カミノアナログ

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確変予告-37年目のメイショウ

2010-06-01 | pog-strategy
日高産の地味な血統馬を買って走らせる、古風な馬主にして、日本馬主協会連合会会長、松本好雄氏。
馬主生活28年目でたどりついた、メイショウドトウによるG1初制覇。これ以降、松本氏は急激に所有頭数を増やすとともにメイショウボーラー、二冠馬メイショウサムソンなどPOG期間内にも活躍馬を出すようになった。
かつてはPOGと無縁の馬主と見なされ、今もPOGメディアへの露出がほとんどないため、POG的には大きな死角となっている。

しかし、hyracoはおそらく今年から3年以内に、この馬主が三度目のブレイクを果たすとみている。

説明しよう。

メイショウドトウの宝塚記念制覇と引退が2001年。当時歴代6位となる9.2億円の獲得賞金と、9億円(1500万円x60株。供用はイーストS)のシンジケートが組まれた種牡馬代金が、松本氏の手元に入った。またこの年、重賞を2勝し3億以上を稼いだメイショウオウドウも引退種牡馬入りしている。
これらの資金は、松本氏のポリシーにしたがって大部分が馬産地、とくにある地区に集中して還元された。その結果が、メイショウ軍団の急増であり、その中に01年産のボーラーや03年産のサムソンがいたんであった。

歴史はくりかえす。

メイショウサムソンの引退が2008年。10.7億円の獲得賞金と、10.8億円(1800万x60株。供用は社台SS)のシンジケートが組まれた種牡馬代金が、松本氏の手元に入った。
その資金はどのように還元されたか。
・・・そう、ご想像のとおりだ。
昨年のメイショウホンマルは、あふれる才をみせながら斃死したが、今年は去年以上に好配合馬を多数抱えており、ブレイクは必至とみる。

では、世代あたり70頭をこえるメイショウ軍団のどこに当たりがひそんでいるのか。
軍団を分解してみよう。

1)市場購入馬
メイショウセンゴクなど。
過去73頭が平均975万円で購入され、1頭当たりの平均獲得本賞金は984万円。
最も稼いだのが準OP勝ちのメイショウセンゴク、大物を求めていないのがよくわかる。
他の馬主とちがい、メイショウ軍団においては、市場購入馬はもっとも小粒。
ほかに買い手のない馬を、目立つように市場で買ってやる、という慈善事業に近い行為なのだ。

2)外国産馬
メイショウドトウなど。
過去12頭が購入され、1頭当たりの平均獲得本賞金は9466万円。
一時期盛んに購入し、ドトウ以外でも平均獲得本賞金は2063万円と決して悪くなかったにもかかわらず、大当たりしたドトウ世代を最後に、ぱったりと途絶えた。
これはマル外よりも内国産馬を買うべきだという指摘を受けたからだといわれる。

3)預託生産馬
メイショウホムラ、メイショウバトラーなど。
過去261頭がおり、1頭当たりの平均獲得本賞金は1555万円。
門別の日成牧場をはじめとする日高各地の牧場にあずけられた松本氏所有の牝馬から生まれたもの。
数は多いがけっして成績はよくない。
ここからメイショウバトラーのような血統の重賞勝馬が出た意義は大きいが、POG的には避けるべきだろう。

4)庭先購入馬
メイショウボーラー、メイショウサムソンなど。
過去647頭がおり、1頭当たりの平均獲得本賞金は2272万円。
あきらかに主力である。
メイショウ軍団が日本競馬界のもっとも古風なモデルと言われるのは、まさにこれらの存在、調教師が牧場を回り、発掘してきて松本氏に買い取りを依頼するという形態からだ。
メイショウサムソンなどは、松本氏自身デビュー戦のパドックで会うまで、一度も直に見たことがなかったという。
この場合、いわゆるラインを主導するのは馬主でも牧場でもない。トライアングルのうち調教師が主導権を持ち、その相馬眼が成績を左右する。
また、きょうだいも松本氏が所有する「事実上の預託生産」状態になった場合は、きょうだいが同じ厩舎に入ることがほとんどだ。

4a)三嶋牧場など浦河町杵臼・西舎・西幌別地区の生産馬
庭先購入馬の一部だが、浦河町杵臼にある三嶋牧場の生産馬だけは、きょうだいであっても預託先厩舎が一定しない。
すなわち、調教師ではなく馬主・松本氏と牧場主・三嶋氏が主導権を持っている。
これは、松本氏と親交の深い三嶋氏が、近隣(おもに浦河町杵臼および隣接する西舎・西幌別の3地区)の生産者たちと、調教師の間の仲立ちをしているためだろう。

