バンマスの独り言 (igakun-bass)

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宇宙と音楽と黄金分割

2005年12月13日 | 音楽:クラシック系
凍てつく夜空に輝く星々・・・宇宙の音を音楽にしたらきっとこうだと思う音楽があります。

少し前まで平原綾香の歌う「ジュピター」がヒットしましたね。原曲はイギリスの作曲家グスタフ・ホルストの組曲「惑星」から「木星」という曲の中間部のいかにもイギリスのメロディーと言う感じのおいしい部分なんです。この「惑星」の音楽は大規模な管弦楽をフルに鳴らし、最後は永遠の神秘の彼方に消え入るような情景を表現するために歌詞を付けない女性コーラスで締めくくられています。確かにスペキュタクラーで色彩は変幻自在、その上、各(太陽系の)惑星を性格付けして、その雰囲気を創作した点が画期的な音楽になったゆえんです。
この組曲を構成する7つの惑星の曲はみないい曲ばかりなので宇宙を想いながら聴けば、クラシックという堅苦しさとは無縁な時間を過ごせるでしょう。

しかし今回僕がお勧めする音楽は、外見がきらびやかでファンタジーのある宇宙を題材にしたものではないのです。インナー・トリップ、内的宇宙を感覚的に味わえる近代音楽の名作中の名作を「宇宙の音」として聴いてほしいとご紹介するものです。
ベラ・バルトーク(ハンガリー~アメリカへ亡命)作曲の「弦楽器、打楽器とチェレスタの為の音楽」(1936)です。
全4楽章からなるこの管弦楽曲は音楽の論理的力性と民族的エネルギーがきわめて高い次元で融合する音楽で内的宇宙から次第に外へ拡散していく宇宙の拡がりにも似た展開で聞くものを擬似トリップ体験させるものです。

バルトークという作曲家は音楽の構築に「黄金分割」理論を用いた人で、自然界の現象や芸術作品に見ることのできる美的なバランス感覚を音楽に取り入れました。
ここで本題から少し離れますが「黄金比」というものを簡単に説明します。(高校生時代に数学とからめて随分勉強しましたがだんだん忘れかけてきてます)

線分ABを点Pで分割した時の比率が1:1.618 になるようにPを置くことを黄金分割するといいます。この比率は人間の目に最も美的に感じられ、そのバランスの美しさで何世紀にも渡り人々の美的感覚を魅了してきました。ミケランジェロやダ・ビンチの絵、ミロのヴィーナスやクフ王のピラミッド、官製ハガキの縦横比にも黄金比が見られますし、自然界でも植物や生物の形に多く発見できます。美しさの比率である黄金比で長さを分けることで物のバランスや美しさが見た目に最高の状態になるということです。

A-----P---B    AP:BP=1.618:1  (AB:BP=1.618:1)

これをバルトークは巧みに用いて大変な傑作を数多く世に出したのです。
例えば今回の「弦楽器、打楽器とチェレスタの為の音楽」の第3楽章は小節数でまさに黄金比の部分(P点)でクライマックスになりますし、全4楽章のトータルにおける黄金比の場所:第3楽章に全曲のクライマックスを置いています。また小節単位や強弱関係にも緻密に黄金比が使われています。

このような美的な感覚を魅了する人類の知恵と音楽の持つ力が互いに協調して一つの音楽的宇宙を形作っているのです。
第1楽章の半音階でモノフォニックなメロディがフーガによって上下完全5度方向に広がって音量と楽器の重なりが次第に膨らんでいくさまはさながら渦を巻く巨大星雲に飲み込まれるような感覚ですし、フーガが最高潮に達した時にくさびのように打ち込まれる大太鼓のアクセントはまさに黄金分割点なのです。聞き手はだんだんと自分の深層心理の中を浮遊するようになります。しかし分割点を過ぎるとフーガは逆行をとりはじめ、元の穏やかで寂しげな単音に収束します。
第3楽章は正に宇宙の響きを聴くことのできる音楽です。
木琴の高音が歌舞伎の拍子木のように間を詰めて響くとすぐ音程をグリッサンドするティンパニが広大な宇宙の闇を出現させます。チェレスタはキラキラと輝く散りばめられた星々です。弦がガス星雲のようなモヤモヤを悲しげなメロディで奏でると、ピアノの激しいグリッサンドで大爆発が起きます(またもや黄金分割の所です)。やがてその巨大なパワーも暗黒星雲から光が漏れ出すことによって穏やかな流れに変わります。宇宙を聴く瞬間です。
第4楽章は狂乱した宇宙の営みをハンガリー的民俗音楽を用いて表現していますが、後半に第1楽章イントロで出てきた半音階のメロディが全音階に姿を変えて登場します。内側へこもっていったパワーが大河のごとく幅広い流れとなって宇宙の彼方へ消えていく様を感じます。

この音楽は宇宙を表現したものではありません。あくまで聴き手の僕がその音から「宇宙の音」を感じただけです。しかしその神秘さといい、音が果てしなく広がる様といい、黄金分割による座りのよさと音力のバランスのよさといい、これぞクラシック・ジャンルにおける最高の宇宙音楽と断言できます。

・・・黄金分割理論と芸術作品の関連性、そして自然界と黄金比から派生したフィボナッチ数列との関連性など、時期をみて書いてみたいと思いますが、理屈っぽくて嫌われるかな?


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (竹川)
2005-12-13 16:05:09
(?_?)    フィボナッチ数列 ⇒ エリオット波動分析 ⇒ 株で大損の経験アリ・・・
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フィボナッチで釣れたぞ~! (igakun-bass@発行人)
2005-12-13 16:14:58
>竹川 さま



人生いろいろ。損もあれば得もきっとあるでしょう。気の毒なような、実はなんかよく分からないコメントに一応感謝しておきます。



次のNY話はそのうちにね・・・。
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安定と不安定 (テーラー)
2005-12-15 12:22:34
すごい所にいっちゃいましたね。

黄金分割なんて絵画の授業の構図の話ですね。

(さぼってたもんで、あんまりよくわからないですが。)

やっぱりこの比率、永遠の安定(美)なのでしょうね。ただ「安定=つまらない」にとらえられがち。絵画の世界でもかならず時代によって安定を壊す革命的な作家(活動)が起こります。そしてその後また永遠の美(安定)を求めた世界へ…。

いつも廻り廻ってるんですね。

外的宇宙、内的宇宙すべてこうなんでしょうかね。

JAZZなんか1曲の中で安定→不安定→安定ですもんね。
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JAZZはおっしゃるとおりです! (igakun-bass@発行人)
2005-12-16 13:16:32
>テーラー さま



ROCKは不安定で調和しなければなりません。

そしてリズムの土台となるテンポはファジーでないといけません。ボンゾやベイカーじいさんしかり。彼らからファジーさを取り除いたら、その存在意義はありません。打ち込みでは名作が生れないのです。・・・あっ、何の話してんだろう。



やっぱりいつか、フィボナッチ数列のことを書いてみたいです。
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