【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【雨の日曜日】

2010年08月22日 | オムコイ便り
 昨夜は、実に久しぶりに家で寝ることになった。

 電気を消すと、ラーは安心したようにすぐに寝息を立て始めたが、ふとんが変わったせいか、なかなか寝つけない。

 ジョーの家で寝るはずだった次男が、なぜか3男のふとんに一緒にもぐりこんで、小声でふざけ合っている。

 隣家からの話し声が、頭の上から聞こえてくる。

 家の前の道を歩く足音が響き、それに雄太が吠えかかる。

 床下で、鶏がばたばたと羽音を立てる。

 また雨が降り出して、屋根を叩く音がうるさい。

       *

 遠くで、鶏が鳴く。

 それに、床下の雄鶏が呼応する。

 ふたりの子供が寝返りを打つと、床がぎしぎしと揺れる。

 あー、眠れない。

 眠れない、眠れない、眠れない。

 また、鶏の声。

 あちこちから。

 あー、村中の鶏が鳴き始めたぞ。

 空が、少し白んできた。

 時計を見ると、5時半。

 ということは、いつの間にか眠ったのだろうか。

     *

 ラーが、囲炉裏に薪をくべ始めた。

 雨降りで肌寒く、火のぬくもりが心地よい。

 コーヒーをすすりながら、ゆらめく火をぼんやり眺めている。

 隣家のメースアイがやってきて、ラーと一緒に筍の皮を剥き始めた。

 朝飯は、筍のスープらしい。

 体が温まると、あちこちに痒みを感じ始めた。

 両肩、背中、お尻、太もも、すね。

 あーあ、やっぱりやられた。

 蚊に刺されたよりもひとまわり小さな咬みあとがぷっくり。

「ラー、何かに咬まれたぞ」

「マイペンライ(大丈夫)、すぐに慣れるよ。虫たちもクンターを歓迎してくれたんだよ」

「・・・」

      *

 顔を洗いに出ると、鶏たちが餌をねだるように足元に集まってくる。

 黒羽の成鶏が、10羽。幼稚園児雛が、8羽。保育園児雛が、6羽。

 ひと塊になると、なかなか壮観である。

 そこへ、数日間姿を見かけなかった茶羽の小学生雛が4羽飛び出して来た。

 先日、隣家の敷地に卵を産んで即座に絞められた母鶏の遺児たちである。

「なーんだ、元気に生きていたのか。よかった、よかった」

 ふと目をやると、雨に濡れた野菜棚に、でかいキュウリが3本ぶらさがっている。

 それをちぎってベランダに立つと、山裾の棚田が雲に覆われた幻想的な姿を見せている。

 この風景とも、ずいぶんと長い間ご無沙汰だった。

 深呼吸をしていると、豚舎の方から「ブヒーブヒー」と餌をねだる悲鳴が聞こえてくる。

 雨の日曜日。

 いつもとは少しばかり違う朝が、こうして始まった。

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