ヒデ系の瞳

平和憲法尊守

消費税増税 新聞は例外?

2012-01-12 | メディア
マスメディア時評

閉塞打開の道示せぬ年頭社説


 2012年幕開けの、全国紙などの社説に目を通しました。

 「朝日」は「新しい年も難問が続く」と書き出し、「読売」は「世界的に『危機』が常態化しつつある」と筆を起こします。「毎日」も「政治の問題解決能力が厳しく問われる」です。いずれも閉塞(へいそく)感が強まっていることの反映でしょうが、ではその閉塞をどう打ち破るのか、新年らしい骨太の主張はどこにも見あたりません。

「翼賛」の本質変わりなし

 さすがに昨年のように各紙がこぞって日米同盟の強化や消費税の増税、環太平洋連携協定(TPP)への参加を政府に迫ったような露骨な「翼賛」的な論調は一見弱まったようにみえます。しかし、論じるテーマ、主張する中身が似たり寄ったりで、結局は政府をけしかけるだけに終わっているのには変わりがありません。

 「難問が続く」と書き出した「朝日」がとりあげるのは、「戦後ずっと続いてきた『成長の時代』が、先進国ではいよいよ終わろうとしている」から、これからは「成長から成熟へ」社会を切り替えなければならないということです。「成長が終わった」という論自体は、1970年代に2度にわたる石油ショックで戦後の「高度経済成長」が終わっていらい言い古されてきた議論で何の新味もなく、いまや何度目かの世界経済恐慌さえいわれるなかで「朝日」がまだそんな考えでいたのかと驚くほどです。

 実は、「朝日」がわざわざその手あかにまみれた議論を持ち出したのは、新興国との競争のために「国をもっと開いて打って出(る)」とか、「将来世代」のことを考えて「社会保障と税の一体改革」を進めるとかの結論のためです。何のことはない、昨年同様のTPP参加、消費税増税推進の論調です。この論調を「翼賛」と呼ばずなんと呼べばいいのか。

 「朝日」は昨年末、政府が「一体改革」案をようやくまとめたさいには、「豹変(ひょうへん)して進むしかない」(12月31日付)と最大限の表現で野田首相を持ち上げ、実行を迫りました。増税に苦しむ国民など眼中にありません。「翼賛」姿勢は露骨です。

 一方、世界的に「危機」が常態化しているとし、「政治が機能不全から脱却する必要がある」と主張する「読売」は、どんな政治を求めるのか。1ページの大半を費やした大型社説で「読売」が主張するのは結局、「消費税、沖縄、TPP、原発の各課題は、いずれも先送りできない」という結びの一言に尽きます。原発の再稼働もあからさまに要求しているところが「読売」らしいところですが、結局はこれまで同様、政府に悪政をけしかける主張です。

 同じように「政治の問題解決能力が厳しく問われる」という「毎日」があげるのも、税と社会保障の一体改革、TPP参加問題などです。「毎日」は、「改革の中身が国民に新たな負担を求めるものであることを明確に(して)」、野田政権が「説明と説得」にあたれと主張します。1日付を論説委員長の恒例の論評にした「産経」も、3日付主張からは連日、TPP参加や集団自衛権行使容認の論を張っています。政府には言いにくい本音を、文字通り先取りするものです。

「二つの異常」打ち破れば

 全国紙をはじめマスメディアが、「アメリカ・財界使い走り」の野田佳彦政権がやろうとしていることに「翼賛」し、そればかりかもっとやれとけしかけるのでは、マスメディアの重要な機能である「権力の監視」役を果たすことはできません。お先棒を担ぐだけなら、言論機関の自殺行為です。そこには社会に向かって警鐘を鳴らす「木鐸(ぼくたく)」としてのジャーナリズムの姿はどこにもありません。

 政治も社会も閉塞状況にあるという日本の現状は、戦後長く続いた異常な対米従属と財界・大企業の横暴な支配という「二つの異常」を打ち破らない限り、自民党の政権でも民主党の政権でも、国民の暮らしも平和も守られないことをますます明らかにしています。閉塞を打開するには、まず、議論そのものが、この「閉塞」から抜け出す必要があります。

 日本国中に軍事基地網を張り巡らすアメリカの横暴な支配を打破すれば、沖縄の普天間基地といえば県内「移設」しかないというような行き詰まりは打開できます。財界・大企業に経済力にふさわしい負担を求めれば、消費税を増税しなくても、福祉を向上させる財源を確保することもできます。

