【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【生活体験“朝から大宴会”コース】

2013年01月23日 | オムコイ便り

 今朝は、従兄ベッの家で先祖供養の儀式があった。

 年に一度のことであるからして、早朝から黒豚を潰し、近隣が総出で料理を手伝う。

 もっとも、不器用な私はもっぱら味見係であるけれども。

 祈祷や糸巻き儀式を取り仕切るのは、お馴染み、近所のモーピー(霊医・霊占師)である。

      *

 数時間後に豚尽くしの料理が完成し、これらを供物として捧げる儀式もつつがなく終了した。

 ベッや女房が、「アンミー、アンミー(飯喰え)」と近所に触れて回る。

 肋骨焼きも、ラープ(叩き)も、モツの煮込みも、こうした大勢でワサワサと行う料理にしては、素晴らしい出来だ。

 うまいタダ飯ほど、嬉しいものはない。

 困るのは、空きっ腹のところに供物の自家製モンチャイ(どぶろく)がガンガン回ってくることである。

 めでたい行事であるからして、素っ気なく断るわけにもいかない。

「チョイ、チョイ」と言いつつ、少しだけ舐めてはぐい呑みを押し戻して防御線を張るのであるが、数が重なればチョイもチョイではなくなってしまう。

 酔っぱらいたちに囲まれて、私もかなり気持ちよくなってきた。

 いつもは、深入りしないよう早々に退散するのだが、今日は囲炉裏端に腰を据えて、青いままのバナナ葉で巻いた煙草をふかすことにした。

      *

 そこへ、副村長プーチョイの女房がやってきた。

「クンター! ウチの亭主、小屋造りを何日手伝ったんだっけ? 労賃は、全部でいくらもらったの?」

「えーと」

 記憶を辿り始めたが、どうも女房の顔つきが険しい。

「よく覚えてないけど、どうしたの?」

「ウチの亭主が、一銭もお金を渡してくれないんだよ」

 向かいに座ったプーチョイの顔を伺うと、知らんぷりでバナナ葉巻をふかしている。

「ひとりでカラオケにでも行ったのかい?」

 カマをかけると、激しく顔を横に振る。

「じゃあ、こっそりと銀行に貯金でもしたんだろう」

「通帳はあたしが押さえているから、そんな訳はない!」

 女房がいきり立つ。

「じゃあ、あの労賃はどこに消えたんだろうねえ?」

 プーチョイは、相変わらず知らんぶりだ。

 そこへ、まわりの女房連からプーチョイへの総攻撃が始まる。

「ウチの亭主は、出稼ぎの労賃は全部渡してくれるよ」

「それをひとり占めするなんて、とんでもない」

「ウチの亭主だったら、蛮刀で追い回すところだよ」

 ワーワー、ギャーギャー・・・。

      *

 しかし、プーチョイはしぶとい。

 煙草をしきりに巻きながら、口元に不適な薄笑いさえ浮かべている。



 少し騒ぎが鎮まったところで、女房に向かって重々しく口を開いた。

「来期の選挙で俺は村長になる。お前には楽をさせてやるから、今は小さなことをごちゃごちゃ言うな。来期から、お前は左うちわのメールワン(村長夫人)だ」

 大爆笑が沸いて、労賃の行方はあいまいになった。
 
      *

 彼も、女房が恐いわけではない。

 かつては大酒呑みだった彼だが、女房の鉄拳制裁を受けてからは一滴の焼酎も口にしないのである。

 その彼が見せた今日の強情っぷりと堂々たる関白ぶりは、一体何を意味するのだろう。

 呆れ返った女房が、帰り際にもう一度こっそりと私に念を押す。

「ねえねえ、クンター。労賃はいくらだったの?」

 私は笑いながら、両手で口を塞いで首を横に激しく振った。

 その後、彼の身に何が起こったか、私には訊く勇気がない。

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2 コメント

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ありがとうラーさん.Yさん (poppo久留米)
2013-01-23 18:55:31
去年9月突然おじゃましてお世話になりました、バンブーハウス完成おめでとう、また今年9~10月おじゃまする予定です美味しいご飯楽しみですオムコイ皆の優しさ忘れられません、ラーさんYさん体に気お付けて頑張って下さい
返信する
お待ちしております! (クンター)
2013-01-24 14:06:58
poppo久留米さん

 コメントとメッセージ、ありがとうございました。9月はちょうど家の工事中で、なんのお構いもできず大変失礼しました。でも、キノコ料理は「うまかったばい」ということで、嬉しい限りです。
 実は、あのときのことが今回の宿づくりのヒントにもなっているのですよ。
 それでは、9月まで宿が潰れないように、なんとか踏ん張ってお待ち申し上げます。
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