【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【よう分からん症候群】

2011年09月03日 | オムコイ便り

「日本に行ってみたいんだけど、フクシマ以外のどこがお勧め?」

 旅行好きの若いタイ人女性に、こう訊かれた。

 原発事故の様子がTVニュースで繰り返し放映されたためか、タイでもフクシマはつとに有名だ。

 複雑な思いで、言葉がすぐに出てこない。

「名古屋と福岡には行ったことがあるから、今度は大阪か東京、それとも北海道にしようかな?」

 東京にはしばらく戻っていないし、東日本の各地ではいまだ地震が頻発しているらしい。

 そういえば、つい先頃、北海道でも地震があったのではあるまいか。

 6年ほど前に訪れた冬の知床半島の雄大な景観が頭に浮かんだが、やはり言葉が出てこない。

「どうしたの?大震災や津波の影響が、まだまだ深刻だってこと?」

 そう訊かれても、私はネットニュース以上のことは知らず、日本の現状を実感することはできないのであるからして、無責任なことはいえない。

「よくは分からんけど、とりあえず大阪から西の方が無難ではあるまいか」

 そんな優等生のような答えをもごもご呟こうとして、今朝方四国に激しい台風が上陸し、死者も出たというニュースを思い出した。

 またまた、言葉を失う。

     *

 呆れた女性が、話題を換えた。

「どうして日本では、わずか1年くらいの間に首相がコロコロ変わっちゃうの?しかも、こんなに大変な時期に」

 相当の日本ウオッチャーらしい。

 これまた、すぐには言葉が出てこない。

「タイではこの間の総選挙で、史上初の女性首相が誕生したわ。女性としてもとても嬉しいし、タイが変わるような気分がしてワクワクしている。でも、新しい首相が誕生しても、日本のテレビに映る人たちはなんだか浮かない顔をしているわね。よく分からないなあ」

 私にも、よく分からない。

 ここでひと踏ん張りして、日本の政治状況について説明するべきところなのだろうが、あいにく昨夜は寝不足で、頭が朦朧としている。

 また、ここ数年日本を離れていることもあって、実感としての知識も情報もない。

 これまた、無責任なことは言えない。

 最後まで失語症のまま、この知的な女性との会話を打ち切らざるを得なかった。

      *

 海外に出た日本人は、一人ひとりが日本の代表という気構えを持たねばならない。

 そういう観点からいえば、完全な失格である。

 だが、心に正直であれという意味では、今日の私の沈黙にも一理はあるだろう。

 よく分からんものは分からんのだから、仕方がない。

 少なくとも、よそから仕入れた知識や情報を寄せ集めて日本に関心を持つ女性に対してそれらしい誤摩化しを言うよりも、今日のところは沈黙に徹しておこう。

 そこから、自分で考えるという行為が始まるのではあるまいか。

 何よりもかによりも、今日は眠くて仕方がないのである。

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5 コメント

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Unknown (ねこ)
2011-09-03 19:16:50
日本国の現状について一番理解していないのは、
日本生まれ、日本育ちの純正日本人たち。

日本人が有する善の精神は、度を過ぎており、
その逸脱した善は、善を通り越して、悪にまで施かされる程である。

その結果、日本人が有する善は、悪の増長と相成っているのが現状。

類稀なる善の精神を有しながら、その善を善の繁栄と成し得ない日本民族は、
むしろ悪を繁栄させる悪の手先である。

日本人は、この世に存在してはならない悪なのかも知れない。
滅びるべき民族なのかも知れない。
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こんにちは (deserteur )
2011-09-05 04:55:36
タイ人の方はお気楽でいいですね。
女性首相ったって、亡命中の疑獄元首相の傀儡なのに・・・
政商華僑の派閥で権力取り合ってるだけなのに、ワクワクもへったくれもないと思うんですが。

カレン人にしてみれば、またタイ側からの弾圧も強まってしまうと戦々恐々だっちゅうのにですね。
タイ族には知ったこっちゃないでしょうけれど。
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うーん、難しい。 (クンター)
2011-09-05 15:04:25
ねこさん

 最後の2行は、とりわけ厳しいですねえ。うーん、どうなんでしょう。これまた、私にはよく分かりません。

    *

deserteur さん

 以前のコメントによると、確かタイカレンとお付き合いがあるということでしたね。わが村では「差別」はともかく、「弾圧」という受け取り方は聞いたことがありません。何か見聞されたのでしょうか?

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すいません (deserteur )
2011-09-07 05:35:18
どうも不相応なコメントをしてすいませんでした。
削除していただきたいくらいです。
貴兄のブログにケチがついてしまいます。

メーホンソンやターク県のカレン村は川むこうと強く繋がっておりますので・・・
タクシンの経済推進政策には少数民族は邪魔でしかないんでしょうね。
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参照記事 (クンター)
2011-09-07 16:45:50
deserteurさん

 場所や環境によって、いろんな感情があるのでしょうから、どうかお気になさらずに。私はオムコイのことしか知りませんが、タクシン氏に関する村の衆の受け止め方については、6月8日付け【勝負はムエタイのリングで】をご参照ください。
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