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夜中に激しい雨が降る日が続いて、キノコの噂がばったり途絶えていた。
ところが、数日前からまたあちこちで「大猟だ」という声が聞こえ始めた。
こうなると、女将のラーがソワソワと落ち着かなくなる。
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連泊ゲストをバス停まで送って戻ってくると、休む間もなくバイクで出撃だ。
小雨混じりの怪しい雲行きだが、「今日はヘットデーン(赤キノコ)狙いだ」と言われると、番頭さんも後には引けない。
前回のキノコの記事で紹介したように、ヘットカイ(タマゴダケ)はそこそこ採れたのだが、今年はまだヘットデーンにはお目にかかっていないのだ。
ヘットカイとはまた違った食感と味わいは、なかなかに捨て難い。
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初め、ガタゴトゴットン(舗装の剥がれた舗装道路)。
あとは、ぐじゃぐじゃぬるぬる(雨に濡れた赤土の山道)。
進路も見極め難い悪路を、滑りながら、ぬかりながら進んでゆく。
転倒防止のために、両足は道に降ろしたままだ。
ビニール袋一杯にキノコを詰めたこの辺の知り合いが、バイクですれ違う。
や、やばい!
出遅れたか。
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バイクを道端に停めて、急斜面の雑木林を登ってゆく。
おお、いきなりでっかい赤キノコだ。
でも、ちょっと古い。
まあ、いいか。
向こうで、ラーの大声がする。
敵も好調のようだ。
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雨が強くなってきた。
斜面が滑る。
出足はよかったものの、後が続かない。
1時間後に合流して成果を見せ合うと、1キロ弱。
時間は遅かったし、この雨だ。
まあ、良しとしよう。
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軽く蒸かして、唐辛子やミニ玉ねぎなどと一緒に搗き込んで、ナムプリック・ヘット(キノコ唐辛子ディップ)を作った。
深い紅色のディップを、生のキャベツに包み込んだり、オクラやキュウリの上に載せて食す。
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辛さは、控えめ。
まろやかな食感と甘い薫りが、口中に広がる。
「おいしい!」と日本語で女将。
「オイテテ!」とカレン語で番頭さん。
このときばかりは普段の仲違いをすっかり忘れ、優しい笑顔を見交わすクンター(爺様)とクンヤーイ(婆様)であった。
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