松阪いさおと中央区を元気にする会

中央区民をはじめ広く大阪市民の皆様の意見をお聞きして大阪市政に提言する政治団体です

「総合区案」そのアホらしさ

2021年05月19日 | 市民の方々との対話
 2021年4月26日に自民党市議の3人と「市民とつながる・くらしが第一大阪市会議員団」の2人とで構成する新会派が結成されました。
 新会派は合区を前提とする「総合区案」にも「議論を進めることが第一だ」と述べ「大阪維新の会」の進める「総合区案」に前向きの意思を表明しました。
 これを受けて松井市長はこの新会派が「総合区案」に賛成する場合、条例案を早くて9月にも大阪市議会に提出するとの意向を明らかにしています。(いずれも日経新聞より)

 「総合区案」は特別区が住民投票で否定された場合の担保として「大阪維新の会」が2017年ごろから主張している制度案です。これが今回の新会派の結成により現実を増してきています。新会派がどこまで踏み込んだ議論をするのかは不透明ですが、「総合区案」に動きがありそうな気配なので、早めに手を打っておきたいと思い、そのアホらしさについて語ります。

「総合区案」の設立の経過
 2015年5月の住民投票で「大阪都構想」が反対多数で否決されました。
 同じ年の12月に松井一郎氏、吉村洋文氏らが「大阪都構想」の再挑戦を公約にして当選し、それぞれ大阪府知事、大阪市長に就任しました。
 彼らは公約通り2回目の住民投票を2018年の秋に実施する方向で動き始めました。
 この2回目の住民投票の中身として出てきたのが「総合区案」でした。
 総合区という考え方自体は2014年の地方自治法の改正で創設された考え方で、地方分権の流れの中で、現行の行政区に今以上に住民サービスなどの権限をおろすことを目的としており、この考え方自体は全国の首長さん達から歓迎されておりました。
 ところが、この2回目の住民投票のおかしなところは、大阪市民が判断するのは特別区か総合区かの2者択一の住民投票だったことです。そこには現状の「24区体制を維持する」という選択肢はそもそも大阪市民にはなかったのです。
 当時この住民投票についての大阪市による住民説明会が各区で開かれていました。私も参加し、このおかしな点を質問としてぶつけたところ、「総合区の再編設置には大阪市議会の決定だけで変更できる」との回答でした。「それは民主的な進めかたではないのでは」と反論しましたが特に回答はありませんでした。
 つまり特別区の設置を目指すが、もし住民投票で否決された場合は24区を再編して総合区の設置を議会の決議だけでやってしまおうという流れになっていたのです。

 しかし、この2回目の住民投票は、2018年の1月に橋下氏が「二重行政は松井・吉村体制でバーチャル都構想が実現しているので解消できている。住民投票は先送りするべき」と突然発言したことを受けて結局延期になってしまいました。橋下氏の心のうちには、1回目の住民投票から3年で再度住民投票というのはやはり大阪市民も批判的だろうし、2回も住民投票で否決されれば「大阪都構想」の実現の可能性がなくなるという読みがあったのではないかと、当時の朝日新聞が報道しています。

 このため松井知事、吉村市長は戦略を変更し、2018年秋の住民投票の実施はあきらめて、再度の住民投票の実施についての賛否を問うとして2019年の大阪市議選の時期に合わせて立場を入れ替えてダブル選挙に臨み、大阪市議会でも「大阪維新の会」が過半数を占めることを目指しました。
 選挙では大阪市議会では大阪維新の会は過半数を取れませんでしたが議席を増やし、知事選、市長選でも圧勝しました。

 この結果を見て青ざめたのが公明党でした。「大阪維新の会」側はこの結果を受けて公明党への圧力を強め、公明党側も「強い民意が示された」として住民投票の実施だけでなく「大阪都構想」にも賛成の方向に舵を切ることとなったのです。
 そして「大阪維新の会」は以後一気に2回目の住民投票へと突き進み始めました。

「広域行政一元」条例の可決
 2020年の11月1日に行われた2回目の住民投票では、大阪市民は「大阪都構想」に再び反対多数で否決しました。
 くやしさのおさまらない「大阪維新の会」は「二重行政の解消こそが民意」と勝手な解釈をして、議会だけで決定のできる「広域行政一元条例案」と「総合区案」をセットで進めることを発表しました。
 しかし公明党は「総合区には議論が必要」と慎重な姿勢を示したため、「広域行政一元化条例案」だけを議会で可決することを目指し、内容も公明党の意向を受けて「大幅」修正して2021年4月26日に大阪市議会で可決してしまいました。

