脱 大日本主義 鳩山友紀夫

安倍政権から菅政権の目指していた政治的理想は頓挫した。安倍前首相は相変わらずあちこちで吹聴

しているようだが、アメリカ追随型では世界の中における日本の立場がドンドン悪くなるし、日本の

国益は何世代にもわたって減少することが自明だ。日本は自民党政権下で常にひたすらアメリカべっ

たりできたが、鳩山氏自身が国際会議で「日本の立場は聞かなくても分かっている。アメリカと一緒

なのだから」と揶揄されたように、各国の認識は同じと見るべきだ。勿論日米協調は重要だ。残念な

がら日本がいきなり独り立ちできるわけではない。しかし今までのようにアメリカに追従するだけで

はトランプ大統領のような人物の登場によって、さらなる押し付けがあらゆる方面で増える可能性が

高くなる。


政治の理想を語る本は沢山あるが、政治家によるもので本書のように冷静に書いてあるものは少ない。

しかも民主党政権時代の反省も含めて論理的に静かに語られているので読みやすく、リアルである。


私は本書の鳩山氏の主張に賛同できる。これからの日本の世界での立ち位置について正確に分析され

ていると思える。中国の強大な力（経済力、軍事力）や東南アジアにおける相対的な日本の位置を未

だ受け入れがたい日本人は多い。今でも東南アジア各国を下に見る日本人的感性が、日本の将来展望

について誤った判断をしがちだ。


本書は出来るだけ多くの日本人に読んでほしい。政治に無関心でも、すでに政治があまりにも生活に

密着していることを今年実感した人は多いと思う。ただ本書では政治家自身の特別待遇についての言

及が全くないことと。政官業の癒着構造の打破を基本とする行政構造の改革に関しての具体的な記述

がない事が片手落ちに思う。こここそが肝でこれから登場する政治家でこれを抜本的に改革出来る人

物は簡単には出現しないだろう。


脱 大日本主義　　　　　　鳩山友紀夫　　　　　　　　　平凡社新書