160バーツ。
間に合わなかったせいで、トゥクトゥク代60バーツ、バス代70バーツ、「国境パス」代100バーツ、トゥクトゥク代150バーツ。
うーむ、予想外の出費であった。
*
出国審査の列に並ぶ。
「あ、あたしパスポート持っていないよ、どうしよう?」
パスポートチェックの表示を見たラーが、ひるんだような顔をする。
「だから、わざわざ国境パスを作ったんだろう?余計な心配しないで、堂々と胸を張ってそれを見せればいいんだよ」
すんなり、通過した。
やれやれ。
今日は、出国する外国人もそれほど多くない。
15バーツのチケットを買って、大型バスで友好橋を渡る。
メコン川中央の国境目印を手で示すと、感慨深そうな顔でメコンの流れを見つめている。
外国といえば、ミャンマーのメーサイにしか行ったことがないのだから、無理はないのかもしれない。
なにしろ、あの国境の川はどぶ川みたいなもんだからなあ。
*
入国審査所で先に書類を提出させると、やけに長く話し込んでいる。
「何を訊かれたんだ?」
「あたしがカレン族だって言ったら、審査官が“俺の昔のガールフレンドもカレン族だった”って言い出したんで、それであれこれ話が弾んだの」
「・・・」
見ると、さっき作ったばかりの「国境パス」にタイの出国スタンプと3日間のラオス滞在許可スタンプが押されている。
うーん、やっぱりこれは必要な書類だったのだろうか。
最後に、ラーが35バーツの入国料を支払って、無事ラオスへの入国を果たした。
地元の人たちが乗り来んでいる小さなバスに乗ると、30分ほどでタラート・サオに着いた(バス代は、ひとり20バーツ)。
ワッと取り囲んだトゥクトゥク運転手の中から一番人の良さそうな顔をした男を選んで、目当ての宿の名前を告げた。
今日は、ポケットにNY時代に使い残した30ドル紙幣がある。
初めての本格的(?)海外旅行に出たラーのために、メコン川に面したエアコン付きの部屋を奢ることにしよう。
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確かに、ビアラオは私の好きな岩手の某地ビールを思わせる美味さです。従って、まずは渇いた喉にそのうまさをプハーッと染み込ませたあとで、「あ、撮るの忘れてた」とほんのついでに撮った写真ですから、不味そうに見えるのは当たり前かと。ひと足お先に、ごちそうさまでした。
なんとしても体感せねば....探せば近所のラオ料理屋でもあるかなぁ.ビエンチャンまで行けないからなぁ.
深みのある甘みとコクがあって、地ビールのような味わいです。ノーンカーイから対岸のラオを眺めていると、すでにビアラオが恋しいです。ぜひ、お試しあれ。