【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【地下鉄に翻弄された夜】

2005年10月17日 | ニューヨーク再び
 久々に青空が顔を覗かせたというのに、昨日(15日土曜日)はひどい目にあってしまった。

 映画『初恋のきた道』や『英雄』で知られるチャン イーモウ監督の『紅いランタンを掲げよ!』舞踊版のチケットが、地下鉄の遅れでフイになったのである。

 会場は、ニューヨーク南端のブルックリンにある「BAM(ブルックリン アカデミー オブ ミュージック)」。マンハッタンとは違って土地勘もなく、地下鉄も入り組んでいるため、やや早めにアパートを出たまではよかった。

 時間にゆとりがあるので、まずセントラルパークを歩くことにした。
 歩道には枯れ葉やどんぐりが敷き詰められ、すっかり秋色が濃い。
 次第に風が吹きつのり、超高速撮影したフィルムのように暗雲が空を覆い始めたが、西側にかすかに残された青空の端で夕陽が黄金色にきらめく様は荘厳なまでに美しかった。

 思ったより早くセントラルパークの南端に出たので、腹ごしらえをすることにした。
 56丁目の日本料理屋「伊勢」に行くと、気仙沼から生秋刀魚が届いているという。

 値段は張るが、秋刀魚の塩焼きにタコ酢、焼き茄子を添え、芋焼酎「薩摩白波」のグラスを傾けつつ秋の味覚を堪能した。

 ここまでは、本当に順調だったのである。

 だが、57丁目で地下鉄に乗り、タイムズスクエアでブルックリン行きの地下鉄に乗り換えようとしてから悪夢が始まった。
 目的のアトランティックアベニューに停まる2番または3番電車が、待てど暮らせどやってこないのである。
 
 ホームには次第に人があふれ出し、線路に身を乗り出して電車の姿を確認しようとする人の姿が目立ち始めた。
 つまり、イライラしているのは俺だけではなかったのだが、東京のように遅れを報じるアナウンスはない。

 実は、秋刀魚の味に惹かれて焼酎をお代りしたため、少しばかり時間が気になり始めていた。
 やむなく、隣りのホームに移って1番線に乗り込み、少し先の駅で乗り換えようと目論んだ。

 だが、2番線と3番線が停まるはずのペンステーションでも14丁目駅でも、いっこうに電車がやってこないのだ。
 手持ちの地下鉄マップやホーム備え付け地図を見ても、判断には間違いがなかった、と思う。

 そうこうするうちに、なんと7時半の開演時間が来てしまい、ここで2つの選択肢に迫られた。

 1つ目は、すぐにリンカーンセンターまで引き返し、当日券を買ってMIDORIのヴァイオリン演奏を聴く作戦に賭ける。
 2つ目は、『レイズ レッドランタン』の2幕目に間に合うようタイムズスクエアまで引き返し、BかQの電車に乗る。

 チケットはすでに電話で予約し、クレジットカードでの支払いを済ませているのでキャンセル払い戻しはできない。
 オーケストラから7列目の70ドルの席をみすみす捨てるのは、あまりにも惜しい。

 「ええい、ままよ!このまま泣き寝入りなんかできるか!」

 階段をかけのぼり、アップタウン(のぼり)行きの1号線に飛び乗って、Qの表示に突進した。

 ところがどっこい、このQが、また来ない。
 待っても、待ってもこない。
 
 まるで、Judyみたいだ。

 おっと、思わず話がそれたが、結論を言えば、待ち詫びた電車は二幕目が開幕する8時半になってもついに姿を現さなかった。

 途中で、さらに横移動して4番線か5番線に飛び乗る、という3番目の選択肢にも思い及んだのだが、焼酎の酔いもあって
あえなく力つきた次第だ。

 いやはや。
 タイムズスクエア駅のメイン通路に戻ると、アフリカ系のパフォーマーが大音量でドラム演奏を繰り広げている。
 狭い地下道で音が反響し、耳をつんざくばかりなのだが、次第に慣れてくると自然に身体が心地よく揺れ始める。

 東京あたりだと、すぐに「うるさい」と抗議するオヤジがいて、制服の駅員やおまわりがやってくるところだ。

 ついでに、公衆トイレの列にも並んでみたが、個室が3つあるだけで、セキュリティのために係員がいちいちドアロックを解除するものだから、待ち時間が長くて仕方がない。

 この大雑把さ、いい加減さをよしとする以上、待てど暮らせどやってこない地下鉄もまた、よしとしなければなるまい。

 しかし、やっぱり、70ドルは惜しいなあ。
 やい、ブルームバーグ!
 馬鹿な石原都知事と握手した責任とって、金返せ、この野郎!
 

 




 
 

 

 
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