隣家の太っちょ氏が、家の普請を始めた。
古い住居はそのままに、東側にあったバナナ畑を更地にして別棟をこしらえるのだという。
「あれ、材木を備蓄している様子はなかったのになあ」
首をひねっていると、そのうちに大量の砂利とセメントが運ばれ、昨日は村の衆たちが基礎の穴掘りを始めている。
昼飯に家に戻ると、なんと、その穴に鉄筋が埋め込まれているではないか。
あちゃーっ。
流行りのブロック積み住宅か。
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このところ、この「無粋」な住宅が村に浸透し始めている。
私が借りている店もそうだし、近所に建ったアパートと管理棟もそうだ。
わが家の斜め向かいにも、すでにバンコク帰りが「瀟洒」な一戸建てを構えている。
それが隣りにもとなると、どうにも落ち着かない。
わが家を境目にして、川に至る傾斜地にはわが親戚連中が昔ながらのカレン式高床住居群を構成してはいるものの、これでまた村の風景が大きく変わることになる。
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まあ、自然保護名目の伐採禁止令のせいで材木がなかなか手に入らないから、新式住居を建てる方が確かに手早くはある。
テレビが入り、冷蔵庫が入り、洗濯機が入りと村の暮らしも変わりつつあるのだから、それに見合った造りに目が行くのも仕方がないのだろう。
現に、2年前から備蓄を始めたわが家の建替え用材木はいまだに不十分だし、今まで材木代に費やした費用で、この新式住居はまかなえるのだという。
おかげで、わが家では、洗濯機も温水シャワーもない昔ながらの「快適」な村の暮らしが楽しめているわけだが、私もラーもカレン式住居が好きなのだから、今さら日和るわけにはいかないのである。
「かくなる上は、わが家が防波堤となって、この新式住居の侵攻を食い止めるしかない!」
今朝はまなじりを決して、洗濯機や温水シャワーに色気を示す家族に“伝統保持”の檄を飛ばした次第であるが、このまま材木が入手できなければ、丸太の柱が蟻に喰われてボロボロになったわが家は、新式住居の高らかな槌音に揺さぶられて倒壊しかねない。
ここは、大和魂とカレン魂をひとつに合わせての正念場であろう。
武士は喰わねど、“高”楊枝。
吾れ、にわかカレンなれど、“高”床式住居と心中だい!
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これは、「セブン」にも「新式住居」にも屈すべし、というアドバイスなのでしょうか。いーや、なんの、なんの。
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ishiさん
いーや、なんの、なんの(笑)。