 こうしたマスメディア状況の中、「二つの異常」を打開すれば困難も危機も抜け出せることを国民に明らかにし、「日本改革」の実現のために力を合わせる「しんぶん赤旗」の役割は、今年もいよいよ重大です。(宮坂一男)

いま メディアで 赤旗日刊紙2012・1・7

消費増税あおる大手5紙
 「各社ごとの社説いらぬ」の嘆き

 全国紙5紙は新年の紙面で野田内閣へ一刻も早い消費税増税を促す社説で足並みをそろえています。消費税増税論は全国紙5紙の従来からの立場ですが、野田内閣に対して、「愚をこれ以上繰り返してはならない」(朝日・1日付)、「(民主)党内はもとより国民を渾身の力で説得すべきである」(読売・5日付)など、もっと急げとけしかけているのが正月論調の特徴です。
 野田佳彦首相が4日の年頭記者会見で「ネバー、ネバー、ネバー、ネバーギブアップ」(決してあきらめない)と消費税増税で正面突破する固い決意を示したのも大手メディアの後押しがあるためです。

論調読み返す
 大手紙の年頭論調を読み返してみます。
 「取り組むべきは、社会保障と税の一体改革を実現させて、成熟社会の基盤をつくることだ。・・・増税や政府支出のカットはつらい。・・・甘受しなくてはいけない」(朝日・1日付)。
 「今年の通常国会最大の懸案である一体改革だ。消費税率を引きあげ、・・・この改革の必要性については、私たちもこの欄で何度も訴えてきた」(毎日・1日付)
 「首相は、・・・社会保障制度を持続可能にするには、消費税引き上げによるしかないことを、国民に丁寧に説明し、理解を求めてもらいたい」(読売・1日付)
 「消費税増税への道筋をつける動きが本格化してきたことは評価すべきであろう」(日経・5日付)
 「社会保障の安定財源を確保する上で消費税増税は避けられず、党派を超えた課題といえる」(産経・5日付)

転載した方が
 全国紙5紙は、財源不足→社会保障が破たん→消費税増税は避けられない、との政府・財界の論理にまるまる乗る点で立場を共有しています。財源不足というなら大企業・財界への減税圧縮や応分の負担を求める、歳出の浪費をやめる―などこそ指摘すべきですが、そのことに触れない点でも共通しています。
 「これでは各社ごとの社説はいらない。社説配信会社をつくって同じ社説を各紙が転載した方がまだ分かりやすい」(元朝日新聞論説委員)。社説を執筆していたOB記者の嘆き節も聞かれます。

新聞は例外?
 全国紙5紙は、そもそも、それほど声高に消費税増税を主張できる立場なのか。
 秋山耿太郎日本新聞協会長(朝日新聞社長)は、新聞業界機関紙「新聞協会報」(2012年1月1日)の年頭挨拶で、消費税率の引き上げへの対応について「新聞は『民主主義や文化の発展を支える公共財』であり、国民生活に欠かせない情報源であることを訴え、・・・軽減税率が適用されるよう求め、粘り強い取り組みを続けていきます』」と述べています。
 昨年10月の新聞大会で喜多恒雄・同協会税制対策特別委員長(日本経済新聞社長)も、「将来的に消費税が増税されることは間違いありません。新聞協会として軽減税率を強く求めていきたい」。
 消費税増税を認めた上で新聞については例外的に税率軽減の適用を求めています。
 「自分さえよければ」の主張は、「社会の木鐸(ぼくたく)」といわれてきた新聞ジャーナリズムとも思えない自分勝手な言い分です。
 読者や国民に消費税増税の必要性を説くよりも「省みて自らを説明する」ことこそ全国紙5紙に求められています。

消費増税「一歩前進」/一体改革で経団連会長

経団連の米倉弘昌会長は5日、都内で開いた経済3団体首脳の共同記者会見で、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革大綱素案について、「一歩前進だ。日本が財政健全化に向けて頑張るというメッセージを市場に伝えられる」と評価した。

診療報酬や介護報酬の適正化など社会保障給付の効率化に関しては「もっと踏み込んでもらいたい」とあらためて注文。経済同友会の長谷川閑史代表幹事は「世代間の(負担の)格差にメスを入れておらず、改革に値しない」と批判した。

