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天使の吐息 #50

2010-03-15 20:03:45 | 天使の吐息(詩)
卒業式を終えた女子高生がいました。

悲しくなって泣いたという事はありませんでした。

友達と一旦、分かれて家に帰って着替えてから合流して遊ぶつもりです。

あまり卒業したと言う実感がないため、悲しくないのかもしれません。

「私もバスで来れば良かったかなぁ?」

友達は親に送ってもらったり、バス出来たりして、彼女だけが駅まで自転車でした。

そのため、駐輪場に行って自転車を取りに行かなければなりませんでした。

「あんな自転車捨ててしまって、新しいの買ってくれればいいのに、アシスト付きの奴」

ヒュウ

文句を言いつつ、駐輪場に入りました。

「卒業おめでとうさん」

駐輪場の係員のおじいさんが彼女に声をかけました。

「え?あ・・・ありがとうございます」

見事に当たっていたので驚きました。

何故分かったのか考えましたが、簡単です。胸にバラの飾りと卒業おめでとうという札の付いたバッジがつけられていたからです。

そのようにほとんど赤の他人のおじいさんに言われて始めて自分が卒業したのだと実感し始めました。

自転車を取って駐輪場に出るときにおじいさんが再度、声をかけてきました。

「それじゃ・・・さようなら。寂しくなるな~」

「さようなら・・・」

始めて挨拶したような気がした。今まで毎日、駐輪場に来るたびに「おはよう」とか「こんにちは」と挨拶してくれていた。
でも、彼女の方から挨拶することは無かった。
自転車を置いて、早速メールを打っていたり、急いでいたり、余裕が無かったのもあるが、一番の理由はただ単に特になんとも思っていなかったからです。

『人に挨拶するのは恥かしい』だとか『面倒』だとか『こっちは一応、客だから愛想をつかっているだけだろう」というものですらなく気にも留めていなかったのです。

そのまま自転車に乗って走り出した。

「大学行ったらまたあの駐輪場使うし、その時は挨拶しようかな?」

今まで自分に遠いことには無関心だった自分をちょっと卒業できたかもしれません。


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