つれづれなるままに弁護士(ネクスト法律事務所)

それは、普段なかなか聞けない、弁護士の本音の独り言

値切るな!

2019-01-29 14:57:24 | 弁護士のお仕事

最近でこそ減ったが、以前は弁護士の費用(着手金とか成功報酬とか法律相談料とか)を値切ってくる人(そういう人を私は「客」とか「相談者」とは呼ばない。)がチラホラいた。

「最近でこそ減った」のは、私は値切ったり値切られたりするのが大嫌いなので、そのテの人には優しく、時に厳しく、

「もう、二度と来ないでくださいねっ」

とお伝えし続けてきたからである。

昨年末、久しぶりにそういう人が来た。ある知人の紹介で法律相談にやって来たご夫婦は、私の回答がお気に召さなかったらしく、

「こんなとこにいても時間と金の無駄だ。金がもったいない。」

と叫びだした。

面倒くさいので相談料は頂かずお引き取り願って、出入り禁止にさせて頂いた(お願いだからもう二度と来ないでくださいね。)。

 

リフォーム工事とかの会社だとそのテの人(とにかく値切る人)が多いと思う。

築18年の我が家も現在、浴室のリフォームを考えはじめて、いくつのかのリフォーム会社さんに見積もりをお願いしている。

私は基本的に担当者個人とその会社を信頼して見積もりを出してもらっているつもりなので、出てきた見積もりを「値切る」ということはない。

せいぜい、

「別の製品だとメーカー希望小売価格からの値引き率が高かったけど、この製品だと値引き率が低いのは何故ですか?同じ程度の値引き率にはならないのですか?」

と疑問点を伝えるくらいである。

たいていは、担当者から、

「この製品は新製品なのでどうしても人気が高く、希望小売価格以下では仕入れができないからです。」

とか

「前の製品は別案件でキャンセルが出て倉庫に残ってしまっていたものなんです。会社としても今回、平岩さんに使ってもらえるなら保管料が浮いて助かるんです。」

とか、「なるほど」という説明が返ってくる。

「なるほど」と思ったらそれで終わりだ。

 

企業が適正な利益を含んだ見積金額を出してくるのは当然である。

だから私はいつも、提示された見積金額は「その会社から提示してもらえる適正な金額だ」と信じている。

その「適正な金額」を私が払えるかどうかは単に私の懐具合の問題であって、その会社や担当者の責任ではない。


担当者がフェアなルールと考え方で見積書を出してくれた以上、例えば、「担当者の上司と交渉すると見積金額が更に下がる」というのはおかしいと思う。

それではその会社にとっての「正しい値段、適正な値段」とはいったい何だったのか、ということになるだろう。

東南アジアのバッタ物の屋台の店主と値段交渉をしているんじゃあるまいし。 


私が信頼している担当者が見積書を出してくれた以上、その担当者が「これが当社としての適正な見積額です」と言うのであればそれでいいのだ。

仮にその担当者が必要以上の利益を見積額に計上していたり、ボッタくっていたりしたとしても、出された見積金額に私が納得すればお金を払えばいいし、納得しなければその会社とは以後、付き合いを断てばいいだけの話である。

 

別に自慢するようなことでもないが、私は飲み屋やエ〇チな店でも出された請求書を値切ったことは一度もない。

20代の頃、歌舞伎町でビール2本と水割り1杯とカラオケ1曲歌って38万6000円請求されたことがあるが、必死でバイトを増やしてなんとか払いきった。

腹は立たない。

そういう店があることは馬鹿でも知っているし、そういう店に入った私が甘かったというだけの話である。

(弁護士としては失格だが)身銭を切って遊ぶ、というのはそういうことだと思う。

但し、金額の多寡に関わらず、受けたサービスや受け取ったモノが払った金額と釣り合いが取れていない(金額の方が高い)、と思ったら二度とその店には行かないし、その会社のものは買わない。

 

話が少し脱線したけれど、例えば、担当者の上司と交渉して見積額が安くなったとしたら、私の担当者に対する信頼は何だったのかという話になってしまう。極端に言えば、これまで一生懸命やってくれた担当者の存在を否定することに等しい。だったら最初からその会社の社長と話をすればいいだろう、ということになる。

ほとんどの客は、「担当社員の見積もり」→「値切り交渉」→「上司の再見積もり」→「値切り交渉」→「もっと上の役職者の最終決済」という交渉をしていると思うが、

「それで当初の見積額より大幅に値段が下がったとしたら、当初の見積もりっていったい何だったんだ?」

とは思わないのだろうか?

私なら、

「そういう見積もりを出してきた担当者を信じて仕事を依頼することはできない」 

と思う。

それは、

「あなたは文句を言わないウスラバカに見えたので、いくらでもふんだくっていいと思っていました。」

と告白されたようなものだ。

そんな担当者と仕事などできるわけがなかろう。

 

依頼する側もされる側も、売る側も買う側も、取引を通じて最大限の利益を得ようとするのは当然である。

但し、「フェアにやる」という前提でだ。

だから私は複数の会社から相見積もりを取るときも、他社の見積金額を別の会社に見せたりはしないし、他の会社の見積金額をベースに値切り交渉などもしない。絶対に、だ。

そういうことは品がないと思っている。

ゲスなやり方で10万や20万の金を得したところで何か意味があるのか、

とも思っている。

 

弁護士費用を値切る人に言いたい。

私が弁護士費用を提示して、あなたがそれを値切って、私が「いいですよ」と値引きに応じたとしたら、私が最初にあなたに提示した金額はいい加減な、水増しされた金額だった、ということになる。

値切られるのを前提に最初から高めの金額をあなたに提示していた、ということになる。

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