景気見通しについて、米倉会長は「行き過ぎた円高で日本企業の競争力は低下している。企業の先行きは難しい」と述べ、厳しい経営環境が続くと指摘。日本商工会議所の岡村正会頭は、低迷する東京株式市場の日経平均株価(225種)が「1万2,000円まで上がってほしい」と期待を込めた。

(共同通信)
2012年1月5日

経済3団体共催2012年新年祝賀パーティ後の共同会見における米倉会長発言要旨

2012年1月5日
(社)日本経済団体連合会
【日本経済の見通し】

2012年は、復興が本格化し、公共投資が加速する。これが日本の景気を力強く下支えしていくと思う。他方、行き過ぎた円高が輸出企業の国際競争力を低下させることを懸念する。また、日本の輸出先である米国、欧州、新興国の経済が減速しつつある。欧州の金融市場等の先行きに不透明感もある。その中で、企業はまだ設備投資に踏み切れない厳しい状況ではあるが、イノベーションを通じて新たな市場を創出し、民主導の経済成長を実現していかなくてはならない。
【2012年の最優先課題について】

震災からの早期復興が最重要課題である。復興庁、復興特区の具体化と予算の早期執行が必要である。
政府には、成長への大きなうねりをつくってほしい。第一に、大胆な制度改革、規制改革を通じ、新たな市場や需要を生み出してほしい。第二に、2020年のFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)完成を目指し、TPPをはじめとする経済連携協定の締結を一層進めてほしい。第三に、社会保障と税の一体改革を着実に推進してほしい。消費税の引き上げ時期、引き上げ幅が素案に盛り込まれたことは、一歩前進である。持続可能な社会保障制度を構築するためには、給付の効率化、重点化を一層進める方向で改革を進めてもらいたい。総理就任から今日まで、成長と財政の健全化は車の両輪という考え方にぶれはない。本日のパーティでのメッセージにもそれが貫かれていた。大変心強い。

経済3団体長 新年合同記者会見 長谷川閑史代表幹事発言要旨(未定稿)

日時 : 2012年1月5日(木) 15:10~16:10
場所 : ホテルニューオータニ 宴会場階 edo ROOM
出席者 : 米倉 弘昌 日本経団連 会長(幹事)
岡村 正 日本・東京商工会議所 会頭
長谷川 閑史 経済同友会 代表幹事

記者からの質問に答える形で、(1)日本経済の見通しと株価・為替の水準、(2)野田総理の祝賀パーティーでの挨拶、(3)政府に最優先で望む政策、(4)エネルギー政策、(5)2012年に必要なリーダー像、(6)コーポレート・ガバナンス、について発言があった。

(以下、長谷川代表幹事発言部分)

Q: 今年の日本経済の見通しについて、行き過ぎた円高、欧州債務危機の行方、復興需要に対する期待などがあると思うが、株価・為替の水準も含めて所感を伺いたい。
長谷川: 直近の日銀短観では、景気は緩やかに成長を続けているが少しスローダウンしているという見通しであったと記憶している。今後については、米倉会長が述べられたように、エコノミストや各機関で概して2%程度の成長が予測されており、その辺りが大方のコンセンサスではないかと考えている。肝心なのは、これから本格化する補正予算による震災復興への投資が、日本経済がどうしても達成しなくてはならない「安定的かつ緩やかな成長、緩やかなインフレ」という状況に橋渡しをする形でつなげていかなければならないということである。為替・株価に関する個人的予測は差し控える。経済同友会が四半期毎に(企業経営者を対象に)実施している「景気定点観測アンケート調査」(2011年12月時点・2012年前半の予測)では、為替(対ドル円相場)は70円代後半が最も多かった。企業経営者としては、円高はなかなか解消されないだろうがこれ以上は困る、という心情だろう。株価(日経平均)は、あまり楽観的ではなく、9,000円台が最も多かった。