かつてのメイショウビトリアやオウドウこそこれらの地区出身馬だったが、そのころの松本氏は他の地区からも結構な数を買っていた。
ところが、メイショウボーラー(浦河町杵臼、日の出牧場生産馬)の活躍をうけた03年産以降、松本氏が仕入れと育成のまとめを三嶋氏にまかせるようになり、一気に浦河、とくに杵臼・西舎・西幌別の三地区に購買が集中したんである。
これらの馬は、育成も杵臼地区の三嶋牧場(あるいは西幌別地区の日進牧場)で行われることが多い。

こうした背景があったから、メイショウの第二次ブレイクが起こった。
メイショウドトウのライバル、テイエムオペラオーは杵臼生まれだったが、それを意識してオペラハウスを受胎したマイヴィヴィアンを西幌別の若き生産者・林氏が静内から購入し、生まれた子を三嶋氏の紹介で松本氏に売却したのが、あのメイショウサムソンだったんである(下記引用参照)。
03年産以降の世代では、浦河町杵臼・西舎・西幌別生産馬がメイショウ軍団のおよそ2/3を占める。
サムソン以降も、ベルーガ、レガーロ、クオリア、ドンタク。最近のメイショウの活躍馬はほとんどがこれらの地区生産馬であり、庭先で松本氏に売却されている。


> メイショウの冠号で知られる松本は、150頭近い現役馬を所有する大馬主である。預託先の厩舎が40にも及ぶこと、「所有馬が出走しない日はまずない」という事実も、彼が擁する“軍団”の規模を物語っている。ただしそのメイショウ軍団には、明確な特徴を指摘できる。メジャーな良血馬、値段の高そうな馬がほとんど見当たらないことだ。
>
> 「僕らは地道な機械屋でしてね。何億もする機械を買うときには様々な角度から、それこそ何年もかけて検討をするんです。そんな本業のことを考えれば、1頭の馬に1億も2億も投資するなんてことは僕には考えられない。そもそも、いくら血統や馬体がよくても“絶対に走る馬なんていない”というのが僕の信条なんです。それなら人との付き合いのなかで馬を選んだほうが楽しみが大きい。僕はそう考えて馬主をやってきました」
>
> 馬の仕入れは基本的に調教師に任せきりにしている。調教師の側でも彼の信条をよく呑み込んでいるから、億に手が届くような高馬を勧めてくることはまずないという。親交の深い日高の牧場から頼み込まれて、セリで売れ残ってしまった馬を自分の所有とすることもある。“人との付き合いのなかで馬を選ぶ” とはつまりそういうことである。

> 1千万円にも満たない価格で購買したメイショウサムソンも、“人との繋がり”のなかで巡り会った馬だった。周知の通りこの馬はもともと、前任のトレーナーである瀬戸口勉が発掘し、今年の2月末に定年を迎えるまで管理していた馬だ。
>
> 「3年前、定年を間近に控えていた瀬戸口先生が“最後の世代に社長の馬がいないのは寂しいから”ということで北海道へ馬を探しに行かれたとき、僕と付き合いが深い三嶋牧場の三嶋さんが仲間の牧場から馬を4、5頭集めて、その中から瀬戸口先生が選んだのがメイショウサムソンだったんです。だからこの馬は、みんなが探してくれた馬。自分のやり方を貫いてきた結果、この馬に巡り会えたということではないかと思っています」
(Number [大いなる計画]メイショウサムソン 義理人情と凱旋門。)


4b)新冠町生産馬
オマケになるが、意外におもしろいのが新冠町生産のメイショウ馬。
過去124頭がおり、1頭当たりの平均獲得本賞金は2682万円。
1998年産以降激減し、世代あたり1~3頭の庭先取引馬と数は少ないものの、高い確率で活躍馬を出している。
とくに メイショウトウコンなど、マヤノトップガン産駒がすごい。

結論。

・メイショウは今年の2歳世代から三度目のブレイクをむかえる可能性大。
・メイショウ軍団では、市場取引馬や預託馬を軽視せよ。
・メイショウのマル外は12年前、ドトウ世代を最後に絶滅している。
・社台G生産馬は基本的にハズレだが、サムソンが社台SS入りしただけに今後要警戒。
・中心はボーラー・サムソンらが出た浦河町杵臼・西舎・西幌別地区生産の庭先取引馬。
・三嶋牧場生産馬のみ厩舎振り分けあり、その他は基本上と同じ厩舎に入る。
・新冠町生産馬は98年産以降少数精鋭。とくにマヤノトップガン産駒。

今年の私撰馬では、メイショウ軍団から3頭を取り上げる。こうご期待。