 私はこの条例は違法であると審査請求を大阪市に提出しており、今日現在※まだお返事はいただいておりません。この経過については、別の機会にお話ししたいと思います。
※2021年5月19日

新会派は「総合区案」に賛成するのか
 そして今回、自民市議3人と、市民とつながる・くらしが第一大阪市会議員団の2人で構成する新会派が結成されました。この新会派結成と「総合区案」とは直接関係はないものの、記者会見で代表の議員が「総合区も前向きに考える」と発言したことで、「大阪市維新の会」は「総合区案」の成立に向けて勢いづいたというわけです。
 「大阪維新の会」側としてはこれまで大阪市議会の運営を公明党に振り回されてきた経緯があるだけに、今後この新会派が賛成に回るとなれば非常に楽になるわけで、今回をチャンスととらえうまく利用したいところでしょう。
 しかし、新会派のメンバーには「広域行政一元化条例」については強く反対してきたメンバーが含まれていますので、「大阪維新の会」の思惑通りには進まないのではないかと思います。

「総合区案」とはなにか
 それでは本題のこの「総合区案」のアホらしさについて語ります。
 「総合区案」とは、簡単に言えば以下の3つにまとめられます。

❶ 現在の大阪市内24区ある行政区を8つの区に再編すること
❷ 市長が議会の承認を経て専任した総合区長の権限を強化すること
❸ 現在の市役所の仕事を職員とともに8つの区に分散させておこなうこと

なぜ総合区を設置するのか
 大阪市役所のホームページ「総合区の検討資料」から、総合区の設置する必要性について以下にまとめてみました。

❶ 東京一極集中を是正するために大阪が副首都になるべき
❷ そのためにふさわしい大都市制度を作る必要がある
❸ 「広域機能の強化」と「基礎自治体の充実が必要」

 ❸の「基礎自治体の充実」というところで総合区が必要だとし、「充実」のために24区を8つに再編成し、面積や人口を平均化する必要があるとしています。経済効果など記載されていませんが、大阪市役所と仕事の分担を再編して総合区をつくれば副首都にふさわしい都市ができると考えておられるようです。

「総合区案」にはメリットがあるのか
 総合区を設置することでなぜ大阪が副首都になれるのかその理屈は不明です。なぜ行政の仕組みを変えただけで副首都になるのかその説明が十分なされていません。
 そのメリットが十分示されないまま、多額の費用を使って行政の仕組みを変え、大阪市民に混乱を巻き起こす「総合区案」を設置しようとしているのです。
 一方で、この「総合区案」にはいくつかの問題点が指摘できます。以下はその問題点について考え、そのアホらしさについてまとめてみました。

市民不在の区の再編
 まず、アホらしい1点目は、24区を8つの区に再編する案の策定にあたって、全く大阪市民の意見を聞いていないということです。
 これまで大阪市では合区・分区を経験しています。
 合区・分区をめぐる議論は古く、戦後の高度成長期を経て区間の人口規模の差の拡大、交通インフラの整備よる人の流れの変化などをきっかけに1967年頃から始まっています。
 本格的な議論は1970年万博の翌年の1971年から審議会が発足したことに始まっています。
 当時も合区への住民の抵抗が激しく、このため分区を先行して進めました。
 その結果1974年7月に分区は実現しましたが、合区にいたっては議論が難航し1989年2月にやっと実現しています。それが現在の24区体制です。
 このように本格的な議論が始まってからでも分区には3年、合区にはなんと18年もかかっています。その間に地域の様々な団体との協議を重ねるなど住民の理解を求めながら進めています。
 「大阪維新の会」の「決められる政治」「スピード感ある政治」とは程遠い世界ですが、区の成立時の歴史的な経過も踏まえつつ、議論を重ねながら住民の意見をとことん反映させて多くの人の納得をへて合区を実現しています。
 賛否両論ありますが、私はこれが民主主義の本来の姿だと思います。
 今回の「総合区案」のように単に人口や交通の便などを考慮して役所の職員だけの考えで決めてしまうことなど言語道断、これこそ「机上の空論」の典型と言わざるを得ませんし住民自治を真っ向から否定するものです。