Q: 先の新年祝賀パーティーで野田首相が今年の決意を述べられたが、感想を伺いたい。
長谷川: 印象に残った二点について述べる。一つは、「経済成長と財政再建(財政規律)は車の両輪である」と強調されていた点で、私もまったく同感である。日本経済が緩やかな成長、緩やかなインフレに戻らない限り、財政の再建もなければ、社会保障の安定化といった安定的な財源の確保も難しい。首相の認識は私も共有するところであるが、問題はそれをどう実現していくかである。国家戦略会議の日本再生戦略で具体化を進めていくという政府の考えがあるので、その結果を待ちたいが、基本的には一昨年6月に策定された新成長戦略を着実に実行し、必要があれば修正を加えるということに尽きる。成長のドライバーは、労働力人口の増減、海外からの直接投資(FDI:Foreign Direct Investment)を含めた投資、イノベーションからくる生産性の向上、という三つの要素である。これに加え、企業は、新興国で急激に成長している市場に進出する。アジアではソーシャル・インフラ(への投資)がこの先10年間で8兆ドル(約800兆円)といわれているが、主には日本が得意とする上・下水道、高速道路、高速鉄道、発電である。政官民が一体となって、それぞれの国の経済成長のインフラ整備を助けるとともに、成功の分け前を日本に持ち帰ってくる。こうしたことをすべて併せて実行していかなければならない。投資については、当面の1~2年は復興投資の本格化でまかなえるとしても、その後は規制改革等を通じて実現しなければならない。労働力人口の問題や生産性の向上については、今後、日本再生戦略の中で、どこに焦点を当ててどのように実現するかに本格的に取り組んでいかなければならない。一方で、財政再建については収入増も図らなければならず、昨年末に社会保障・税一体改革について党内の意見をまとめられ、首相の話では明日、政府として意志決定をされるということなので、ハードルは高いと思うが、野党の協力を得て国会審議の中で実現することを望みたい。

 二点目は、「振り返ってみたときに、2012年が、日本が本格的な復興・復活・経済成長にトレンドを変更した年(本格的な経済再生が始まった年)にしたい」と表明されていたが、私も同感である。政治は政治、官は官、民間企業は民間企業で、できることをしっかりとやり、協力しなければならないことは協力してやっていくということで、その実現に貢献していく必要があると認識している。

Q: 2012年は正念場の年になると思うが、政府に最優先で望む政策は何か。
長谷川: 経済成長が鈍化し、少子・高齢化が進み、税収は伸びず、累積債務は増え続けるという状況の中で、これらを既に経験した諸外国の例を見ても、なすべきことは決まっている。一つは、成長戦略をしっかり実行しない限り、いくら歳入増を図ったところで社会保障費の増分をまかなうことは不可能であるので、税収増のためにも成長が不可欠である。もう一つは、歳出削減、三つ目は歳入増である。

 成長については、岡村会頭も述べられたが、技術立国である日本は、技術によって世界が今挑戦している課題に解決をもたらすと同時に、それを成長のドライバーにすることを志していくべきだと思う。例えば、水の供給や海水浄化(water scarcity:水不足)、食料供給、そしてエネルギーの問題などがある。最近膨大なシェールガスの埋蔵が発見されたが、中国やインドのような国が成長を続ければ燃料の高騰化・枯渇化が考えられる。日本が自身の経験を踏まえて、省エネや蓄エネなどの技術を最先端で開発することで、日本の成長のドライバーにすると同時に、世界の問題解決にも貢献することが必要である。また、GDPの70%以上を占める第三次産業、サービス産業の生産性・効率性が飛躍的に改善されなければならない。日本はこれから少子化、そして超高齢化社会になり、2050年には40%以上が65歳以上になり、15歳未満の非労働人口を加えると、働いている人と働いていない人(の比率)が1:1の割合になるだろう。そういう社会をどう乗り切るかを考えてモデルを創出し、日本の後を追って高齢化が進む国々に提供することを考える必要もあるだろう。

 歳出削減については、行政改革、政治改革、社会保障制度改革の三つの要素があり、これらをバランスよく実行しなければならない。年末にまとめられた社会保障・税一体改革の原案では、公務員制度改革などの行政改革、議員定数削減などの政治改革についても記載されていたが、(政・官)自らが血を流すことを示さない限り、(増税への)国民の納得は得られない。社会保障制度改革については、現在示されている案は、世代間・世代内格差(の是正)に本格的なメスを入れていないので、改革の名に値しないと言わざるを得ない。毎年自然増で1兆円以上増えるものを、消費税(率)を5%引き上げて12.5兆円(財源を)増やしたところで、10年も経てばすべて(社会保障費の)増加分で消えてしまう。ここに本格的なメスを入れなければ本質的な解決はない。さらに、今の社会保障制度、いわゆる賦課方式では、(実質的な)低所得者から高所得者、あるいは若者から高齢者に所得が移転するという内在するメカニズムの問題もあり、これらを解決しない限り世代間の納得を得られないし、若者が将来に希望を持つこともできない。その上で、最終的には消費増税も避けて通れない。首相は、党内の意見集約は難航したものの、まずTPPで党内の意見をまとめられて交渉の議論に参加することを表明され、社会保障・税一体改革についても最終的には党内の意見をまとめられ、明日の政府の意思決定に結び付けられている。課題は山積しているが、一つひとつ積み重ねていかれることを期待するし、我々もできる範囲でサポートしていきたい。

