町の水曜朝市で、作業用ズボンを探すことにした。
本当は速乾性のあるスポーツウエアがいいのだが、これらの記事はすこぶる火に弱い。
焚火をしたり、手巻煙草を吸うと、たちまち穴だらけだ。
テント張りの衣料品屋を数軒ぶらぶらしていると、いい感じの綿パンを見つけた。
手にとると、すかさず店の親爺が「60バーツ!」と声をかけてくる。
ろ、ろくじゅうバーツう!?
いくら何でも、そりゃ安過ぎだあ。
でも、常に自転車操業、緊縮財政に追われる身としてはありがたい。
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よくよく見れば、さすがにひどい作りだ。
まるで、洋裁学校の生徒が初めてミシン縫いしたようないい加減さである(実際に見たことはないけど)。
むろん、商標などは何もない。
おそらく、そこいらのおばちゃん連中が小遣い稼ぎに縫ったのだろう。
前ジッパーはなく、素っ気ないひもで絞める。
しかし、生地自体やアーミーズボン風サイドポケットはなかなかいい。
なによりも、60バーツなら穴だらけになっても平気だ。
そこで、試しに1本買ってみることにした。
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「格好悪いなあ。まるで、カレン族みたいじゃないのよお」
ラーの評判は、散々である。
だが、隣家のプーノイは「いいなあ、安いなあ、きれいだなあ」と褒めそやす。
そら見ろ。
男には男の美学があるのである。
さっそく着替えて、両サイドのポケットに財布や携帯を入れてみた。
わが財布は常に羽毛のごとく軽いからして、なんの問題もない。
重たい携帯はさすがに歩くとぶらぶら揺れるが、まあご愛嬌だ。
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そのまま過ごして、夕方雑貨屋に買い物に行った。
財布を取り出そうとして、右側のジッパーを開く。
買い物を終え、財布を入れて閉めようとすると。
あらら。
ジッパーのやつ、呆気なく壊れちまったわい。
わずか、8時間の命であった。
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翌朝、今度は左のジッパーがその使命を終えた。
やれやれ。
わずか、24時間の命であった。
さすがに、60バーツのことだけはあるなあ。
恐るべし、メイドイン・タイランド!
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