安倍晋三、必死の営業力で支える
一方で、我が国に対する言及は比較的穏当で、またトランプさんと総理・安倍晋三さんの間での相性の良さ、というか一方的な安倍さんの「トランプヨイショ」が絶妙に効いて、思いやり予算4倍の年間8500億円という吹っ掛けを回避するために安倍さんがあの手この手揉み手で頑張った、ということが書いてあります。
このクソ大変な時代の、日本にとって超重要な日米関係が安倍ちゃんの営業力でどうにかなってしまったというのは僥倖というほかなく、国内では嘘つきだ馬鹿だと罵られ煽られる安倍ちゃんも国際的には宰相としての長いキャリアのお陰で随分信頼され、愛されているのだなあと解されるのであります。(「前米大統領補佐官ジョン・ボルトンさんのトランプ政権暴露本がめちゃくちゃ面白い件について。北朝鮮が韓国のことを信用しない理由がよくわかります。The Room Where It Happened」、山本一郎official youtube)
ボルトンさんのこの回顧録を通じて、日本の行く末や東アジアの今後の安全保障を考える補助線を与えてくれるわけですが、しかし、日本の置かれている現状や立場というのはとても流動的です。
そりゃ敵地も攻撃したくなるわさ
そもそも、本来日本にとって命綱であるはずの日米同盟がトランプさんのアレさ具合で微妙な雰囲気になっているのは本書でも解説されています。
同時に、本来ならもっと日本と緊密な連携を取るべき韓国のイケてなさ、火薬庫となり北の妹様が君臨する北朝鮮を挟み、超大国になろうとしている中国と現在の覇権国家アメリカとの対決において、文字通り最前線になる日本は安全のための「切なる悩み」を抱かずにはいられません。
そりゃ確かに、基地先制攻撃能力を確保していかなければ、日本が守れないんじゃないか、なぜならいつまでもアメリカ様が地域の安全保障に介入してくださるとは限らないんだから、という理屈も理解できます。
また、11月3日に控えるアメリカ大統領選挙でトランプさんが勝つのかどうかという不安定要因もありつつも、単に本書を暴露本と捉えず世界における日本の立場、役割を再検証しながら読み進めるという価値はあると思うのです。
ご関心のある方は辞書引きながらでも通読されると本当の意味で血肉になると感じますし、また、日米関係だけでなく地域問題に通暁された分野があれば爆笑待ったなしのナイス本です。
これを読んでしまうと、やはり先日辞任した国防長官、ジェームズ・マティスさんの著書『Call Sign Chaos: Learning to Lead』も併せて読みつつ、マティスさんでもボルトンさんでもいいので日本政府のお目付け役、顧問として招聘したらいいんじゃないかとすら思うんですよね。
思いやり予算だけで8,500億円も吹っ掛けられているんですよ。彼らが日本に来ていろいろ教えてくれるなら、10億でも20億でも払ってあげていいんじゃないかと感じるんですが。
山本 一郎(個人投資家・作家)