Q: エネルギー政策について、先ほど岡村会頭から「短期と中長期を区切って考えるべき」との話があった。短期・中長期のそれぞれについて、原発を含めてどのようにすべきかを伺いたい。
長谷川: すべての物事には二面がある。昨年の原発事故による電力供給制限は、今まで十分に注意が向けられてこなかった省エネルギーや蓄エネルギーの重要性を認識させてくれたと思う。特に、(電力消費量について)従来は産業(部門)が多かったが、現時点では、事務所等の事業所(部門)や家庭(部門)も伸びており、概ね1/3ずつくらいの割合になっている。産業での節電は、コストの面からも経営者として当然実施すべきであるが、事業所や家庭について、もっと省エネルギー・節電を真剣に考え、実行に移していくことが、日本にとっても、あるいはこれからの世界にとっても、大変大事なのではないかと考える。今までは、電力は必要であればいくらでも買える、あるいは供給されるという認識があったが、これを機にマインドセットを変えることが必要だろう。

 その上で、電力の安定供給については、既に米倉会長と岡村会頭が述べられているが、原発54基のうち現時点で48基が止まっており、やがてあと2~3ヶ月ですべて止まる状況で、ほぼ30%近い電力を供給していた原発がまったくなくなると、今までフル稼働していなかった、あるいは、廃止しようと思っていた火力発電を再稼働させるなどでかなりの部分を代替するにしても、岡村会頭もおっしゃられたように、環境やエネルギー・コスト上昇などの問題が出てきて、必ずしもそれを長く続けることが最適解ではない部分がある。経済同友会で論議を重ねた結果、原発については、当面「縮原発」ということでいかざるを得ないのではないかと考えている。いずれはストレステストや第三者機関のチェックを受けた上で、地域住民や自治体の長のみなさんの了解を得るためには、個々の電力会社だけでなく政府によるバックアップや協力をもって説得することで、再稼働できるところは再稼働していくことが必要になると思う。アメリカの場合は、仄聞したところでは、スリーマイル島原発事故の後、Institute of Nuclear Power Operationsという第三者チェック機関がすべての原発を常にチェックし、レーティングをしているとのことである。日本もそのようなことを考えなければいけない段階に来ているかもしれない。それにしても、再生可能エネルギー(による電力供給量)は、現時点で全体の9~10%程度で、そのうち水力が90%以上を占めている。(再生可能エネルギーによる電力供給量を)短期間に10倍に増やすことは、理論的には言えても実現は大変難しい。中長期的には、それ(再生可能エネルギーによる供給増)が望ましいものの、当面は節電・省エネルギー・蓄エネルギーを一生懸命やると同時に、原発の再稼働もしながら乗り切っていくことを考えざるを得ないと思う。また、米倉会長が述べられたように、政府がエネルギー計画を見直し、今春にいくつかのオプションを提供して国民や事業者の意見を聞いた上で、ベストミックス等についてもコンセンサスを形成し、今夏に最終案(をまとめる予定)とのことなので、それを待って我々も意見を述べていきたいと考えている。

Q: 今年は世界のリーダーが代わる年だが、2012年にふさわしいリーダー像は。
長谷川: 選挙で選ばれる人は、投票者の意向や関心を常に意識せざるを得ないことは理解できるが、さはさりながら、政治のリーダーの方々には、ポピュリズムに陥らず、世界的な課題解決と国益の最大化を求め、国民を理論的に説得して実現に結びつける、そういうリーダーに是非出てきていただきたい。

Q: 昨年は、海外の投資家などから日本企業のガバナンスが疑問視された年であった。今年、信頼を取り戻すために、企業として、あるいは経済団体として何をすれば良いかを伺いたい。また、個別企業の話になるが、オリンパス元社長のウッドフォード氏がプロキシーファイト(委任状闘争)を断念するという報道が出てきている。オリンパスの再建はスムーズにいくと見ているか、日本企業の信頼はどのようになっていくかについて伺いたい。
長谷川: 米倉会長、岡村会頭の意見に付け加えることはない。

(文責:経済同友会事務局)

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