宿のテラス前に鉢を置いた赤と黄の2種類のサボテンの花が、満開である。
女将ラーによれば、サボテンの花は幸運と金運を招くのだという。
具体的にいえば、嫌になるほどお金がザクザク入ってくる。
ほほお、しめしめ。
これはいい花が咲いてくれたなあ。
番頭さん、さっそく獲らぬ狸の皮算用だ。
彼女が水曜朝市などで買ってくる花や木の苗は、だいたいがこの類である。
従って、わが家の庭は幸運を招き、財産をもたらす植物に満ちあふれていることになる。
ということは、番頭さん、今頃は左うちわの楽隠居ということでなければならない。
ところが、押し寄せてくるのは不運の連続。
金運は、またたく間に右から左へと飛び去ってゆく。
これは一体、どうしたことか。
そこで女将を問い詰めてみれば、寺や僧侶へのタンブン(喜捨)が足りないのだという。
んなこといったって、先立つものがなければそんな余裕はない。
まったく、ああ言えばジョウユウなんだからあ(ちと古いか)。
*
そこで、番頭さん、啄木様の心境でじっとサボテンの花を見つめるのである。
お前さん方、本当に幸運と金運をもたらしてくれるのかい?
どうだ、どうだ!
どうなんだ~い?
だが、彼らは無言のままだ(当たり前か)。
そこで、ふと気がついた。
お前さん方、確か去年も今頃に満開になったよなあ。
ところが、この1年、番頭さんは幸運にも金運にもまったく縁がなかった。
ということは、今年も去年とおんなじことの繰り返しい?
このお、気をもたせやがってえ!
逆上した番頭さん、思わず花に手を伸ばした。
イテテ!
トゲが、トゲがあ~!
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