よしーの世界

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来るべき民主主義   國分功一郎

2019-08-04 08:02:08 | 
最近民主主義に対する議論が喧しい。特に小泉政権から安倍第二次政権での反知性主義を背景に

問題山積みの日本の課題を先送りしつつ、強権的に周囲を圧力で抑える政治を展開していること

がとても気になる。日本だけではない。世界中で自国の利益だけを優先に選挙で勝ち、権力を得

る為だけに政治を行っている政治家が目立つ。それらの政治家は威勢のいい言葉で、隣国に敵を

作り民衆を煽る。それに反応する人々は結果として自分達の不利益になるかもしれない事態を全

く省みることがない。


哲学者の著者が身近に起きた地域の問題に関わることで、理不尽さに政治について考察し、自ら

も動くことで、よりリアルな政治を実感する。そして民主主義について改めて深く掘り下げたこ

とが本書の内容になっている。一人、もしくは数人、あるいは数十人、数百人(例え数千人、数

万人でも)に不利益があっても、権力側の都合で簡単に施行される。どれだけ理不尽なモノでも、

例え50年も前に計画された、今現在必要とされていないモノでもだ。


著者の引用の中に印象的な言葉がある。ちょっと長いが取り上げたい。17世紀の哲学者スピノ

ザで「妬み」について分析している。


 「あいつだけはずるい」という妬みは人間の心の根底を規定する感情である。特別な人間に特

 別なことが起こるのは許せる。だが、自分と同じ立場の人間に特別なことが起こることは許せ

 ない。たとえば、特別なことが起きた人間を人は「あの人は特別な人間なのだ」と考えようと

 する「あの人は小さい時から違った」「ものすごく努力してきた人だ」「すごい才能があるん

 だ」云々。特別なことの利益を享受した人間は、特別な人間でいてくれないと困るのだ。もし

 もしその人間が自分と同じ立場の普通の人間ならば、自分と変わらないにもかかわらずその人

 だけ特別なことの利益を享受して「ずるい」と感じざるをえないからである。そう感じた時に

 人は、その「ずるい」人間を引きずり下ろそうとする。


現在の政治の底流にこの感情がある。それを巧みに利用し、悪感情を噴出させる手法はとても危

険で人々は冷静に考えることを拒否してしまう。今日本、あるいは世界に必要なのは「寛容」だ

と思う。そして落ち着いて考え、自分だけではないことに思いをはせることが大事だ。


来るべき民主主義     國分功一郎        幻冬舎新書

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