【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【芥子畑摘発に思う】

2011年01月13日 | オムコイ便り

 年明けから暖かい日が続いていたのが、今朝は珍しく冷え込んだ。

 朝7時の気温は、7℃である。

 炉端で火を熾しながら、「さて、今朝は何を喰おうか」と考える。

 すると、ラーがすかさず「若鶏が一羽弱ってきたから寝籠に入れてあるよ」という。

 ・・・またか。

 数日前からひと段落していたというのに、厄介な流行り病はまだ終息しないようだ。

 すかさず締めて、鶏鍋にした。

 こうも立て続けに鶏の首を締めていると、なんだか自分が冷酷非情な“殺鶏鬼”になったような気分である。

      *

 朝飯を済ませるととりあえず郡役所まで走るのが、このところの日課だ。

 年末からネットの接続状態が悪く、店の裏庭からはほとんどつながらくなったのである。

 いつも実用的な情報を参考にさせてもらっているチェンマイブログ『新明天庵だより』(ブックマーク参照)をのぞくと、オムコイ地区における「芥子畑摘発」のニュースが転載されていた。

 なぜか、逮捕の“記念写真”まで付いている。

 ぷっくり膨らんだ芥子坊主を前景において、芥子畑にたたずみ肩を寄せ合う制服の警備隊員と前手錠をかけられた作業着姿の男のツーショット。

 こうした摘発の際には銃撃戦に発展することもしばしばなのだから、不謹慎な話ではあるのだけれど、なんとなく微笑ましくのどかな光景に見えてくるのはどうしたわけだろう。

       *

 違法芥子畑が見つかったパプーンドン村というのは、わが村からさほど遠くはないらしい。

 物売りの仕事で、時おり足を運んでいる村の衆もいると聞く。

 わが村の上空には阿片畑摘発用のヘリコプターがしばしば飛んでくるし、山奥に茸採りに行けば、山頂からそれらしい伐採地の遠景も目に入る。

 従って、阿片畑摘発のニュースはさほど珍しいことではない。

 私がこの写真に目を引かれたのは、ラーが16歳のとき、この摘発・刈り取り・焼き払いに従事する国境警備隊に自ら志願して入隊したという話を聞いていたからなのである。

       *

 当時、入隊の際の誓約書には「任務中に命を落としても、規定外の一切の保障を求めない」という一文があったという。

 そして、万が一の際の遺品や支給金の受取人として、寡婦となった母親の名前を唇を噛み締めながら書き込んだ。

 同僚の中には、誤って地雷を踏み命を落とした者もいた。

 同時入隊した女性隊員たちは、厳しい訓練に耐えきれず次々に隊を抜けて行った。

 言うまでもなく、苛烈な任務であったわけだが、奥深い山の中で同僚たちと過ごした若い日々は、使命感に燃えた楽しいものでもあったという。

 残念ながら、男まさりの娘の身を案じる母の強い懇願で一年後に除隊、無理矢理結婚させられることになり、ラーのつかの間の自立と青春は終わった。

      *

「あ、あたしの頃と同じだ!」

 その写真をラーに見せると、さすがに感慨深そうである。

「でも、制服の色が違うね。これは緑色だから、たぶん警察かな。あたしたちの制服は黒だったから。ああ、また山奥で軍の仕事がしたいなあ」

「それじゃあ、まずは体力テストだ。腕立て伏せ、始め!」

「よしきた!」

 な、なんだあ?

 たった5回でダウンかあ?

「女は男と違って、出産で体力が落ちてしまうんだよ!ああ、あたし16歳のときにクンターに会いたかったなあ。クンターだって、白髪もなかったでしょ。ねえねえ、なんで、もっと早くタイにやって来なかったの?」


「・・・」

*母になり、四十路を過ぎても心は16歳のままの誰かさんであった。芥子畑摘発には、犬かきでも通用したらしい。

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3 コメント

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教えてください (yoritomo)
2011-01-13 19:33:00
>芥子畑摘発には、犬かきでも通用したらしい。
普段は一回読めば理解出来ているのですが上記は3回読んでも意味不明となりました。
その原因は正月から続いているアルコール漬の脳のせいかもしれませんが。。
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阿片ーモルヒネーヘロイン (しんちゃん)
2011-01-13 22:34:39
未確認情報ですが、西の方の国の自爆テロの実行犯の何割かがヘロインのヤクチュウで、短期間に強烈な禁断症状でテロリストの思うがままらしい。こればっかしは元から絶たないとで、タイ政府の強行手段に賛成。摘発はオラでは無理だけど、芥子坊主を見つけるだけならオラの犬かき(一寸出来る)知識でも大丈夫だぞ。まだ,素面だぞ。さぁ、飲むぞ。ワッハハ
返信する
犬かき (クンター)
2011-01-14 11:56:49
yoritomoさん

 舌足らずなキャプションで、失礼しました。写真が見にくいと思ったので、犬かきで暴れているのが嫁だと分かりるように適当に付け加えたものですから。決して、アルコールのせいではないと思います。

    *

しんちゃん

 タクシン政権時代には、わが村での周辺でも売人が射殺されるほどの苛烈な取り締まりが行われたそうで、私が村で暮らし始めた当初もしばしば警備隊が更正施設(お寺)に常習者を収容していましたが、今は末端の摘発はかなり甘くなっています。芥子畑摘発も、なにせ山奥なのでいたちごっこの様相ですが、「犬かき」の緩さでもしつこく源流を叩き続けるしかないのでしょうね。
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