よしーの世界

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22世紀の民主主義   成田悠輔

2024-07-07 08:18:30 | 

本書冒頭、断言する。若者が選挙に行って「政治参加」したくらいでは何も変わらない。例えば

21年の衆議院選挙における全投票者に占める30歳未満の割合は8.6%でしかない、と始まる。若

者は超超マイノリティという事実。しかも若年層の自民党支持率は高齢層と殆ど変わらない(最

近は相当減っているようだ)。そこで著者は選挙や政治、そして民主主義というゲームのルール

自体を作り変えるか考えることを提唱する。

 

成る程と思わされたのは、今世紀に入ってからの20年強の経済を見ると、民主主義的な国ほど、

経済成長が低迷しつづけている。という指摘。コロナ禍でも民主国家ほど人が亡くなり、経済の

失墜も大きかった。これはネットやSNSの浸透とともに進んだ民主主義の「劣化」である。そ

う、ヘイトスピーチやポピュリズム的政治言動。そうした民主主義の劣化の加速度が特に速いの

が民主国家である。

 

著者の構想にあるのが「無意識データ民主主義」だ。ネット、監視カメラが捉える会議、街中・

家の中での言葉、表情やリアクション、心拍数、安眠度等の無数のデータ源を民意データとして

捕捉し、足し合わせ、意思決定を行うアルゴリズムを使う。アルゴリズムのデザインには、人々

の民意データに加え、GDP・失業率・学力達成度・健康寿命・ウェルビーイングといった成果

指標データを組み合わせた目的関数を最適化するように作られる。その過程は民意データに基づ

いて、各政策領域・論点ごとに人々が何を大事だと思っているのか、どのような成果指標の組み

合わせ・目的関数を最適化したいのかを発見し、その目的関数・価値基準にしたがって政策意志

決定を選ぶ。

 

人類の意識、価値観はすでに細分化され、一部指導者によって、大多数の国民を幸福へと導くこ

とは困難になってしまった。世界中で自分さえよければいいと叫ぶ時代になった。すでに今ある

選挙制度ではどうにもならないところに来てしまった。ルールを変えるための思考が必要だ。

 

   22世紀の民主主義   成田悠輔            SB新書

 

アルゴリズムとは編集注:問題を解決するための手順をコンピューターのプログラムとして実行

可能な計算手続きにしたもの。です。私はバーチャファイター(1993年)で初めて知りました。

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