昨日の朝、雨乞いをして結果を出せなかったモーピー(霊媒師)を批判する記事を書いたところ、午後になってにわかに雨雲が空を覆い始めた。
そこへ、なぜかそのモーピー本人がやってきて、店先に座り込む。
別に用事も無さそうなのに、煙草を吹かしながら空を眺めている。
そのうちに雷が鳴り出し、雨が降り始めた。
それを確かめると、彼は黙って去って行くではないか。
うーむ。
記事のことは、ラーにも伝えていない。
私の心が、すっかり読まれてしまったのだろうか。
モーピー、侮るべからず。
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夕方になって雨はやんだが、まだ空を覆う雨雲は蛙漁にはもってこいのようだ。
ラーが豚の世話に行くと、すでに近隣の親戚や村の衆は晩飯を済ませて、出撃態勢を整えているという。
店に戻ってきたラーが、慌てて晩飯の支度をすると、自分は飯も食べずにヘッドランプを付けて、店を飛び出して行った。
すると、途端にまた激しい雨が降り出した。
この調子なら、田んぼにもかなりの水が溜まるのではあるまいか。
そう思っているところへ、なぜかラーが戻ってきた。
「なんだ、中止か?」
「そうじゃないよ。クンター、雨用の上着を貸して!」
確かに、この雨では木綿のジャケットとジーンズでは辛かろう。
山歩き用のゴアテックス上着を差し出すと、
「よし、これで誰にも負けない!」
さらに目を爛々と輝かせて、再び豪雨の中へ飛び出して行った。
*
「クンター、蛇に咬まれたよお」
ラーの弱々しい声に目を覚ますと、すでに深夜零時である。
「なんだと?」
差し出した左足のふくらはぎを見ると、確かに2本の牙の痕がある。
「蛇の姿は見たのか?毒蛇なら、すぐに病院に行かなくちゃ」
「逃げて行く長い影は見えたけど、よく分からない、でも、傷口を見た人たちは毒蛇じゃないから問題ないって。とりあえず、傷口を絞って血を出して、そのあとで自分でメーチーをしたから大丈夫だよ」
メーチーとはタイ語で尼僧のことだが、村の衆は瞑想や霊力による治療のことをこう呼んでいる。
ラーもこれを村の古老から教わったといい、なにやら呪文のようなものを唱えながら傷口に息を吹きかけると、相当な出血でもすぐに止まってしまうのである。
ただ、メーチーをやるには相当な集中力が要るらしく、そのあとにはぐったりしてしまうのが常だ。
「それにね、私の体のどこかにはお祖父さんが入れてくれた蛇よけの刺青があるから、毒蛇に咬まれても絶対に死なないんだよ」
*
朝起きてみると、確かにラーは元気いっぱいだった。
咬まれた傷口が、少し傷むだけだという。
「クンター、昨夜咬んだのは“薬蛇”だったのかなあ?」
「なんじゃ、それは」
「だって、以前に傷めた膝が昨日まではずっと痛かったのに、今日はしゃがんでも全然痛くないんだよ」
「ふーん。それは、きっと毒蛇だったに違いない。普通の人なら死んでいたかもしれないけど、お前さんの体の中の毒の方がずっと強かったから、蛇の毒はちょうどいい薬になったんだろう」
からかったつもりだが、ラーは妙に上機嫌である。
どうやら、“自分の方が蛇よりも強かった”と解釈したらしい。
「よーし、膝の調子がいいから、今夜も蛙とりに行くぞお」
「・・・」
まったく、懲りない毒蛇、もとい嫁である。
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ははは!(^^)相変わらず元気いっぱいですね、ラーさんは!噛んだのも毒蛇ではなかった様で一安心ですね。昔近くの池によく食用蛙(ウシガエル)を取りに行ってた頃を思い出しました。あの頃は何をやるにも無我夢中で楽しかったなぁ!(^.^)やはり人間情熱を忘れてしまっては人生楽しめませんね。勉強になります。
お元気そうでなによりです。
今日の記事!!!!
ありえません!!!(いい意味で)
あまりのありえなさに久しぶりにコメントです。
なんどもいいますが凄すぎるぅ
もし、私が蛇にでも噛まれたら200%の確率で
大騒ぎをして病院に行くことでしょう。
さすがラーさん。
蛙とりにかける“情熱”を、もっと商売や野菜づくりに傾けてくれればいいんですが・・・。いまは、蛙と仔豚しか目に入らないようです(苦笑)。
メールでいただいた“超常現象”、やはりピー(霊)が絡んでいるんでしょうか。わが村のモーピーは失踪した牛の行方を言い当てたり、離婚の危機に瀕した知人夫婦の仲を修復したりした実績(?)があるそうです。
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もかさん
お久しぶりです。4月のカレン村訪問は、いかがでしたか?
おっしゃる通り、確かにあり得ない話ですよねえ。私は、蛇を警戒して夜の蛙とりは敬遠していますが、ラー曰く「蛇を怖がっていてはおかずは捕れない」。
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しんちゃん
オムコイは昨晩も豪雨で、何度も停電しました。それにしても、多彩な経歴ですねえ。