東埼玉病院 総合診療科ブログ

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高齢糖尿病患者の血糖コントロール不良は感染症リスクか?

2018-07-25 21:17:45 | 勉強会

 先日、川野先生が勉強会で調べてくれた内容についてのせたいと思います。

高齢者、特に虚弱高齢者においては血糖コントロールは甘めでよいという傾向となってきておりますし、実際に在宅・施設高齢者においては、我々も甘めにコントロールして、時には急性代謝失調などを起こさないことを目的にすることもあります。血糖コントロールについて、気になるアウトカムの1つに感染症のリスクがどうなのか、ということがあります。今回は川野先生がその点について調べてくれました。

 

<高齢糖尿病患者の血糖コントロール不良は感染症リスクか?>

高齢者を含むデンマーク住民10063人(22-91歳) 7年間の患者・対照研究

糖尿病患者の入院リスク 肺炎1.75倍、尿路感染症3.03倍、皮膚感染症3.43倍

空腹時血糖値が18㎎/dl上昇するごとにこれらの感染症リスクは6~10%上昇した。

Benfield T et al.  Diabetologia. 2007 Mar;50(3):549-54.

 

デンマークの住民342390人(平均74歳、61-82歳) 8年間の患者・対照研究

糖尿病患者は肺炎による入院を1.6倍起こしやすく、そのオッズ比は、

HbA1c7%未満の群で1.22、HbA1c9%以上の群で1.60であり、高血糖ほどリスク上昇が認められる。

糖尿病歴10年以上は1.37倍。

高齢になるほどリスクが低下する。

 (19-39歳 2.15倍、40-64歳 1.62倍、65-79歳 1.22倍、80歳以上1.11倍) 

Kornum JB et al.  Diabetes Care. 2008 Aug;31(8):1541-5.

 

65歳以上の高齢糖尿病患者19806人を対象にした1年間のコホート研究 イギリス

HbA1c8.5% 以上の群はHbA1c7%未満の群に比べ、

    肺炎 2.38倍、尿路感染症 1.28倍、皮膚軟部組織感染症のリスク 1.30倍

Mc Govern AP et al. Lancet Diabetes Endocrinol 4:303-304,2016

 

後ろ向きコホート研究 米国117介護施設入所しているインスリン治療中の高齢2型糖尿病患者583人(平均78.9歳)

75歳以上の群ではHbA1c9%以上で感染症の頻度が増える

Davis KL et al. J Am Med Dir Assoc. 2014 Oct;15(10):757-62.

 

後ろ向きコホート研究 台湾 介護施設入所中233人(76.9±10.6歳、男性54.9%、糖尿病27.9%) 173例の肺炎を発症。

「HbA1c7%以上」は介護施設での肺炎発症とは関連しない。

Chen LK et al,J Am Med Dir Assoc. 2011 Jan;12(1):33-7

 

→結論

 高齢者では、高血糖が感染症リスクであるが、相反する報告もある。

 リスクとしてはHbA1c8.5~9%以上があげられる。

 高齢になるほど、高血糖による感染症リスクは、軽減するようである。

 

  個人的には、高齢になればなるほど高血糖による感染症リスクは軽減するという結果は興味深いと思いました。その他の様々な要素が大きくなるのでしょうね。また、上記の施設入所者の研究は、本邦の特養や我々が嘱託医をやっている特養と比べると平均年齢も10歳程度若くなっています。本邦でのデータがあるといいなあと思いました。


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