行政組織の複雑化
 アホらしい2点目は、総合区役所という新しい役所が増えて、大阪市役所の組織が複雑になるということです。
 「総合区案」をみてみると、現在の24区の区役所は「地域自治区事務所」としてほぼ全ての窓口業務が残り、総務系の事務を総合区役所にまとめるとあります。
 現在の大阪市役所、区役所に加えてその中間に8つの総合区役所ができることになります。現在の2層構造から3層構造になり複雑化することとなります。
 案によると大規模な公園や幹線道路の管理については大阪市役所が行い、小さな公園や道路の管理は総合区役所で行うこととなり、区民にとっては要望を地域事務所なのか総合区役所なのか大阪市役所なのかどこに連絡したよいのかわからなくなってしまいます。
 区民にとって区役所で行う窓口サービス以外は大阪市役所でやってくれる現在の仕組みの方がシンプルですし、わからなければ大阪市役所の総合窓口や区役所の広聴広報担当に電話すれば直接相談を聞いてくれるサービスの方がずっとわかりやすいと思います。
区民とってはますます役所の分担が複雑になり相談しにくくなることは間違いありません。

市民サービスの低下はさけられない
 アホらしさの3点目は、大阪市役所の組織の複雑化により、職員が増えて経費が増加することです。案によれば職員は増やさないとしていますが、そうであるならば市民サービスは確実に低下するということです。
 新しく役所が増えるので普通に考えれば職員数は増えるはずなのですが、職員が増加した分は現行の24区役所の総務系の事務を8つにまとめることで170名の職員を生み出してカバーするとのことで、なお余った職員が出てくるのでその職員は区役所機能の強化にあてるとしています。そんなにうまくいくのでしょうか?
 総務系の事務の見直しはこれまでもかなり行われており、どうしても各区に配置しないといけない総務系職員だけが残っており、これ以上減らすと市民サービスに支障出てくるのは避けられないでしょう。職員を増やさずに総合区を設置してしまうと現場の職員数が不足してしまい市民サービスの低下は避けられなくなってきます。

総合区案」はムダのかたまり
 「総合区案」は、市民サービスの低下だけではなく、総合区の設置にかかる経費として移行時に約63億円、以後毎年約1億円(0.9億円)の費用が余分にかかるとしています。経済効果については何ら触れられていません。
 このようたくさんの費用をかけてやる価値があるのでしょうか?
 
「総合区案」に問題があるのは折り込みずみ?
 しかし、「大阪維新の会」のこれまでの政治の進め方を考えれば「総合区案」も納得ができます。
 つまり「総合区案」とは、「このようにムダのかたまりである総合区よりも、やっぱり特別区の方がいいでしょう。だから大阪都構想が必要なんですよ」と誘導するためのダミーでしかないのではないかと私は思います。
「総合区案」は「大阪都構想」再挑戦への布石だと考えられます。「大阪維新の会」の皆さんはまだあきらめていないのです。
 大阪市民の皆さんは決してだまされてはいけません。私達の生活をおびやかし、生活の混乱をもたらし、税金のむだづかいをするこんな「総合区案」を絶対に実現させてはいけません。
 私もしっかりと監視しながら反対の声をあげてまいりたいと思います。

「大阪維新の会」の「成長戦略」は全て破綻している
 2度の住民投票での大阪市民の反対多数によって「大阪都構想」は否決され、コロナ感染症の広がりによってカジノ&IRも無期限延期。そしてインバンド頼みの経済成長も完全に破綻し、「大阪維新の会」の看板制作である「成長戦略」は全て破綻しています。
 それでも、大阪市民は「ほかにええ人おれへんやん」として「大阪維新の会」をこれからも支持し続けるのでしょうか?
 それとも「いらんことするより何もせん方がまし」として別の人を市長・市議会議員を選ぶのでしょうか?
 次の地方選挙※までもう2年を切っています。(※2023年4月)
 大阪市民は「広域行政一元化条例」で奪われた自分たちの自治権を取り戻せる政治家を選ばねばならないと思います。良い政治家、悪い政治家を見極める力を持たなければいけません。

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 次回は良い政治家の条件について考えてみたいと思います。