普段は山の小屋でひとり暮らしをしているラーの叔父が、ゲストの有村さんを訪ねてきた。
訊けば、昨夜の散歩でたまたま村に帰ってきていた爺さんと顔を合わせ、あれこれと話し込んだのだという。
そろそろ小屋に戻るから、別れの挨拶に来たのだそうな。
有村さんが年齢を訊いたところ、90歳だという。
しかし、ラーは「99歳じゃないの?」と念を押す。
「何を言うか、俺は90歳だよ」
爺さん、ちょっとムッとした。
だが、番頭さんが最初に村にやってきたとき、彼は確か「120歳だ」と言って胸をそらしていたのだったがなあ。
ともかく、彼に較べるとわれわれはまだ青年、どころか洟垂れ小僧なのだ。
*
爺さんと別れて2度目のミニ・トレックに出ると、川で水浴びをする水牛が出迎えてくれた。
橋を渡り、川沿いに広がる棚田に入り込む。
あちこちで田起こしをしているものの、やはり昨日の雨では充分ではなかったらしい。
「水が足りないねえ」
畦作りをしている女衆に声をかけ、二人でカメラを向けると、照れながらも作業を続けてくれた。
*
田植えに備えて、川沿いには牛除けの柵が設けられている。
残念ながら、休憩所にしている大岩のテーブルには下りることができなかった。
世界遺産候補(嘘です)の、古い竹橋が見えてきた。
遠望すると、傾きがさほどではない。
近づくと落ちかけた手すりが修理され、割れかけていた孟宗竹が新しいものに変わっている。
そろそろと渡り終えて、下りる場所が違っていることに気がついた。
以前、こちらで重みを支えていた木の股に割れが入り、位置をずらして付け替えたのである。
これでよく、あの重みを支えていたよなあ。
ワイヤー代わりの古タイヤも、以前よりもしっかりと張り渡されている。
そうだよなあ。
あのままでは、収穫のあとに米袋を担いで渡るのは無理だったろう。
ともかく、有村さんが「オムコイ名物」と呼んでくれた竹橋が少しはマシな状態になったことに、ホッと胸を撫で下ろしたのだった。
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