穏やかに…シニアブログ

日常・民話など

昔っこ・犬と猫とヘビの話

2019-08-11 07:18:30 | 昔っこ・民話
 
むかし、あったぞナ。
 あるところに爺っちゃと婆と いてあったど。その家に猫と犬と飼ってたわけだ。
ある時、二人して畑さいったきゃ、ヘビがでてきたと。して、ヘビを連れて帰って飼う事にして
 
犬に「おんごろ」 猫に「ねんごろ」 ヘビに「のろ」って名前付けてかわいがっていたと。
「のろ」さ穀(こく)食わしたっけ、なんぼでも大きくなるわけだ。
その家では、豆腐作って売っていたども 「のろ」あまり大きくなぅたために
 
豆腐屋の「のろ」 おっかねぇとて、だれも豆腐を買うに 来る人いねぇわけだ。
爺と婆 「なんとしたらいがべ」 と、自分たちは 食わないで 「おんごろ」と 「ねんごろ」と「のろ」を
養ったども、ついに二人して 「なんぼ かわいそだって 仕方ねぇがら 「のろ」とこ 畑さ放すべし」
 
と、「のろ」さ そのことをしゃべったと。 「のろ」 お前とこ ここまで育ててきたども、
豆腐屋の 「のろ」おっかねぇとて、だれも買うにくる人 いねぐなってしまった。
お前 かわいそうだども、元の畑さ行ってけれ。どうか恨まねぇでけれ。
 
と、もっこさ入れて、畑の水溜りに放してやったと。したけ、「ちょっと 待ってけれ」とて
草原の中さ入って行って、小さい箱こ持ってきたと。
「この箱は、欲しいもの なんでも出はる箱だ。」と、渡したと。
 
二人して「のろ」から 宝物もらったとて、たいそう喜んで 『米、味噌 ではれ」て 言えば米、味噌
のっこり(どっさり)出てくるし、何 足りないものもなく幸せに 暮らしていたと。
 だども、だんだん欲出てきて、二人に足りないものは 子供だ と思うようになって
 
「17、18の息子出はれ!」て、言ったきゃ ほんとに立派な息子が出てきたと。
たいした賢い息子であったと。
ある時 爺と婆 稼ぎに行って帰ってきたきゃ その箱こ 盗まれて 息子もいねぇわけだ。
 
どこを訪ねて歩いても いねぇわけだ。とうとう おんごろと ねんごろに「お前たち 探して来い」
て、やったわけだ。おんごろと ねんごろは ずっと、ずっと根子(阿仁の地名)から、葦原から
能代まで行って探したと。それでも見つからない。
 
して、ずっと能代の潟向かいの 広い野原さ 新しい一軒家が建ってあるの見えたわけだ。
潟をガッツガッツと泳いで行って見たきゃ 息子原っぱさ家建てて ジャンと居たと。
おんごろと、ねんごろと相談して、縁の下さ隠れて 「息子、寝てからとるべし」とて
 
夜中なるのを待ったと。したけ、息子 感づいたかして、白ネズミを番兵において、その箱こ
見張りさせたと。夜ふけて「ねんごろ」が 白ネズミを獲って食う間に 「おんごろ」が 箱コを取って
逃げた。したきゃ(そしたら)雨風が吹いてきて、大波立って、その宝物の箱こを とうとう
 
落としてしまったと。「おんごろ」と「ねんごろ」 オンオン泣きながら 阿仁合(あにあい)の
市日に帰ってきたと。したけ魚屋に大きい鯛 売ってたのを見て それを盗んで 暗くなってから
ようやっと家さ 帰ってきて囲炉裏の 鈎のはなさ 鯛つるして寝たと。
 
朝になって 爺ちゃと 婆と 起きてみたきゃ おっきい鯛が下がってるわけだ。
「ねんごろ」起ぎれ 「おんごろ」起ぎれ って、起こしたども 起ぎねど。
疲れて寝てるのだべと、思って 今度ぁ その鯛下ろして見たば、腹の中さ箱こ 入ってたわけだ。
 
「おやおや、なんも知らねでなぁ 箱こは 腹の中さ入ってたなや」と、2匹を起こしたども
なんとしても 起ぎねぇと 思ったきゃ 2匹は死んでいたど。
爺と 婆は、それから宝物もって 良い暮らし したと。 
 とっぴんぱらりのぷう  (阿仁町に伝わるむがしっこ) 

(秋田弁は こ をつけるんですよ。お茶っこ・がっこ(漬物)犬っこ・皿こ・・・など)  
                                                 
「秋田むがしこ」 今村義孝 今村泰子編(未来社刊)より