■自由な芸術感覚でまつられる庶民の神様
米国の東洋文化研究者で、著述家のアレックス・カーさんは著書「美しき日本の残像」(新潮社)で、伏見稲荷大社の魅力をこう紹介している。
『何千、何万の鳥居の列が山の上まで永遠のように続き、人もほとんど来ないのであたりは静かな朱の世界になる。中国から伝わった道教の神の色の朱は伏見稲荷大社では圧倒的な存在力を放ち、道教のマジックを醸し出している。さらに、無秩序に並んださまざまな形の塚が雑然と並んでいる光景には、日本人の自由な芸術感覚が表われている』
伏見稲荷大社の1万基以上の鳥居は、願い事がかなったことへの御礼に鳥居を奉納する習慣が、江戸時代以降に広がったことがはじまりとされる。無秩序で、決して計画的とはいえなくても、日本人の信仰心と感謝の積み重ねが、今のお稲荷さんを形作ってきた。
外国人トラベラーたちがその伏見稲荷大社に不思議な魅力や美しさを感じるのだとすれば、確かにこれほど面白い場所はない。 初 詣
中村陽宮司は、公式サイトでこう綴っている。
「伏見稲荷大社は人々が幸せを求める『庶民の信仰の社』であり、『神様と自然と人とが共生する社叢(しゃそう)・稲荷山』であるということを大切にし、次の世代へと護り伝えていく使命が我々にはあります」。その思いはいま、国境を越え世界に広がっている。
世界遺産ではないにもかかわらず、世界中の人々を魅了し続けている伏見稲荷大社。岸禰宜は「もちろん、世界遺産登録を目指したい気持ちはありますが、登録申請の体制が整ってこなかった。まずは申請の基準になる。(産経新聞抜粋)